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第三十話 四月二十日(土)少女は招待された

やっぱ投稿頻度落ちますね。

次の投稿はいつになるやら…

朝早く、ユウはリヒトの家に来ていた。当人には内緒で、彼の母親ことアイカと会う約束をしていた。

インターホンを鳴らせば、間もないうちに玄関が開かれた。


「ユウちゃん、いらっしゃい」


「おはようございます。今日はよろしくお願いします」


「ふふ、緊張しなくて大丈夫よ?私もユウちゃんとお話したいって思ってたから」


そう言ってアイカはユウを招き入れる。ユウはリビングに通されると、紅茶を出されたので遠慮なく頂戴する。


「美味しいです」


「良かったわ。ユウちゃんが気に入ってくれると思って用意したの」


「ありがとうございます。ところで、どうして僕を呼んだんですか?」


ユウは早速本題に入った。すると、アイカは少し困ったように眉尻を下げて答えた。


「実はね、最近リヒトの様子が変なのよ。何かあったんじゃないかしら……」


「変ですか?」


「ええ。いつもならユウちゃんの事ばかり話すのに最近はしどろもどろになるし……ユウちゃんなら何か知らないかなって思って呼んだの」


「……もしかして」


ユウはある可能性に思い至り、この場にいないリヒトに内心で文句を言う。アイカはその様子に気づくことなく言葉を続けた。


「ユウちゃん、リヒトと喧嘩でもしたの?」


「いえ、そういうわけではなくて……」


紅茶の入ったカップを置いてユウは姿勢を正してアイカを真っ直ぐに見据えた。その真剣さにアイカも背筋を伸ばす。


「単刀直入に言いますが、リヒトと交際させてもらってます」


「……えっ!?」


「火曜日に告白してから付き合ってます」


「そ、そうなの……ユウちゃんはリヒト君の事が好きなの?」


「はい。好きです」


ユウの即答ぶりにアイカは一瞬だけ面食らうと、すぐに破顔して喜んだ。


「まぁ!それは嬉しいわ!」


「あ、あの……それでですね」


ユウが言い淀むと、アイカはすぐに察したようで表情を引き締めた。


「そうよね……。リヒトのこと、煮るなり焼くなり好きにしなさい!私が許可するわ」


「……はい?」


ユウは予想外の発言に呆気に取られる。そして、我に返ると喜んで飛びついた。


「わかりました!リヒトの寝込み襲ってきます!」


「あら、大胆ねぇ。私は止めないけど……避妊だけはしっかりしなさいね」


(……流石にそこまで進めないです)


ユウは思わず頬を赤らめて目を逸らすが、アイカはそんなユウの様子に気づいていなかった。


「じゃあ、リヒトのとこ行ってきます」


「ええ。頑張ってらっしゃい」


「はい!」


ユウは意気揚々と家を出ていった。残されたアイカは一人、ぽつりと呟く。


「……ユウちゃん、リヒトの事頼んだわよ」


***


「おはよう、リヒト」


「ユウか、おはよ……う?」


ユウが声をかけるとリヒトが微睡みから覚醒した。目覚めた彼が瞼を開けてまず視界に入った彼女の姿は普段とは違う服装だった。白を基調としたワンピースを着て、髪をポニーテールにして纏めている。その姿にリヒトは目を奪われた。


「どうしたの?」


「……似合ってるな」


「ありがとう。昔聞いたリヒトの好みに寄せてみた」


「ああ、なるほど」


ユウの言葉に納得しつつ、リヒトは改めてユウの姿を見つめた。


「ところで、今日はどうしてここに?いや、それよりもどいてくれ。色々不味い」


「やだ。僕がリヒトと触れていたいの」


リヒトの上に跨っていたユウは上体を倒してリヒトの胸板にそっと身を委ねる。その仕草と、ユウの柔らかな身体の感触にリヒトは生唾を飲み込む。


「ユウ……」


「んっ……」


ユウの唇にリヒトは自分のそれを重ねる。何度も角度を変えてユウの口内に舌を差し入れれば、彼女はびくりと震えたが抵抗する事はなかった。


「ふぅ……っ、はぁ」


「……ユウ、好きだ」


「うん、僕もだよ」


二人はそのまま再びキスをした。お互いの気持ちを確かめるようにゆっくりと時間をかけて交わす。やがて満足したのか、ユウはリヒトから離れた。ベッドの端に座り込んだユウは、ぼーっとした様子でリヒトの手を握る。焦点の合っておらず虚空を見つめるユウに、リヒトは心配になった。


「ユウ?大丈夫か?」


「んー……ふわふわする」


「何だって?」


「なんかね、幸せな気分なの」


蕩けた笑みを浮かべながらユウは言葉を紡ぐ。その瞳には確かな熱が宿っている。


「リヒトが好き。大好き」


「……俺もユウの事、愛してるよ」


「嬉しい……」


ユウは再びリヒトへと抱きつき、彼の首筋に顔を擦り付ける。甘えるようなユウの行動にリヒトはくすりと笑って、優しく抱きしめ返すのであった。内心で暴れ狂う欲求を理性で抑えつけつつ、ユウが落ち着いてくれるまで待った。

十分ほどして満足げにユウが体を離せば、悶々とするリヒトの姿が目の前にあった。それをユウは楽しげに見やる。


「ユウ、そろそろいいか?」


「そうだね。アイカさんに報告してなかった罰はこのくらいにしておこうか」


「……やっぱり怒ってたか」


「そりゃあ、様子が違うのにリヒトは何も言わないんだもん」


ユウはそう言って頬を膨らませたが、すぐに笑顔に戻る。そして、リヒトの手を引いて立ち上がった。


「さぁアイカさんのところへ行こうか!」


「……悪い。先行っててくれ」


「リヒト?……わかった」


「助かる」


リヒトの反応にユウは首を傾げたが、はっとして顔を赤くして素直に先に部屋を出た。リヒトはその背中を見送った後、大きくため息をつく。


「……これは無理だな」


リヒトは自身の下半身に視線を落として、苦々しい表情をする。そこには既に欲望の証が浮かんでいた。


***


「戻りました」


ユウ達がリヒトの部屋からリビングへ降りるとアイカが出迎えてくれた。彼女はいつも通りの優しい笑顔でユウを迎える。


「おかえり、ユウちゃん……?顔が緩んでるわよ。それに真っ赤」


「えっ!?そ、そうですか?」


「幸せそうな顔してるわよ。何したの?」


アイカの指摘にユウは少し考えると、照れくさそうに答えた。


「その……思いっきり甘えまして」


「あら!良かったじゃない!」


「報告してくれなかったリヒトには我慢を強いてもらおうかとギリギリを攻めてみました」


「……ユウちゃん、襲われてもいいの?」


「まぁ、彼女ですし」


(この子、どっちに転んでも良いようにしてたのね……)


アイカは紅茶を用意してからユウにソファーに座るように促す。ユウは大人しくそれに従った。すると、隣に腰掛けたアイカがユウに尋ねる。


「それで?リヒトはどうしたの?」


「リヒトは今僕への想いをトイレで吐き出してます」


「……あの子が可哀そうね。そこまで攻めたの?」


「リヒトが悪いんですよ。交際の事をアイカさんに何も言ってくれませんでしたから。だからお仕置きを兼ねて」


にっこりと笑みを浮かべるユウに、アイカは呆れたように笑う。


「なるほどねぇ……。ユウちゃんも中々いい性格しているわよね」


「褒め言葉と受け取っておきましょう」


二人はくすりと笑い合う。それからしばらく雑談をしていると、ようやくリヒトが降りてきた。彼はどこか疲れ切った様子だったが、ユウの姿を見つけるとその目に光が戻る。ユウの隣に座り込むと、彼女の肩にもたれかかった。


「朝から疲れた……母さんごめん」


「リヒトが恥ずかしがって隠し事するの久しぶりだわ」


「すいませんでした!」


「ユウちゃんが罰したからもういいわよ。大変だったでしょう?」


「ああ。ユウもごめんな。それとありがとう」


「どういたしまして」


ユウがリヒトの頭を撫でると、リヒトは嬉しそうに目を細めた。その姿を見たアイカは微笑ましく思ったのか、口元に手を当てて笑みを浮かべる。


「本当に変わったわね。前じゃこの光景は無かったわ」


「僕自身こうなるとは思ってなかったです。リヒトは憧れだったから」


「俺はユウが男だったから踏み止まってたけど、女になった時点で時間の問題だった気がする」


「あら?じゃあ、ユウちゃんが女の子になる前から付き合ってた可能性もあるわけね?」


「俺があってもユウは逃げる気がするからなぁ」


「否定できない……」


リヒトの予想にユウ自身もそう思ったのだろう、そっと顔を逸らした。アイカはくすりと笑って、ユウの頭に手を置いた。その表情には慈愛が込められている。


「ふふ、私はどっちのユウちゃんも気に入ってるのよ。これからもリヒトを支えてあげてね」


「はい!」


アイカの言葉にユウは元気よく返事をした。その様子を見てリヒトとアイカが目を合わせて、どちらともなく笑い出す。ユウはそんな二人を見て首を傾げるのであった。

てか、この作中の時間の進みやばくない?

夏とか冬とかいつ書けるんだ?

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