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第三十四話 四月二十二日(月)少女はクラスメイトに見られた

異様に眠くて筆が進まない…

皆さんも体調には気を付けてください。

※祝・十万文字達成!

授業が終わった後、昼休みに昼食を食べ終えたリヒト達は教室でクラスメイトと談笑をしていた。話題はやはり体育の事だった。


「佐倉さん!さっきの試合すごかったよ!」


「あんなに速く動けるんだね」


「あの海原君についていける男バス部員はいなかったのに、佐倉さんは善戦してたよね!」


「そうかな?」


ユウは照れ臭そうに頬を掻いていたが、リヒトは呆れたような顔をしていた。その視線に気付いたユウが問いかけた。


「何?」


「いや、何でもねぇよ」


「気になるんだけど……」


「気にすんな」


釈然としない様子のユウだったが、他の女子生徒が声を上げた事で意識が逸らされた。


「ねぇねぇ、二人って付き合ってるんだよね?」


「えぇ!?そ、そうだけど、急に何!?」


唐突な質問にユウは狼惑した表情で答えた。


「だって佐倉さん、海原君にお姫様抱っこされて満更でもない顔ですり寄ってたよね?」


「あぅ……あれはリヒトが強引に……」


「でも嫌じゃないんでしょ?」


「それはまぁ……うん、そうだね」


「やっぱり!」


嬉しそうな声を上げる女性陣とは対照的に、男子生徒は冷ややかな目線をリヒトに送っていた。


「羨ましいぞこの野郎」


「俺達にもチャンスはある筈なのに……何故だ?」


「あれは信頼関係なくちゃ拒絶されるぞ」


「何だと!?」


「うるせぇ!そんな事より佐倉さんとイチャコラしやがって!」


「大人しく嫉妬を受け止めろ!」


騒ぐ男子達の姿を見てリヒトは溜息をつくと、隣にいるユウの頭を撫でた。ピクリと肩が跳ねたユウに気にせずリヒトは手を動かした。


「あ~、落ち着く」


「……僕撫でると落ち着くって何?」


「気持ちいいし、なんかこう……落ち着くんだよ」


「そう……もっと撫でてもいいんだよ?」


「はいはい」


ユウの甘えた声を聞いたリヒトは苦笑いを浮かべると、再び彼女の頭を優しく撫でていた。その様子を見ていたクラスメイトは唖然として固まっていたが、近くにいたリサにそっと尋ねた。


「えっと、その、急に甘い空気になったんだけど……」


「これが平常運転よ。慣れなさい」


「これで!?空気に当てられてこっちが照れちゃうよ」


顔を赤くするクラスメイトに、リサは小さく微笑むと二人の方へ歩み寄った。


「二人とも、教室の空気入れ替えたいからちょっと出てちょうだい」


「りょーかい」


「分かったよ」


二人は立ち上がるとそのまま教室から出て行った。その背中を見送ったクラスメイト達は、お互いに視線を合わせた。


「何か……凄かったね」


「そうね……」


「あんなにラブコメみたいな光景初めて見たわ……」


「私もだよ」


「てか海原君がデレてる所を初めて見たかも」


「それを言うなら佐倉さんのあんな蕩けた顔もでしょ」


「確かに」


「……」


「「「「「羨ましい……」」」」」


独り身の全員が口を揃えた瞬間、扉が開かれてリヒト達が戻ってきた。


「ただいま」


「おかえり。話は終わったからもう気にしなくていいわよ」


「おう。了解」


自然体で手を繋いでいた二人は、何事もなかったかのように席に着いた。クラスメイト達はツッコミしたい気持ちを抑えて次の授業の準備を始めた。


***


気まずい空気が流れた放課後、ユウとリヒトは部室に向かっていた。


「今日も生徒会は大丈夫なのか?」


「うん。呼ばれるのは明日かな」


「そっか」


会話が終わると沈黙が流れ、ユウの足音だけが廊下に響いていた。


「ねぇ、リヒト」


「どうした?」


「今日の体育でさ、リヒトの本気が見れて楽しかったよ」


「そうか?短時間だったし、ユウも無理してたろ」


「それでも、僕は後悔してないよ」


柔らかく笑うユウを見たリヒトは、眩しそうに目を細めて彼女の頭を撫でた。


「そうか、ありがとうな」


「……ん」


二人が話している間に部室の前まで辿り着き、二人して中に入った。


「失礼します」


「お、来たね」


中には部長の滝沢アカリが既におり、椅子に座って寛いでいた。挨拶をした二人はそのまま向かいの椅子に腰掛けた。


「今日はどうしました?」


「いやー、なんでもユウちゃんもスポーツ万能だとか。一年で凄い噂になってるよ」


「あぁ……なるほど」


「そこで、来月からは運動部を転々としてくれない?」


「……えぇ?」


唐突な提案にユウは困惑の声を上げた。その反応を見てリヒトは口を開いた。


「会長、どういうつもりですか?」


「海原君がバスケ部でやったように、色んな部で発破をかけてほしいんだ」


「なんでそんな事を?」


「向上心はあっても大会で良い実績を上げられなくてね。女子部にもそろそろ活躍してほしいんだ」


「成程……」


「それに、ユウちゃんはどの競技でもエースになれるポテンシャルがある。だから色々な種目を体験してもらいたいんだよ」


「そういう事でしたら分かりました」


納得した様子のユウは軽く頭を下げると、リヒトに目を向けた。


「リヒトにも何かあるんですよね?呼び出しの中で指定してましたし」


「ああ、海原君は……これだ」


アカリは鞄から紙を取り出して机に置いた。それを見た二人は首を傾げた。


「これは?」


「来週の土曜、うちの高校と隣の落葉高校の公開練習試合があるんだ」


「公開練習試合……」


「しかも相手は全国区の強豪チームらしい」


「それはまた……」


「勿論君達には出てもらうよ」


アカリの言葉にユウとリヒトはお互いの顔を見合わせた。


「僕も出るんですか?」


「当然!これは男女共同企画でね、女バスも試合を行うから」


「ええ!?聞いてませんよ!」


「言ってないもの」


悪戯っ子のように笑みを浮かべたアカリに、ユウは溜息をつくと諦めの表情を見せた。


「……それで、今日から試合まではバスケ部に専念すればいいんですか?」


「お願い出来るかしら?」


「分かりました」


「俺も大丈夫です」


「ありがとね」


話がまとまった所で、アカリは時計に視線を移した。


「もうこんな時間。早速いってらっしゃい」


「では失礼します」


「失礼します」


ユウ達は部室を出て体育館へ向かった。その道中、リヒトはふと思い出したかのように呟いた。


「そういえばユウは体力平気か?」


「試合じゃなければなんとかってところかな。リヒトとの試合はもう無理、倒れる」


「あの時はマジで焦ったけどな」


「あはは、ごめんね」


ユウは苦笑いすると、リヒトの手を握った。


「でもリヒトには楽しんで欲しかったから。今の僕に出来ているかわからないけど」


「十分だよ。ユウとの試合、本当に楽しかった」


「良かった」


ユウの笑顔につられてリヒトも笑うと、二人は手を繋いだまま廊下を歩いて行った。

二話目でも作中時間の一日が終わらない?

見返すと、月曜日は全部長かった。

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