【第7話】 赤外套の接触者と、裏で蠢く策略(神代ユウト視点)
▼戦力ステータス:神代ユウト(現状)
【職業】荷運び者(偽装中)
【総合戦力値】66 → 68(探索経験で微増)
【身体能力】15 【魔力適性】9 【知識・応用】15
ラーナの見張りが浅い痕跡を拾った。
赤外套の者が使った偽装足跡だとわかる。
「塔の周り、誰かが見張ってた」
ミリアが呟く。
俺はうなずくだけだった。
森は静かで、不穏な気配が漂っていた。
木々がかすかに揺れ、何かの気配がある。
リリィが小声で言う。
「傭兵の仕事で監視が行われた形跡があります」
少しずつだが、状況の輪郭が見えてきた。
俺たちは慎重に周囲を探査し、偽装罠や監視器を潰す。
「奴らは計画的だ」
カルドが短く言った。
だが、それ以上の正体は掴めない。匂いだけが残る。
ティーニアが古い羊皮紙を見つけた。
師匠の署名と、見慣れない紋章が刻まれている。
「この紋章……見覚えが」
リリィが眉を寄せる。
頼りになる知識だが、まだ確証はない。
森の縁で影が動く。
ミリアが息を殺す。
低い声が聞こえた。
「塔の中で何をしてたんだ? 余所者」
「名を言え」
カルドが前に出る。剣先が震える。
男は肩をすくめ、嗤った。
「傭兵の斡旋屋さ。雇い筋とは別だが、情勢は追ってる。
だが……面白い仕事がありそうだ」
男は小さな機具を放り、木に飛ばす。
監視器だ。フィノの顔色が変わった。
「奴らは情報屋を持ってる」
リリィが言う。
情報を買い、我々の動向を掌握している組織があるらしい。
俺は胸に手を当て、潜在の反応を確かめる。
師匠のメモ「共鳴」——それは鍵だ。
「我々のやることは、監視網を断つことだ」
俺は静かに言った。
声は冷静だが、内には決意が渦巻いている。
数日かけ、小さな罠を潰し、監視器を破壊する。
赤外套側は散発的に罠を仕掛け、疲労を試す。
ティーニアの断片情報によると、師匠の紋章は古い学派と繋がりがある。
詳細は不明だが、知ることは力になる。
焚き火を囲み、俺たちは確認した。
仲間がいることの心強さ。
ミリアの掌が静かに俺の手に触れる。
言葉は要らなかった。
「仲間を守る」——その一言が、今の俺たちの柱だ。
森の奥、赤外套の者が誰かに手紙を滑らせる。
文字は読めない。だが、奴らの動機が動き出したことは確かだ。
ユウトの胸に潜む覚醒の片鱗は、まだ完全ではない。
だが、守ると誓った者たちのため、確実に変わりつつある。
――次回【第8話】「紋章の意味と、潜む裏切りの種」