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第三十六話 四月二十三日(火)少女は心配された

週三回更新は出来たら維持したい…。

無自覚に同性を惑わした翌日、ユウはいつも通りリヒトと登校していた。道中でリヒトは昨日の部活動について話題に出した。


「ユウ、体力が落ちたのもそうだけど一番の原因って筋力じゃね?」


「原因が筋力?なんで?」


「男の時と遜色ない動きをしてたろ?あれって足りない筋肉量に対して無理に力を引き出してるんじゃないか?」


「あー……」


確かに言われてみれば、と思い当たる節はある。今も口にはしていないが全身筋肉痛になっていたりする。


「そのままでいると最悪断裂もありえるんだから矯正しとけよ」


「……今よりも弱くなるよ?」


「これでユウがぶっ倒れる可能性が減るならそれでいい。なにより――」


リヒトはユウの手を握って立ち止まる。いきなりの行動にユウは驚いて彼の顔を見る。リヒトは真剣な表情を浮かべており、ユウは思わず唾を飲み込んだ。


「俺にとって大切な人の体なんだ。大事にしてくれ、頼む」


「……はい」


ユウは恥ずかしさのあまり俯きながら答えた。そして、二人は手を繋いだまま学校へと向かった。

教室に入るとクラスメイト達の視線が二人に向けられるが、ユウは気にせずに自分の席に着いた。すると、隣のクラスのはずのレイナから声を掛けられる。


「おはよ、ユウ。体は大丈夫?」


「おはよう、レイナ。辛うじて動くよ」


レイナはユウの机のに腰掛けると、椅子に座ったユウの頭を撫で始めた。


「無茶して体壊さないようにね!」


「えっと……どう反応すれば良いのかな?」


「素直に受け取れ。昨日のお前は傍から見てても焦って見えたからな」


リヒトが言うと、ユウは困ったような笑みを見せた。


「心配かけてごめんね」


「まったくだよ!今日も部活があるけど見学だけにするのか?」


「えっと、今日は生徒会の召集があるからそっちに出て時間があれば参加するよ」


「マジか。そういえば生徒会役員だっけ。了解、部長にも伝えとくよ」


「ありがとう」


「でも、無理だけはしないでよ?疲弊した状態のユウは目に毒だから」


「……目に毒って何?」


「海原君説明よろしく!それじゃね!」


レイナが満足した様子で教室を出ていく。自分のクラスに戻ったのだろうが、ユウは直前の言葉の意味が分からず首を傾げていた。


「……リヒトは何か知ってるの?」


「あー、多分お前の姿がエロかったんだろ」


昨日、二人が休憩中の姿が見えた時にレイナが狼狽えていたのを思い出していた。実際に見たわけではないが、疲弊して荒い息遣いの上気した顔で無防備に話していたんだろう。ユウはその辺のガードがまだ甘いから。

リヒトの見解を述べると、ユウは顔を赤く染め上げた。


「それは、その、えっと……」


「まぁ、今のお前は男の目線を集めやすい美人だから仕方ない。ただ、あんまりそういう姿を見せるなよ?変なのに絡まれるぞ」


「うぅ……」


ユウは羞恥心で体を縮こまらせている。その姿にリヒトは苦笑いを浮かべて頭を優しく撫でる。


「そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫だって。俺以外には見せないでくれれば問題ないし」


「うん……わかったよ」


ユウは頬を赤くしたまま答える。

その後、予鈴が鳴り担任が入ってくる。いつも通りの授業が今日も始まった。


***


昼休みになり、いつものように弁当を食べ始める。今日のメニューは唐揚げがメインだった。


「ユウ、一個ちょーだい♪」


「いいよ。はいどうぞ」


カナの言葉にユウは弁当箱を差し出す。カナは箸を伸ばして唐揚げを掴み口に運んだ。そして、咀しゃくすると笑顔を浮かべた。


「ん~、やっぱりユウの作る料理は美味しいね!」


「ありがと。そう言ってくれると作り手冥利に尽きるね」


ユウは微笑んで返す。その隣ではリヒトが深く頷きながら同感していた。


「そうだろ、そうだろ。ユウの作った料理は全て最高なんだ」


「もう、大袈裟だよ」


ユウは照れ臭そうにしている。その様子を見てリサはニヤリと笑う。


「ユウの手料理には最高の調味料が入っているものね」


「……なにそれ?」


「愛よ。ユウはリヒトの事が好きで好きでたまらないみたいだし」


「ちょっと待って!?」


ユウは驚愕の声を上げる。周りを見ると教室内にいたクラスメイトの皆が納得している様子を見せていた。

数名の女子からはグッとサムズアップが向けられて、ユウは居た堪れない気持ちになった。


「ユウもリヒトも普段から好意ダダ漏れなんだから分かりきってたじゃないの」


「それはそうだけど、口に出されると恥ずかしいものは恥ずかしいよ」


「難儀な性格ね。リヒトを見習いなさいな」


平然とした顔のリヒトに向けば、彼からは笑顔が返ってくる。


「羞恥より嬉しさが勝ってるだけで、恥ずかしさはあるぞ」


「貴方はもう少しユウに対する感情を抑えなさいよ。周りも戸惑う時あるのよ」


「俺のは周囲への牽制も含めてるからな」


リサに呆れた表情で言われるが、リヒトは平然と言い返した。そのやり取りでリヒトからの嫉妬を含んだ愛情を感じたユウが赤くなる。

そんな三人を見てカナはクスッと笑った。

その後もユウは昼休みが終えるまで散々からかわれ、放課後になって逃げるように生徒会室へ向かった。


「失礼します」


ユウが中に入ると既に全員が揃っており、会長席に座っているシズクと副会長のリョウが書記の三人から報告を聞いていた。


「揃ったな!よし、始めようか」


シズクの号令の下、会議が始められた。題目は体育祭実行委員との協力関係だそうだ。


「知っての通り、体育祭では実行委員が表立って取り仕切っている。なので私達生徒会は今回裏方に回る」


「それで、俺達は何をするんですか?」


「主に競技運営の補助や警備のサポートになるわね。後は来賓等の対応とか」


カズヤが尋ねると、シズクは淡々と答える。そのまま仕事の内容についての説明が始まった。


「おおよそのスケジュールが決まったので、順に説明する。まず開催日は五月十七日の金曜日。当日は私とカズヤ、後はユウにも働いてもらおうか」


「僕もですか?」


「ああ、勿論だとも。次期副会長候補だからな」


「わかりました。頑張ります」


「頼んだぞ。それじゃあ、次に補助する項目とそれぞれの分担だな」


リョウがボードに張り付けた紙には箇条書きに纏められた内容が書かれていた。


「委員会の橋渡し役は庶務、経費の監視は会計。書記は実行委員の担当者との繋ぎと今後の会議の記録を頼む」


「ユウやカズヤには当日までの生徒会内の情報共有を担当する。要はここで書類整理だ」


「了解です」


「はい、任せてください」


ユウとカズヤが返事をする。その後、リョウは説明を続けた。


「当日の主な役割はこの四つだが、細かい所は当日でないと分からないだろうからその時に別個に説明する。他に何か質問はないか?」


「特にありません」


ユウの返答に他の面子も首肯で答える。


「それなら、今日の会議はこれで終わりにしよう。それと、今日はこの後ユウは残ってくれ」


「え?はい、分かりました」


ユウは少し不思議に思いつつも了承した。その後、生徒会メンバーはそれぞれの部活に戻るため解散となった。

ユウはシズクと共に会議室に残り、二人きりになると彼女は口を開いた。


「ユウ、体調は大丈夫か?」


「問題ないですよ」


ユウは微笑みながら返す。しかし、シズクは心配そうな表情を崩さなかった。


「本当に無理だけはしないでくれよ。昨日も倒れかけたって聞いたぞ」


「そうですけど、もう大丈夫ですよ。散々リヒトに釘を刺されましたから」


「ならいい。お前に倒れられると心配する人は結構いるからな」


「はい……ありがとうございます」


ユウはシズクにお礼を言うと、シズクが真剣な表情になった。


「本題に入るが、ユウ。私は君を次期副会長候補として見ている」


「それは……」


「生徒会メンバーには話してあるし、教職員の了承も得ている。後はユウの意思次第だ」


「……僕はもう前に進みますよ」


真っ直ぐに見つめ返すユウに、シズクは表情を崩して感慨深げに笑った。


「ユウは恋を知ってから成長したな。リヒトのお陰か」


「…………リヒトがいないと使い物にならないですけどね」


「君らの関係は見ていて羨ましいよ。さて、そろそろ解散しようか。ユウも部活に行くのだろう?」


二人は会議室を出て、それぞれの部活へと向かった。

いつかちゃんとしないとと思いつつ資料を作らないから名前を間違えるんですよね。

誤字報告助かってます。ありがとうございます。

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