第五十八話 五月六日(月)少女は身体を休めた
なんか完結済みにすると更新が出来ないらしい…
連載中にして不定期更新を追加しておきます。
あらすじにも記入しておこう…
ゴールデンウイーク最終日。ふと目が覚めたユウは隣で寝息を立てるリヒトを見て微笑む。
(昨日の事は夢じゃないよね?)
そっと彼の懐に潜り込んで擦り寄れば、確かな温もりが現実である事を実感する。
「……えへへ」
視線をずらして窓の方を見ると、カーテンから差し込む光で朝になった事が分かった。
まだ眠たい目をこすりながら再びリヒトの寝顔を見る。普段は余裕ぶっている彼がいっぱいいっぱいで求める姿を思い出して余韻に浸る。
(体が怠いし痛い……リヒトにはずっと我慢させてたし僕も許しちゃったから仕方ないんだけど……)
女になって体力の落ちたユウに、リヒトの求愛に身体が耐え切れなかった。彼の体力が元々常人離れしていたのもあり、一晩で何度も求められてユウの身体は悲鳴を上げていた。
(でも、幸せだなぁ……)
ユウはリヒトの胸に顔を埋めると、その匂いに包まれて再び眠りについた。
暫くしてリヒトが目覚めると、甘く暖かい何かに抱き着いていた。ゆっくりと下を向けば、ユウの柔らかな肢体が惜しみなく自身の身体へと押し付けられていた。
「ユウ……」
「ん……おはよう……リヒト……」
慌てて起き上がると、ユウは気怠げに瞼を持ち上げて欠伸をしながら挨拶をした。そんな彼女の姿を見たリヒトの脳裏にある疑問が生まれた。
「……ユウ。動けそうか?」
「無理ぃ……」
「やっぱりな」
予想通りだったと言わんばかりに苦笑を浮かべる。ユウは少し辛そうな表情を見せると、ベッドの上でぐったりとする。
「うぅ……。リヒトの体力お化けぇ……」
「悪かったって。ほら、水飲め」
「ありがとぉ……」
渡された水をゆっくり飲むと、ようやく一心地ついたユウは大きく伸びをした体勢からリヒトへ腕を出した。
「起こして」
「もう少し寝てなくて大丈夫か?」
「多分寝たきり状態になって身体が鈍る」
「わかったけど、無理はするなよ」
「うん」
リヒトはユウの背に腕を回して優しく起こした。上体を起こした彼女は立とうとしてそのまま彼の方へ倒れこんだ。慌てて抱きかかえた一糸纏わぬユウの柔らかい感触に思わずドキリとしたリヒトはおくびにも出さず、目をぱちくりとさせているユウの様子に苦笑いする。
「力が入らない……かも……」
「だろうな。とりあえず服を着ろ。俺も着替えるから」
「うん」
ユウに脱ぎ捨ててあった服を渡すと、リヒトは自分の服を拾い上げて手早く身に着けていく。その様子を見たユウも身支度を整えようと座ったままゆっくりと着ていく。
着替え終えたユウがベッドから立ち上がる。が、やはり腰が砕けてそのまま座り込んでしまった。
「……どうしよう」
「あー、まぁ、今日は一日家で過ごせば良いんじゃねぇの?移動には俺の腕を使え」
「そうだね。じゃあお言葉に甘えて」
「おう」
リヒトはユウに手を貸すと、彼女と共にリビングへ向かった。
***
二人がリビングに向かうと、ソファーで寛いでいたサユリが驚いた様子で駆け寄ってきた。
「ゆうちゃん!身体は平気なの!?」
「何とか……。動いてないと落ち着かなくって」
心配そうに見つめてくるサユリに苦笑しながら答える。
「……あんまり無理しないでね。リヒト君も今日はお願いね」
「わかってます。あんまり自覚無いみたいですし」
「もう、二人して過保護過ぎない?」
「ユウは無理して突っ走る癖があるから、これぐらいで丁度いいんだよ」
「むー」
不満気に頬を膨らませるユウの頭を撫でると、彼女をテーブルの席に座らせてリヒトはキッチンへ向かう。朝食の配膳を始めたリヒトにユウが手伝いを申し出たのだが、彼は頑なに断った。
「一人で立てないなら大人しくしてろ。流石に両手塞がったままは危ないからな」
「……お願いします」
「素直でよろしい」
リヒトの言い分に反論できないユウは、恥ずかしそうに顔を赤くすると俯いて小さく呟いた。そんな彼女に苦笑しつつ、リヒトとサユリで二人分の食事を用意して、彼も席に着いたら食事を始めた。
「ユウちゃんには流し込めるもの用意したわよ」
「母さん、ありがとう。良く分かったね?」
「私がそうだったからよ。貴方もそうなんじゃないかなって思って作っておいたの」
ユウは礼を言うと、目の前に置かれたスープを口に含んだ。その優しい味にホッとして笑顔になる。
「美味しい」
「それは良かったわ。おかわりもあるから遠慮せずに言ってね」
「うん!」
嬉しそうなユウの姿を見たリヒトとサユリは互いに顔を見合わせると、同時に微笑み合った。
食事を済ませた後、ユウの自室で談笑しているとリヒトのスマホが連続で鳴る。彼がちらりと一瞥すると、何件もの通知が一人から送られていると表示されていた。
リヒトはスマホをマナーモードにしてそっと画面を伏せた。
「リヒト、凄い鳴ってるけどいいの?」
「うちの母さんからスタンプを連投されてるだけだから放っておく」
「えぇ……」
リヒトの母は普段から頻繁にメッセージを送ってくるタイプではない。その彼女が立て続けに連絡を入れてきているのだ。リヒトは嫌な予感がしていた。
「リヒト君、何かあったの?」
「さぁ……あの人のことだし、ユウに関係することじゃね?」
「ちょっと見ても良い?」
「いいぞ。……ほれ」
リヒトはユウに自身のスマホを手渡した。受け取った彼女は恐る恐るという感じでロックを解除してトークアプリを開くと、予想通りアイカからのメッセージを目にして思わず固まってしまった。
「……ユウ?どうした?」
「アイカさんから大量のメッセージ来てた……。何で結婚おめでとうなの?」
「……その様子じゃ、いずれユウのスマホにも飛んでくるんじゃないか?」
「…………」
リヒトの言葉に、ユウは遠い目をして現実逃避をするかのように窓の外を眺める。
そんな彼女の様子を知ってか知らずかユウのスマホが鳴りだした。ユウとリヒトは揃って苦笑いを浮かべて見合わせた。
「……とりあえず、返信しておくね」
「ああ」
ユウは深呼吸をしてからゆっくりと文章を打ち込む。打ち終わったユウが送信ボタンを押した時、またもや着信音が響いた。今度はリヒトのスマホからだった。
「ん?はい、カズヤからだよ」
「おう、結局都合が合わなくて連休中は無理ってなったらその話かな」
「多分そうだろうね」
「……今度の土曜に会えないかだってさ」
「了解。僕の方も伝えておくよ」
「よろしく」
リヒトはトークアプリを閉じて時計を確認すると、時刻は14時半になろうとしていた。
「ユウ、身体の調子はどうだ?」
「だいぶマシになってきた。リヒト、ゲームしよ」
日が暮れるまでゲームを楽しんだ二人。夕食を共にした後、リヒトを見送ったユウは部屋のベッドに寝っ転がる。
「……ふぅ。これなら明日は平気そうかな」
明日から再開する学校での授業に備え、早めに就寝することにしたユウは寝支度を済ませると横になる。
昨日のぬくもりが忘れられず、隣に誰もいないことに少し寂しさをつつ眠りについた。
完結済みは最終手段だったらしいですね。
見切り発車なこの作品は全行程その場の思い付きで行動しています。
ご了承ください。




