第3話 王様と、王子になりたいもの
8話完結予定です。順次SSを上げていきたいと思います。
「お目通り出来て、光栄の極みでございます、陛下。そして王妃陛下。レオナルド殿下」
私は早速、レオナルド殿下に連絡を入れて陛下と合う約束を取り付けた。
レオナルド殿下も乳兄弟だ。有り難いことに、王族の方々は私に甘いのだ。
「こらこら、エリーゼ。親戚の子供みたいな間柄なんだから、公式の場以外は、以前の呼び方でいいぞ。ほら」
――さすがに不敬では?と思って辺りを見渡すが、誰もがそっと目を逸らす。
(うん。大丈夫らしいわ。ここは、甘えておねだりする方がいいかしら)
しかし、王妃陛下もいる。
あぁ、でも王妃様も母とは仲が良かったはずだけれど――。
「まぁ、エリーゼ!本当に、ミリアとそっくりね!そのピンクゴールドの髪なんて昔を思い出すわ!」
「王妃様……!ありがとうございます。母のことは、あまり記憶になくて。覚えていてくださるなんて嬉しいです……」
――よし、いける。私は確信した。
「あの、アレクシス殿下の事でご相談がありまして……。まずは、こちらをご覧ください」
兄からもらった、アレクシス殿下が娼婦に依頼する手紙だ。
直筆である。言い逃れ出来ない証拠から、両陛下は、それを読みながら震え出す。
「これは……確かに、アレクシスの筆跡だな……」
それは怒りか悲しみか。
それでも、彼の苦悩を理解したのだろう。
陛下の眉間には、皺が寄り、手紙を持つその手元も震えている。
「アレクシスが、そこまで追い詰められていたなんて……。我が子のように育てたつもりだったが」
そう。陛下たちに罪はない。
ただの家族ならばよかった。
でも、彼ら『王族』には違う重みがある。
「陛下、私から発言してもよろしいでしょうか」
「ああ、エリーゼ。ぜひ聞かせてくれ……」
「アレクシス様は、自分を客観視出来る方です。そして自分の政治的な立ち位置も理解しております。ある意味、アレクシス様は正しい行動を取ろうとしていると思います」
ここまで言っていいのかわからない。昔からの馴染みとはいえ、ただの子爵令嬢だ。でも、それでもいい。アレク様の愛情を、陛下たちを想う気持ちを伝えたかった。
「私は、陛下の治世の元、平和に暮らしております。そう思う者は多いと申し上げます。そして、アレクシス様もまた、自分がこの平穏を脅かすのを見過ごせないのです……」
じっと、頭を下げて陛下の返事を待つ。
そんなに横暴な方では無いと知っているが、やはり緊張してしまう。
「そう。そうだな。兄上との……先代の王との約束を優先するならば、アレクシスを幸せにしなければ。あの子には、ここが窮屈だったんだろうな」
「――ええ。本当の家族になりきれなかった、私たちの責任だわ……」
陛下と王妃様が少し俯き、その声が揺れる。
彼らの嘆く声を聞ききながら。
――グッと唇を噛む。
深く息をついて気持ちを固める。
きっとアレクシス様も誤解されたくないだろうから。
「両陛下。アレクシス様は、お二人の愛情を受けて育ったからこそ、自分で道を選ぶ意志を持てているのです。『自分は王には向かない』――それは彼の小さな我儘にすぎません」
伝わっただろうか。そうであってほしい。
「わかった。アレクシスの意志を尊重しよう。あの子の決断だ。……それで、エリーゼ。それを踏まえて話があるから来たのだろう?」
見透かされているが、それでいい。
私の気持ちと覚悟が疑われなければいいのだ。
「はい、陛下。私は――。アレクシス様を、救い出す『王子様』になりたいのです」




