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トゥエルブ・セレクション  作者: 上川央離
第2章 選抜始動編
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第31話 保健室

 目を開けると、なぜかベッドの上にいた。


 病院にあるような医療カーテンが目の前に。己に宿る人間の記憶が、おそらくこの場所は保健室であろうと訴えていた。


 俺はたしか……動物愛好部の部室にいて、それで、元十二支の全員が揃って……神様に体を乗っ取られたんだっけ……


「目が覚めたな」


「……うえっ!? 子音さん!?」


 カーテンから見知った人物が顔を出す。鼠入子音、元十二支首位であったネズミだ。


 まったくもって俺が保健室にいる理由がわからないが、この人が何か知っているはずだと思った。


「すみません子音さん。今の状況、教えてもらっても……?」


「お前は神の依代になった反動で倒れたんだ。安心しろ。アイツらは教室に戻したからな」


 俺が神の依代になったというのは、神様が俺の身体を操って、神託をしていたことを指すのだろう。

 神様が宿るものといえば、御神木がパッと思い浮かぶ。なるほど、俺の器では耐え切れないに違いない。


「そ、そうですか……ひとまずみなさんが授業に戻れて良かった……あ、子音さんも、俺に構わず戻ってくださいね」


「ああ。そうするがお前に言っておくことがある」


 子音さんは俺の手のひらに、星の形をした小さな結晶を乗せた。


「十二支会合の記録媒体だ。これを飲み込め」


「…………はい?」


 耳を疑い、俺は再び手のひらの上の結晶を見る。俺の困惑した顔が映っていた。


「俺たちは、妨害されてんのか呪いをかけられている。しょうもねえ呪いもあるから、神が原因だと思うがな。お前の記憶に欠陥があるのは、その一環だと推測した」


「えっと、そのことと、これを飲み込むこと、何の関係が……?」


「お前の記憶を戻すためだ。お前は俺たちの望みを叶える。そのかわり、俺たちはお前の記憶を戻す。十二支に関する記憶が抜けているなら、その記憶を埋めればいい。手始めに、恒例の会合……俺らが話しているところを見せれば、刺激になると思ったわけだ」


 どうやら、この結晶は俺の記憶に関わる重要なもののようだ。

 俺が倒れている間に、子音さんは俺の記憶について考えてくれたのだろう。その事実が、何よりも嬉しい。


「な、なるほど……子音さん。俺のためにありがとうございます」


「俺は俺のためにしか動かない。お前の記憶が、俺が十二支に戻るのに必要な可能性があるだけだ。そんじゃ、用は済んだから教室に戻るぜ。放課後また部室に来いよ」


「はい! ありがとうございます」


 子音さんは、自分のためにしていることだとは言っているけど、優しい。俺を保健室に連れてきてくれたのも、きっと彼だろう。

 とはいえ、飲み込めと言われた謎の物質。飲まなきゃいけないのはよーくわかったけど……勇気がいる。


「一神さん、具合は大丈夫?」


「あ、はい。おかげさまで……」


 おっと、今度は保健室の先生が来てしまった。先生の視線は明らかに俺の手のひらの上を向いていて、焦る。


「あら、その手に持っているものは……?」


「え、えーと……実家に伝わるお薬です! これを飲んだらすぐ教室に戻りますので!」


「あらそう。元気そうで良かったわ。それにしても随分と特殊なお薬ねえ……」


「す、すみません先生! 薬を飲みたいので水をもらってもいいですか?」


「ああ、ごめんなさいね。今持ってくるからね」


 ふう、何とか誤魔化したぞ……普通の人間からしたら変な薬物にしか見えない。何なら違法薬物よりも怪しい。

 先生からコップ一杯の水をもらったとはいえ、この怪しげなものを飲む気には到底なれない。


 しかし……子音さんによれば、これには十二支会合が記録されている。

 俺の記憶を取り戻すために、十二支のことを知るために……何より彼らのために、飲まなければなるまい。


 赤ちゃんだったら誤飲してしまうだろう、キラキラとした星型の宝石のような錠剤。覚悟を決めて俺はそれを口に含み、水で一気に喉奥へと流し込んだ。


「……よし。何ともないな」


 身体に特に異常はなくて安心する。保健の先生に挨拶して、俺もさっさと授業に戻ろう。

 そうしようと思って、ベッドから立ち上がろうとした。


 そのとき、立ちくらみで視界が一周した。当然立ち上がれるわけもなく、俺の身体は再びベッドへと引き戻される。

 頭の血管がドクドクと脈打つ感覚が、徐々に強まって痛みを感じだす。


(くそ、頭が痛い……!)


 いったい俺は、何回意識を失えばいいんだ。そう心の中で愚痴を言いながらも、抗えず俺の瞼は閉じていく。


「これより、第1回十二支会合を始める!」


 脳内に直接、子音さんの声が流れ出す。

 さらに、目を閉じているはずなのに、先ほど見たはずの部室内の風景が、映像が再生されるように浮かんでくるのであった。

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