第七話 四月七日(日)少女は学校に行って説明をした
翌日、サユリに連れられて夢ヶ島高校にやってきたユウは案内された応接室で人を待っていた。
しばらくすると、ノックの音が響いて白髪混じりの壮年の男性と黒髪をポニーテールにまとめた女性が入ってきた。
「初めまして、私は校長をしております大代です。こちらが担任になる矢吹です」
「はじめまして。私が明日からユウさんの担任を務めさせて頂きます矢吹カエデです。よろしくお願いいたしますね」
二人とも優しい笑みを浮かべていた。その様子に少し安心しながら挨拶を返した。
「僕はユウと言います。これからよろしくお願いします」
「母のサユリです。子をお願いします」
「はい。さっそくなのですが、いくつか質問に答えていただきたいのですがよろしいでしょうか」
「どうぞ」
校長の大代がいくつか質問をし、それにユウかサユリが答えた。内容は学校生活に関わるもので、中にはほかの生徒への説明はどうするのかとも訊かれた。これに関しては家族内で決めており、家庭の事情で男から女になりましたくらいの簡単な説明までにした。
「では最後に、ユウさんの精神面は男性ですか?女性ですか?」
大代の質問に一瞬言葉を失った。
(この人は僕が男だったと理解した上で今の僕を見てるんだ……)
大代が向けてくる真っ直ぐな瞳に冷や汗を流しながら、ユウは口を開いた。
「女の子になってまだ数日、今日で四日目です。正直、今の僕は男のままです。ただ、僕は―――」
ユウの発言には、大代や矢吹だけでなく隣に座るサユリも驚いていた。
「――です。こんな僕でも大丈夫ですか」
「……はい。大丈夫ですよ」
大代は目を閉じ、何かを考えていたがやがて目を開くと微笑んでそう言った。
「それでは、本日の要件は全て終わりました。後は私の方でこの書類を受理しますので、もう大丈夫ですよ」
「分かりました」
ユウ達は席を立ち応接室を出たところで、矢吹に呼び止められた。
「あのっ、ユウさん。もしよかったら連絡先を交換しませんか」
顔を赤くした矢吹の提案に、ユウは快諾してお互いに連絡先の交換をした。
「たぶん元男という観点がいらぬ迷惑をかけますがよろしくお願いします」
その後、ユウ達は自宅へと帰った。
***
ユウが去った後の応接室で、大代と矢吹がユウのことで話していた。
「彼女はとても聡明ですね。それに、強い子だ」
「えぇ、そうね。きっと輪に溶け込めるわ」
「ところで、どうしてあんなことをお聞きになったんですか?」
矢吹の疑問に大代は、少し悲しげに微笑むと窓の外を向きながら遠い目で過去を思い出す。
「思春期の高校生にとって、性別はとっても大きな問題なんですよ」
***
ユウ達は自宅に帰った後、ユウの部屋で明日の入学式の準備をしていた。サユリは壁に掛かっている制服を見て楽しそうに笑う。
「これからユウちゃんの学校生活はどうなるのかしらね」
「…リヒト達と同じクラスがいいな。それなら怖いものはないから」
ユウは、自分の性別へのクラスの反応に不安を覚えながらも、友人であるリヒト達が同じクラスでいてくれたらと願っていた。
「ふふっ、リヒト君なら違うクラスでも来ちゃうと思うけどね」
「あぁ、そうかも。リヒトってそういうところあるよね」
ユウは苦笑いを浮かべると、明日の入学式に備えて早めに就寝することにした。明日が良い日になることを願いながらユウは眠りについた。
思ったより少なかったですが、日分けしてるので切りました。
文字数が安定しなくてすいません。