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王子様のドタバタ無理やり婚約破棄劇  作者: しぃ太郎


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7/9

第6話 本物の王子様の求婚劇


  そして、現在――。


「言質は取りましたよ!アレクシス殿下!」


 今まで隣で俺の演技に付き合ってくれた『恋人役』の女性が、バサッと茶髪のウィッグを投げた。


 俺の目の前でキラキラと光に反射して舞う、ピンクゴールドの髪。

 その、髪を靡かせて、パーティー会場の壇上にいる国王へ高らかに宣言した。


「――陛下!今の誓いをお聞きでしたよね?この方は、神の名のもとに私、エリーゼ・ルーベンスに愛を誓いました!私も神の名にかけて、アレクシス・バートランド殿下を生涯愛する事を誓います!」


「リゼ!? は!? え、なんで!?」


 あまりにも驚いて、声が上擦る。

 周りの目を気にせずに、エリーゼの顔を確かめる。ずっと隣にいた真っ赤なドレス。肌の露出が多く、派手な化粧で気づかなかったが、その顔はエリーゼのものだった。


「その場の流れに合わせろって、お兄様に伝言させましたけど? アレク様」

「エリーゼ!……痛っ」


 高いヒールで思い切り足を踏まれる。

 痛い!

 ――だが、隣にエリーゼが居るとは思わないじゃないか!

 普通に驚くに決まっている!


「二人の結婚を認めよう。以前から二人は愛し合っていた。それを認めなかったのは、私が狭量だったせいだ。すまなかった」


 陛下は一呼吸おいて、俺に命じた。


「アレクシス・バートランド。国王として命じる。継承権をレオナルドに譲り、そのままエリーゼ・ルーベンス子爵令嬢と添い遂げよ」


「……!はい。王命、承りました。」

「よって、我が息子レオナルドに譲る予定だった公爵領をそなたに任せる」


「拝命いたします」


 臣籍降下の命を受け、頭を下げる。


「……この場で決定した。――王太子には、我が息子、レオナルドに任命する事をここに宣言する!」


 一拍の後。

 その王命を聞き、周囲の人間も一斉に膝をつく。


『エリーゼ、どうなってるんだ!?スムーズに上手くいきすぎじゃないか??』

『黙らっしゃい、馬鹿王子。貴方はエキストラ、脇役です。ここからが主役の登場なんですよ!』


 あまりにも事が上手く運びすぎて不安になった俺は、隣のリゼに小声で話しかけたが取り合ってもくれない。


『脇役の王子様。これからが、本物の王子様の見せ場なんです。もうあなたの役目は終わりました』

 意味ありげにウィンクして、俺を黙らせるエリーゼ。


 この後に、『本物の王子様』の見せ場?それは誰の話だ――?


 ザッと、

 彼が通るために、人が避けるて道を作る。

 堂々とした足取りで現れたのは、レオナルド。

 王太子は、クラリス嬢に跪き、スッと片手を差し出した。


「クラリス・ディライト公爵令嬢。先日、求婚状を送ったと思うが、ここで改めて返事を聞きたい。レオナルド・バートランドは貴方を妃に迎えたい」

「はい。お受けいたします。レオナルド殿下」


 クラリスはそっとその手を取る。

 直後。

 国王自ら盛大な拍手が送られた。

 それに続き、会場が拍手に包まれた。


 俺達のすぐ横で、従兄弟レオナルドと元婚約者のディライト公爵令嬢のプロポーズが成立した。


『いや、本当に。最初から?どこまで仕込んでいるのこれ??』

『あはは、素直なアレク様。私を出し抜けたことなんてありました?貴方には、私程度で丁度いいんです』


 その美しいピンクゴールドの髪に、萌木のような鮮やかな緑の瞳。昔からキラキラと眩しかった彼女のままだ。


「俺には勿体ないけどな……。『王子様』が憧れだったんじゃないのか?」

「ええ、昔から『私の王子様』は一人だけですよ。アレク様」


 会場中が祝福の拍手を送る、新王太子の婚約発表。

 最大のクライマックス。

 誰もが注目する、華やかな場面のすぐ横の影で。


 もうここでの見せ場のない俺達も、誓いあった。


「じゃあ、エリーゼ。俺も一つ教えておくよ。昔から頑張ってこの役を演っていたのは、わがままな俺のたった一人の女の子の為だったんだ」


 その俺の告白に少し目を瞬いて、ピンクの髪をかきあげながら胸を張る。迫力はあるが――その衣装では止めてほしい。


「今回は、私が救ってあげたんですよ?」

「我が姫は、随分と勇敢で――本当に愛らしい……。けど、そのドレスは、今後絶対に許さないからな……!」


 俺は上着を脱いで、エリーゼの肩にかける。

 後は主役に任せて脇役は、影で愛しい人を口説くとしようか。それに、今回の彼女の活躍も聞かなくては。きっと兄のダレンも絡んでいるのだろう。


 ――十年分の想いを、星空の下で存分に。


「リゼ。二人きりになろうか」

「はい!」


 会場中の熱気が冷めやらない中、俺達はバルコニーに向かって歩き出した。

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