第2話 学園
(ああ……どうすればいいんだろう)
下界に飛ばされてから早々、自分は困り果てていた。元十二支たちの右腕として、役目を全うする。
だがしかし、その元十二支はどこにいるのだろうか。今、自分がしていることといえば……
「一神セレンです。この十二将学園には、高等部から編入してきたので、知らないことばかりです。仲良くしてくれると嬉しいです!」
パチパチパチ……拍手が聞こえる。
そう、自己紹介だ。何故かスラスラ言えた。これも己に与えられた人間の男女の記憶というもののおかげなのだろう。
なるほど、人間界で生活するからには人間の記憶は必要だ。
私立十二将学園。学校の名前からして十二支の匂わせが酷い。
1年7組一神セレンとして、ここで学校生活を送らねばならないのだろう。
「はあ……」
十二支選抜とは一体どのようにやるのだろう。何故自分は人間になって、学校に通っているのだろう? 学業の成績でも競わせるのかな? 様々な疑問が次々と浮かぶ。
前回の十二支競争は、人間界で絵本にもなっていて有名。
元旦の朝、神様の元へ挨拶した先着12匹を、動物の大将とする。いわゆる駆け比べで、シンプルな競争だったといえる……
「一神くーん! 体育館行くよー!」
「えっ!」
不意に女子生徒から声をかけられ、思考の狭間から意識が浮上する。声の発生源の方を見れば、人間たちが綺麗に整列していた。
学生は、集会するときにこのような形を取るということを記憶が教えてくれるので、ならって急いで列に入り込む。
「えっと……次って何するの?」
先ほど声をかけてくれた女子生徒が隣列にいるので、小声でこの状況の意味を問う。
彼女は少し首を傾げて、困ったように笑った。
「あはは、大丈夫? 一神くん。今日は顔合わせだよ。高等部1年生全員が集まって、組の代表が1人ずつ挨拶するの」
「顔合わせ……?」
顔合わせ? わざわざ同級生の、それもそれぞれの組の代表が、挨拶する必要があるのだろうか?
生徒会長とかが、先輩を代表して挨拶するものだったらわかる。あくまで、生徒会長を務めていたらしい人間の情報だけど。
「一神くんは7組代表だよね! 頑張って!」
「は……?」
え、この人間今なんて言った。代表?
どうして、おかしいでしょう! 神は意地悪に違いない。きっと自分をいじめてどう行動するかを楽しんでいるんだ。
そうでなければ人間のことを知らない、生後まもない幼気な精霊を、窮地に追いやるだろうか!
まあ……無力な精霊は状況をどうすることもできない。気づけば体育館に着いていた。
大きな体育館。ずらりと並ぶ生徒たち。もしかしたら、この中に元十二支もいるのではないのだろうか。
自分と同様に、神の悪戯に振り回されていないだろうか。
「皆さんは、誇りある十二将学園の生徒として、真っ直ぐな気質と叡智を活かし……」
さて、集会が始まったが……これが記憶に聞く校長の長話、もとい学園長の長話、らしい。たしかに、眠くなる。
校長の話が終われば、もう生徒代表挨拶らしい。7人もいらないだろう、絶対に。
順当に考えれば、挨拶は1組からのはず。6人の挨拶を基にして、模倣と思われない程度に創り上げればいい。
もしかして、無意識に自己紹介はそうやっていたのか、人間というものはすごい。
「生徒代表挨拶。7組、一神セレンさんから、登壇してください」
うん…………何で後ろから?




