第1話 王子不在の相談会
8話完結予定です。順次SSを上げていきたいと思います。
――国王の生誕パーティーの一週間前。
「お嬢様ーー!!どうしましょう、あの馬鹿王子! 馬鹿な事を考えて! あの、馬鹿な! 王子様が!今、兄から連絡が来てーー!」
「どうしたのエリーゼ、いつものかわいい頬が、もっと可愛らしくなっているわ」
私の主人、クラリス・ディライト公爵令嬢。金髪碧眼で、正に美しさの化身。
そして優しく、気品に溢れる、正に敬愛する私のお嬢様だ。
「あんの、馬鹿はやっぱりバカな事を考えているみたいです! そこまで思い詰めなくても、周りにちゃんと言えばいいのに……!」
兄からの手紙をグシャりと握りつぶす。
いつも自分が我慢すればいいと思っている。
周りが気にして構えば構うほどに、罪悪感を抱く、本当に馬鹿な王子様!
「今度の夜会で娼婦を連れてくるらしいです! そのまま王籍を抜ける計画を立てていると!あの、王子が……!」
いくら、自分の醜態を晒したいとしてもクラリス様を巻き込むなんて!
「クラリス様。アレクシス様のご無礼をお許しください!……これからの行動は全て私の責任です。ちょっと、陛下と王妃陛下に平謝りして――!」
「ちょっと落ち着きなさい、エリーゼ。これは、私たち二人の絶好の好機よ。上手くやりましょう」
――ああ。なんて頼りになるお姉様。
最初は、アレク様の将来の奥様になると聞いて、気に入らかったのに。
女神のごとき慈愛に、私は二日で落ちた。
逆にアレク様なんて、クラリス様にはもったいない。
そうよ、娼婦と駆け落ち予定なら私程度でもお釣りが出るわ!
「あの、優しいまぬけな王子様は、悪い人じゃないんです……。兄の手紙でも『陛下の生誕祭の夜会で騒ぎを起こす予定』と書いてあって。きっと、またアホな事を……」
「落ち着きなさい、エリーゼ。だから私たちの出番なんじゃないの?この歪んだ状態にヒビを入れて全員の目を覚ましましょう」
「はい、クラリス様! どっちにしても、クラリス様に相応しいのはレオナルド様です! ふふふ。いつも、お会いするために、散歩コースを相談していますもんね」
「もう、エリー!そこは貴方の協力があってこそだけれど……!――でも、貴方は明るくて羨ましいわ」
ここまで完璧で美しい、私のお嬢様が弱音なんてどうしたのかしら。
「どうされました? クラリス様が、望んでいるなら、私が全力を尽くしますよ?そんなに悲しい顔をしないでください」
「エリーゼ。アレクシス様の廃嫡が決まったとして……。私は誰に嫁ぐか考えるとね……」
――まぁ、レオナルド殿下かしら。
「それが嫌なのですか?」
「いいえ、嬉しいわ。嬉しいと思ってしまう。きっと、この気持ちもアレクシス殿下にはお見通しだったのよね」
「まぁ、空気だけは読めますからね」
クラリス様とレオナルド殿下が実は――なんて。
気づいている人も多い。
「わかりました。レオ殿下とも、話し合ってきます。あの人もダメ王子です!――クラリス様は、公爵様の説得をお願いします」
「エリーゼ……。私、きちんと、レオナルド殿下とお話してみるわ。大丈夫、お父様は私を国母にしたいだけだもの。――彼に、その覚悟があるのか聞いてみるわ」
クラリス様の瞳は真っ直ぐ前を向いていて――。
とても凛々しい。
「大丈夫です!これでも、二人の幼なじみなので、最終的には弱みでも脅しでも使って、説得してみせます。――こんなにお嬢様に慕われているのに、逃げ出すやつは懲らしめてあげますよ」
そっとクラリス様の手を握った。お嬢様の手が私の手を握りかえしてくれる。お嬢様の美しい青色が私の姿を映している。
そう。あの馬鹿たちは、全部自分で背負おうとするから。
私たちが助けてあげるのだ。
「ええ、私も貴女に。昔からの『あなただけの王子様』をプレゼントする為に頑張るわ。そして、レオナルド殿下には――。その覚悟を聞いてみます」
抱き合って、私たちは情けない彼らを出し抜くべく相談し合ったのだった。




