【第5話】償いの旅路と、絆の形
▼戦力ステータス:神代ユウト(現状)
【職業】荷運び者(※識別偽装中)
【総合戦力値】54
【身体能力】14 【魔力適性】8
【知識・応用】12 【潜在覚醒値】999
ティーニアの償いは地味な仕事から
始まった。村の防壁補修、薬草集め、
傷の手当て、子どもたちの簡単な治療。
小さな行為を積み上げることが条件だ。
「あの……本当に申し訳ありません」
ティーニアは頭を深く下げ、手を動かす。
声は震えているが、真摯さは伝わる。
ミリアは時々指示を出し、そっと支える。
「あんた、無理すんなよ。体調はちゃん
と見てるからな」
「あたしが見てるべ」ミリアは照れずに
言って、ティーニアの肩を軽く叩いた。
村人の視線はまだ厳しいが、少し和らぐ。
ユウトは作業の傍らで自動解析を回し、
村の動きと不審点をゆっくり洗い出す。
潜在覚醒値は遠くで鼓動を刻んでいる。
数日後、償いの一環として資材回収へ。
郊外の薬草地である。魔獣の気配は残る。
準備を整え、一行は薄暗い茂みに分け入る。
「気を付けて。茂みは不意打ちが多い」
ラーナの声が引き締める。カルドが先頭で
道を切る。フィノは薬を肩に収め、万全だ。
茂みを抜けると、小型の狼が二匹跳び出す。
瞬間、俺は地面の重心を微かに歪める。
〈戦闘ログ〉
敵:森狼(下級)×2(戦力:各28)
ユウト:重力操作使用可
ミリア:氷槍連射準備中
「転ばせろ。俺が間合いを取る」
「任せときな!」ミリアが返す。連携は
ぎこちないが確かに噛み合っている。
重力の波で一匹が足を滑らせ、ミリアが
氷の一閃で仕留める。二匹目も早々に沈む。
〈戦果〉撃破/ユウト戦力+6(総合60)
戦いの後、ティーニアは静かに近寄り
ユウトに声をかけた。
「師匠の研究は人を救うつもりでした。
方法を誤っただけで……本当にすみま
せんでした」
ユウトは俯いたまま言葉を紡ぐ。
「救いを望むなら、まず手段を選べ。
だが、今は共に償う道を行こう」
ティーニアは涙をこらえ、深く頷いた。
村の表情は徐々に柔らいでいく。
数日後、償いの過程で師匠の研究所の
手掛かりが出る。町外れの古い塔だと
いう。鍵はあるが、封印が厳重らしい。
「行くなら準備を抜かすな」カルドが言う。
リリィが合流し、詠唱器具を確認する。
「私も力になります。遅れてすみませ
んでした」リリィは丁寧に一礼した。
夜、焚き火を囲み、各々が覚悟を固める。
ユウトは師匠の走り書きを反芻した。
そこにあった一行が、胸に刺さる。
「共鳴せよ。人の心が鍵なり」
――人と人の結びつきが、何かを変える。
ユウトはそれを直感する。数値以上の何かだ。
翌朝、塔へ向かう道を歩きながら、ユウトは
心に決める。仲間のため、そして自分の
ために、真実の一端に触れたいと。
塔の入口に到着すると、古い結界が揺れ、
微かな詠唱痕が残る。ユウトは胸に手を当て、
重力を使って結界の圧を和らげる。
リリィが静かに呪文を唱え、封印の一角が
解ける。扉はゆっくりと開いた。
塔内では小さな防衛精霊が現れるも、協力
して対処し、ユウトは古い書架から一枚の
紙片を見つける。師匠のメモだ。
「孤独は禁忌。共鳴こそ覚醒の扉」
短い文面が、ユウトの胸に重く響いた。
塔の外、森の奥では赤外套の者が影を潜め、
何者かへ静かに報告を送るかのように動いた。
歯車は少しずつ回り始めている。
〈章末ログ〉
・戦力値:ユウト60
・獲得:師匠メモ(覚醒の示唆)
・次回:【第6話】覚醒の儀式と、血脈の秘密
夜、ミリアが焚き火のそばで小さく言う。
「あんた、ちょっとだけ強くなったべ」
ユウトは笑って目をそらす。仲間がいれば、
たとえ遠い真実でも一歩ずつ近づける気が
した。