【第043話】胸騒ぎ
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「......これは?」
かおりの前のテーブルには透明な袋に封入された紫と白のカプセルが置かれている。
「昨今、巷で出回っているドラッグだ」
彼女は大きくため息をつく。
「これをどうしろと?」
哲也の視線が鋭くなる。
「解析を頼みたい。それも、秘密裏に」
かおりは腕を組む。
「それは構わないけど、理院はどうしたの? あっちには専門家がいるでしょ?」
「それはそうなんだが......」
哲也はしばしの沈黙の後、意を決するように口を開いた。
「姉さんの言うように、これも理院に出していた。身内を疑いたくはないが、全く想定外の結果が返ってきたんだ」
「想定外?」
彼は静かにうなずく。
「ただのサプリメントだというんだ」
かおりは顎に手を当てる。
「サプリメント? そもそも、このカプセルで被害が出ていることは確かなの?」
「......被害者たちから、このカプセルの成分が検出されている。関わりがあるのは間違いない。被害の元凶かは断定できてないが」
かおりは深く息を吐く。
「つまり、それも含めてはっきりさせたいと?」
「そうだ」
彼女は考え込み、哲也はその様子を見守っている。
「ちなみに、どんな症状が出ているの?」
「表面的には一般的な麻薬に似た症状が出ている。ただ、それ以外に異能を活性化する作用があるようなんだ」
かおりは顔を歪ませる。
「どうかしたのか?」
「いや、“また”かと思っただけ」
「また?」
哲也が怪訝そうに見つめると、彼女は目を見開く。
「ゆかりの方の事件の話は聞いてないの?」
「詳しくは......こっちの事件は所轄主導で異能対の方には顔を出してないからな」
かおりは目つきを鋭くし、組んだ腕の指を叩く。
「一度、双方で情報交換をすることを勧めるわ。それも、可及的速やかに」
「関係があるってことか?」
「ええ、こんな似たような事象が同時に起こるとは考えづらい。断言はできないけど、知っておいて損はないはずよ」
哲也は腕を組んで、考え込む。
「分かった。来栖さんに進言する」
かおりは深くうなずくと立ち上がる。
「解析は進めとくから、サンプルを十個ほどよこして。可能ならば、押収時期と場所がバラバラなものをね」
「了解だ。すぐに確保する」
彼女は窓際に立ち、雨に濡れる通りへ目を落とす。
「どうも嫌な予感がする。あなたも気を引き締めなさい」
哲也も立ち上がる。
「言われるまでもない。警部殿も何かを感じてるみたいだからな」
強さを増す雨の音が静かな室内に染みわたる。




