第1話 精霊セレン
目を開けると、不思議な世界にいた。
「ここは…?」
「やあ、目が覚めたかい? 生まれたばかりのところで悪いのだけど、頼みがあるんだ」
神々しい老人が目の前に現れる。自分が何者なのかもわからないが、この人に従わなければいけない。そんな気がした。
「たのみ……?」
「実は人間界で、十二支の選抜をしたくてね。君には、動物たちのサポートをお願いしたいんだ。君の担当は、元十二支。大役だよ」
「じゅうにし……?」
何を言っているのかが見当もつかない。それが老人に伝わったのか、笑っている。
「十二支というのは、動物の大将12匹のことだ。昔、動物たちを競わせて決めたんだけど、とある事情でもう一度決めなければいけなくなってね。前回は単純なかけっこだったけど、今度は人間も関係するんだ。そこで、動物たちが人間を害さないよう、君には見張ってもらいたいのさ」
「……どういうことでしょうか?」
「ふむ……そうだね、まずは記憶をあげよう」
老人が頭に手を差し伸ばす。触れられた瞬間、映像が脳内で再生されるようだった。
「1つは、私の記憶。もう1つは、とある人間の男女の記憶だ」
脳内を記憶が駆け巡る。十二支とは? その選抜とは? 人間とは? 疑問に思っていたことに回答されると同時に、己という存在が形どられていくようであった。
「君は今から、十二支選抜を見守る、動物たちの導き手。願わくば、君も含め創る予定の我が分身たちが、世界の救世主となるように……神として、幸運を祈る」
神は自分に記憶を与えていた手を離したかと思えば、その手で思い切り、己の体を押した。
吹き飛ばされ、謎の空間へと吸い込まれる。
「えっ、うわっ!?」
「後々、使いが説明に参る。我の可愛い十二支たちを頼むぞ!」
「ちょっとー!? まだよくわからないのですけど!?」
「ほお、ちょっとは感情が宿ったかのう。その調子で人の世知らずな動物たちを従えておくれ」
「えぇ!?」
神が与えた記憶の中の十二支のことを考える。天界にいる動物は地上にいる動物の化身であり、動物の習性に加え、人間の持つイメージにより性格が決められているらしい。
例えば、ネコを騙し、ウシに乗って1番を勝ち取ったネズミなんて、神の視点からみても、どこか性格が悪そうだった。
(ネズミだけじゃない。厄介そうな動物たちを従わせることなんてできる? 無理だよ!)
自身に刻まれた精霊としての役目と、与えられた人間の記憶が混ざり合い、反発し合う。
だがしかし、役目には抗えないようだ。
「あっ、精霊No.1ちゃん! 君の名前は、うーんと、セレンだ! 名前を与えた方がそれっぽいからね。じゃあ頑張って!」
名前を与えられた瞬間、不安が吹き飛ばされたような気がした。この口調をころころ変えるおちゃらけた神とやらは、一体何者なのだろうか。
あちらの世界で目を覚ませば、大きな役目が待っている。世界の救世主となるように、確かに神はそう言っていた。何か大変なことが起きるのは間違いないのだろう。だけど、大きな期待があるような気がするのだ。
役目を果たそう。それが、自分が生まれた意味ならば。




