【第3話】揺れる絆と、森の影
▼戦力ステータス:神代ユウト(現状)
【職業】荷運び者(※識別偽装中)
【総合戦力値】42
【身体能力】12 【魔力適性】7
【知識・応用】10 【潜在覚醒値】999
目を開けると、ミリアの顔が近かった。
冷たい布が額に当てられている。
「ったく、どんだけ寝てんのさ……。
もう朝だべや、ユウト」
「お、おう……ミリア?」
彼女は素っ気なく言うが、目は優しい。
数日前の戦いの断片が胸を刺す。
あの時、俺の内で何かが反応した。
重力が歪み、獣の足元が沈んだ瞬間だ。
午後、村の偵察に同行することになった。
森の空気はどこか静かで、不穏だ。
「鳥も虫も声がねぇ。おかしいべ」
ミリアの声に、一瞬背筋が冷える。
茂みが揺れ、低い唸りが響いた。
〈戦闘ログ〉
敵:クローグベア(上位種)推定120
神代ユウト:重力操作Lv1
ミリア:氷槍連射RankB
「ユウト、時間稼いで! あたしが仕留める」
「了解っ!」
俺は地面の重心を捻る。獣の一歩が深く沈む。
ミリアの氷槍が連続で刺さり、獣は呻いた。
戦闘の中、木々の間から視線を感じた。
赤い外套の人影が、こちらをじっと見ている。
(誰だ……見物人じゃない)
その視線は一瞬で消えたが、胸の底が冷えた。
村に戻ると、荷物の中から破片が見つかった。
小さな割れた瓶――毒の匂いがした。
「これ、ユウトの袋から出てきたんだと」
仲間たちの顔が一斉にこちらを向く。
信頼は音を立てて削がれていった。
夜の闇が、静かに牙を研いでいるように思えた。
――次回【第4話】「毒瓶発覚と、揺れる事情」