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金世界  作者: 浅宮ケイゴ
第1章
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第1話 チェックメイト

 深夜。にも関わらず、東京はまだまだ明るく、人は目まぐるしく動いていた。

 東京のある人気のない通りで、男がハアハアと息を切りながら走っていた。

 とあるビルの屋上で、女が黒い鞄を置いた。女はまだ若く、十代後半程に見える。スタイルは良く、全身黒塗りのお洒落着を着ていた。

 ハア、ハア、と男はまだ必死で逃げ続けていた。何者かに追われているようで、焦りが目に見えていた。一方女は鞄を開けてスナイパーを出した。

 男は交差点を右に行ったり左に行ったりして逃げ惑っていた。女はスナイパーに装弾した。手慣れた手付きで装弾した。正直十年も続けているプロと比較しても遜色ないレベルだった。

 男は交差点を曲がり、路地に入った。男はまだ走り続けているが、ハアハアと息切れも酷くて相当限界が近いようだった。

 女はスナイパーを構え、スコープを覗いた。スコープを拡大し、微調整して、路地裏へ入ろうとする男の頭に焦点を当て、そして引き金を引いた。

 

 トン、とチェスの白駒を置く音がした。

「チェックメイト」

 宮本碧真は赤口大翔のキングをクイーンで挟み、チェックメイトした。

「マジかぁぁぁ」

 大翔は頭を抱えて悔しがっていた。

「詰めが甘いな」

 碧真はやや自慢げに腕を組みながら言った。

「接戦もいいところよ」ソファーでスマホをずっと弄ってた志賀茜は、やっとかと起き上がってきた。寝てたのか、それともずっと寝返りでもしてスマホを弄り回していたのか、髪はボサボサだった。茜は髪をほぐして整えた。

 碧真側(白)はキング、クイーン、ナイト二つ、ポール一つの五駒、大翔側(黒)に至ってはキング一つしかない。

「逆にお前キング一つでよく耐えたな」

「あったりまえ! こんなんへでもねーし」

 大翔は鼻を伸ばして満悦していた。

「その割にはボロ負けだけど?」

 茜に痛いところ突かれたな。大翔は少し口を尖らせた。

「あーあ、ずっとチェスしてたからなーんか疲れたわ」

 大翔は帰ろうと仄めかして話を逸らした。

「そろそろ夕食も作んないといかねーし」

 時計は八時を指していた。茜も支度を始めた。

「作るの面倒だろうし出前にしたらいいのに」

 碧真に言われて「あーそれもありだね」と茜は返した。

「そういやさ」茜がそう切り出した。

「執事さん大丈夫なの?」

 大叔父で執事の伊瀬はすでに八〇で、年齢的にも身体的にもかなり厳しいところまできていた。特に最近は体調もあまり優れていなかった。ハウスキーパーやメイドのいない宮本家は基本的に家事は伊瀬が行うが、碧真も忙しいなか多少はやっている、といった状況だ。

「ああ。大丈夫だ。自室で寝ている」

 少し無理しているようにも見えた。

「あんたもハウスキーパーとか雇ったらいいのに」

「……検討はしてるよ」

「嘘つけ」大翔はお見通しと言わんばかりの顔をした。茜はふーんと返した。


 あいつらが帰って、ソファーに座っていると、一本の電話がかかってきた。霧島遥香からだった。遥香は従兄弟であり、六年ほど前に碧真の両親が亡くなって以降事実上の後見人だった。

「こんな時間にどうしました?」

「夜分に申し訳ない。ちょっと時間いい?」

 碧真は大丈夫です、と言って姿勢を立て直した。

 遥香が役員を務める会社「明成グループ」の経営不振と株価の大暴落で、先日の株主総会で猛批判を食らった上加熱して大荒れになったのだが、遥香によるとその総会の後、ある男から碧真と交渉をしたいと持ちかけてきたらしい。

「なんで俺なんですか?」

「わかんないわよ」

 その男は株主でもなければ、正直会社とはほとんど関わりのない一般人だった。遥香は、とりあえず明日渋谷のスターボックスで、と言って切った。

 意味深というか謎というか、碧真には訳がわからなかった。普通なら、代表取締役か、少なくとも遥香よりも立場が上の人物に話を持ちかけるはず。ましてやほとんど表に出ていない碧真に交渉を持ちかけるなんて、どこの情報筋だろうか。碧真はやや不思議に思いながらも、ソファーから立ち上がった。


 次の日、言われた通りスターボックスに行くと、既に遥香と例の男が座っていた。男の名は甲斐田正稔といい、髭はジョリジョリで髪はボサボサだった。そしてそれなりに使っているのであろうグレーの革ジャンを着て、丸縁の小さなサングラスを掛けており、独特の雰囲気を醸し出していた。若者が数多くいるこの店で明らかに目立っていた。碧真はコーヒーを頼んだ。

 甲斐田は遥香に席を外して欲しいと言う。遥香が去ったことを確認すると、手を組んでニヤニヤと笑いながらこちら側を見た。

「で、要件は?」

 碧真はコーヒーを一口飲んでから訊いた。

「まあ要件というか、交渉、ですかね」

 男はコーヒーを置いた。

「交渉?」

「ええ。いや実はね、僕の友人に週刊イチバンの記者をしている者がいるんですけどね」

 男はそう言って、鞄から記事の原稿を取り出した。

「人を殺したことがあるとかってね、そういうリークがあったらしく」

 碧真のコーヒーを飲む手が止まった。

「『宮本元社長一家放火殺人事件 真犯人は明成G期待の跡取りA氏!?』――A氏って、誰のことでしょうねえ」

 碧真はコーヒーを置いた。

「宮本社長って、昔から優秀で名高かったですし、しかも奥さんは元国民的女優、今でも人気ありますからねえ。こんなことバレたら、明成はどうなることやら……遥香さんも、タダでは済まないかもしれませんねえ」

「――で、交渉というのは?」

 碧真は、やや怒り気味の口調で聞いた。

「そんな焦らなくても。まだこれは世に出てませんのでね。友人にも取り下げさせるようにすることもできますから」

 碧真は肩を少し緩めた。

「ただし、条件があります」

 男はコーヒーを一口飲んで、手を組み直して碧真の方をみてニヤリと笑った。

「ある女を、あなたの専属メイドにして欲しいんです」

 碧真は「はぁ?」と訳がわからないという顔をした。

「どういうことです?」

「そのままの意味です。女をあなたの家に居候させて諸々の家事をさせるだけです。まあ生活費とかは負担してもらうんで、金はいらないわけではないですけど。まあ多少は私も出しますよ」

 碧真は甲斐田を睨んだ。相変わらず甲斐田は何か裏があるかのようにニヤニヤと気味悪く笑っていた。甲斐田は、そんな睨まないでくださいよ、と嗜めた。

「別に深い意味はありませんので」

「――その女の写真とかはありますよね?」

「当日のお楽しみです」

 碧真は目を逸らし、スクランブル交差点の方を見下ろした。甲斐田は依然ニヤニヤとしている。

「で、どうします? 乗りますか?」

 碧真はコーヒーをもう一口のんで、再び息をついた。


 街から外れた山奥の家の前に、一台の車が停まった。中から誰かが出てきて、家の中に入っていった。

 甲斐田は、ドアを開け、畳の上に寝転がった。

「やっと帰ってきたんですね」

 シイナは、甲斐田にそう吐き出すようにいった。甲斐田はそんな嫌そうな顔しなくてもいいだろと少し悲しそうな顔をした。

「で、今日はどこほっつき歩いてたんですか」

「人聞きが悪いな」甲斐田は身体を起こした。

「ちょっと話し合いをしてただけだ」

「話し合い? 豪遊の間違いじゃないですか」

「お前馬鹿にしすぎだろ」

「してないですよ」シイナは目を逸らした。甲斐田は嘘つけ、と嫌そうな顔をした。

「お前には、一週間後に住み込みで仕事をしてもらうことになった」

 甲斐田は、少し息を吐いて身体をリラックスさせてから言った。

「――はい?」

「まあ住み込みというよりはスパイに近い感じだろうけどな」

「どういうことです?」

「――宮本碧真の家に住んでもらうことになった」

「え?」

「むしろここよりも高待遇でいいだろう。しかも、()()の情報を得られるかもしれんしな」

「だとしても、勝手に決めないでください」

 シイナは突然のこともあり、怒りと困惑が混ざっていた。

「ま、そういうことだ。よろしく」

 そういうと、甲斐田は寝ると言って出て行った。

 甲斐田が寝室に入ると、シイナは深く溜息をついた。シイナも疲れと呆れですぐに寝てしまった。


「宮本家の件、調べといたぞ」

「ありがとうございます」

 数日後、甲斐田の家でシイナは甲斐田が手に入れた資料の数々に目を通していた。この男は馬鹿でチャラいように見えるが、こういうのに意外と長けている。どれもまあよく出てきたなというような部類のものばかりだった。

「――ま、取り敢えずはこんな感じだ。まあ他の奴らに比べたら控えめな方だが、お前が居候している間に何かしらのボロは出るだろ」

 宮本家は豪遊とかをあまり好まない、富豪にしてはらしくない家柄だった。ただ人脈はそれなりに広く、裏ではかつてほどではないがそれなりの影響力もあった。

「――本当に、住み込ませるんですね」

「決まりだからなあ」

 甲斐田は少しだけ嬉しそうに言った。

「まあ研究所の奴らとももしかしたら接触できるかもしれんし、安全だから好条件だろうな」

「だといいですけどね」

 シイナはコーヒーを淹れ、それをゆっくりと飲んだ。

「あ、でもあいつらを殺そうがどうしようが、俺は知らんぞ。俺は基本関わらんようにするから」

「むしろその方が助かるんで」

 シイナは素っ気なくスパッと答えた。

「あとは任せる」


 シイナは明日に備えて、バックにいろんなものを詰め始めた。住み込みとはいえ、それにしてもなかなかの大荷物ではある。

 シイナは甲斐田から貰った資料の紙を見た。

「宮本碧真――」

 シイナは紙を置いて、窓を開けた。窓の外は、深夜とはいえ深く真っ暗闇で吸い込まれそうな雰囲気を醸し出していた。


 一週間後、予定通り宮本宅に甲斐田は現れた。相変わらずの格好で、こんな野郎には家に上られたくないと思われても不自然ではない。甲斐田はどーもどーもと言って手を差し出してきたが、碧真は拒否した。

「で、そちらが例の?」

 甲斐田の横には、少女が立っていた。高校生くらいだろうか。顔は良い。身長は一六〇いくかどうかくらいで、ただ足が長くスタイルも良い部類に入るくらいだった。それにしてもこの子も可哀想である。こんなの甲斐田に売り飛ばされてるようなものだろう。

「来島しいなです。よろしくお願いします」

 シイナは緊張しているのか、かすかにたどたどしい感じで軽く挨拶をした。続けて碧真も軽く挨拶した。

「んじゃ、あとはよろしくね」

 甲斐田はさっさと帰ろうとする。

「この子の説明とか何も聞いてないんですけど。年齢とか学校とか、あと持病とかも――」

「あーないない、病気とか罹ってもそいつはどーにかなるし」

 実に粗雑でテキトーな野郎だなと心底思った。シイナという子もこんな野郎に育てられて可哀想なものだ。甲斐田は車に乗って去って行った。碧真は仕方なくシイナを家の中に入れた。

 

 とりあえずソファーに座らせた。碧真は茶を出して、ゆっくりしていいぞと言った。シイナは無口で、感情というものがほとんど感じられなかった。というよりかは、()()()()()ようにも思えた。終始ソファーでじっと、ほぼ微動打にせず、むしろ独特の感じを醸し出していた。

 碧真も碧真で話しづらい雰囲気な上、もとから見知らぬ女子高生くらいの女の子とコミュニケーションを取るのにあまり慣れていないのもあって、家の空気は最悪に近いものだった。

 碧真は流石にこのままでは不味いと思ったのか、しいなさん――、となんとか話しかけようとしたところで、インターホンがなった。シイナは、どうぞ、とやや小声で言い、碧真はドアを開けた。

「やっほー」と、元気よく大翔と茜が入ってきた。タイミングが――碧真は、ため息をついた。

「今日は帰ってくれ」碧真は門前で追い払おうとした。

「何でよ」茜はいつも来てるでしょ、と碧真の方を見た。

「疲れてるんだ。今日は勘弁してくれ」

「えーせっかく来たのにぃー」

 碧真は頼む、となんとか必死に追い返そうとした。もしここで中に入ってきたら、シイナと鉢合わせることになる。彼らにはまだこのことは伝えてない。というより、この状況をどう説明したらいいのかがわからず、あとあと茜とかに問い詰められたりしても面倒なことになると思っていたようだ。

「あの、この方達は?」

 碧真の後ろからシイナが出てきた。大翔と茜はポカンとしていた。碧真は呆然とした。

「えっと――この子は?」

 大翔が訳がわからないという顔で訊いた。

「――もう中入っていいよ」

 碧真は諦めた。


「――で、なんで碧真の家に女子高校生がいるわけ?」

 案の定、問い詰められた。茜がゲテモノを見るような引いた目でこっちを見ていた。碧真は甲斐田がシイナを勝手に渡してきたことを詳細に話した。

「遂にお前も手にかけちゃったかぁー」

 対照的に大翔はこの状況を面白がっているようで、碧真を見て大笑いしていた。

「俺にもわかんねえよ。その甲斐田がなんで渡してきたのかもわかんないし」

「――まあ碧真はそんなことやらなさそうか」

 茜はイスから立ち上がって、シイナの方に向かった。初めまして、と茜が挨拶した。茜は他人に対しては基本優しくて良い人を演じる。シイナもペコリとお辞儀をした。

「志賀茜です。で、あの人が宮本碧真。この家の当主ね」

「改めまして」

「で、あとは碧真の反対側にいるやつだけど――」

 茜は大翔の方をやや冷ややかな目で見た。大翔はじっとシイナと茜のほうを煌びやかな目で見ていた。

「あいつは無視しといていいよ」

 すかさず大翔は「はぁ!?」と突っ込み、シイナのもとに瞬間移動した。シイナはびっくりして身体がビクンと動いて固まった。

「俺赤口大翔! 特技は競馬、キャバクラ、賭け麻雀!」

「よくそんな情けないこと胸張って言えるね」

 特技でもないでしょ、と茜は大翔を呆れた目で見た。大翔が馬鹿なことをして茜に引かれるという展開はいつも通りだった。


「――で、しいなちゃんどうするつもり?」

 大翔がシイナの部屋を案内している間に、茜は碧真に訊いた。

「まだ考えてる。取り敢えずここに居させるにしても、伊瀬のこともあるしずっとっていうのもなぁ……」

 茜は大きく背伸びをした。碧真曰く、一応専属メイドとして雇えと甲斐田から言われていたそうだ。茜はなんだそれ、といった。

「てゆーか、しいなちゃんって何歳?」

「訊いてない」

「高校とかは?」

「訊いてない」

「まさか何も訊いてないの?」

「――訊いてない」

 茜は呆れていた。

「俺だって訊いたんだよ。でもそもそもあの子とは今日まで会わせてくれなかったし、甲斐田も訊いても殆ど話そうともしなかったから」

 碧真は額に手をやり、天井を仰いだ。

「まあでもこっちも忙しいからなかなかずっとは面倒見れないんよな……」

 碧真には甲斐田との()()がある。契約がある以上勝手に要求を放棄することもできない。それに万が一リークされでもしたら――

「じゃあもうメイドでもやらせるしかないでしょ。一応それでやれって言われてるわけだし、伊瀬さんのこともあるんだし……そしたらメイドを雇ってるだけって弁明できる。まあ多分あの感じだと高校行ってなさそうだから問題にもならないでしょ」

「まあそうなるか……」

 そこに、部屋を案内し終わった大翔とシイナが帰ってきた。シイナは部屋を態々(わざわざ)用意してもらって申し訳ないですと丁寧に言った。

「しいなちゃん、実はさっき碧真と話してたんだけど、ここのメイドになるのはどう?」

「メイドですか?」

「もしかしたら甲斐田さんからも聞いてるかもしれないけど、まあメイドっていうか、ハウスキーパーとかお手伝いみたいな? 今ここの執事さん高齢でもう家事とかさせるのがかなりキツいから、()()()後任探してたんだけど」

 後半は茜がわずかばかり盛った。シイナは構わないです、とあっさり承諾した。

「じゃあ取り敢えず、服探さないとね」

 茜は碧真の方を向き、「碧真、あの服まだ持ってたよね? あんたが黒歴史言ってたやつ」

 それを聞いた途端、碧真は物凄く嫌そうな顔をした。

「お前、まさかあれ使うんじゃねえだろうな」

「そのまさかよ」

 茜は少々小悪魔的な笑みを浮かべた。

 

「――結構似合ってるんじゃない?」

 茜が着せたのは、黒を基調としたメイド服――碧真が高校時代、体育祭のレクリエーションで無理矢理着させられたものである。碧真は当時かなり恥ずかしかったらしい。

 それよりも、それを今見知らぬ女の子が着ているということ自体が異常である。碧真は無理矢理着させる茜に正気かとドン引きしていた。大翔はさすがにシイナのメイド服姿を見てやや発情しているようには――見える。

「おい茜、さすがにメイド服をここに来たばかりの子に無理矢理着させるのは可哀想だろ」

「そう? でもメイドといえばメイド服でしょ」

 大翔も同感して、間違いない、似合いすぎてる、と声高に言った。大翔はただメイド服姿自体を見ているだけだろうが、碧真は呆れて物も言えなかった。

「しいな……さんも文句あるなら言っていいぞ。あいつが勝手にやらせただけだから」

 碧真は少々呼び方に戸惑った。

「全然大丈夫です。あと別に呼び捨てでも構わないです」

 碧真はすまん、と軽く詫びた。

「とりあえず、これ正装ね」

 茜はさも当然かのように言った。

「別の服でもいいだろ……」

「ま、可愛いしいいじゃない」

 茜は、「もうこんな時間!」とわざとらしく言い、あとはよろしく、と大翔と一緒にそそくさと帰っていった。

「えっと……」

 碧真とシイナは顔を見合わせた。

「とりあえず……よろしく」

「……よろしくお願いします」

 

 深夜。シイナは与えられた自室に戻った。そして貰ったメイド服を着たままで、甲斐田に電話した。

「そっちはどうだ?」

「順調ですよ。そっちに居た時よりも快適に過ごせそうです」

「快適じゃなくて悪かったな」

 甲斐田は少し不満そうな声で言った。

「で、例の件は行けそうか?」

「少し様子は見ます」

「そうか」

 甲斐田がそう言うと、シイナは電話を切ろうとしたが、甲斐田が止めた。

「まだ何かあるんですか? そろそろ寝たいんですけど」

「そんな不満そうに言うな。いつものやつだ」

 甲斐田は息を整えた。

「――シイナ、依頼だ」

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