第二十八話 四月十八日(木)少女は生徒会の仕事を片付けた
そう言えば、その場で作った設定の回収要ります?
カズヤ(十九話)の話、回収するまで先が長そう…
ユウとリヒトはいつも通り登校すると、教室に入るとクラスメイト達に挨拶をしながら自分の席に着いた。
ユウは鞄を置くと、既に来ていたリサの元へ向かった。
「リサ、おはよう」
「おはよう。どうしたの?」
「昨日言ってた部活の件なんだけど、明日から部活に時間が取れるようになるかも」
「本当!じゃあ早速明日行かない?」
「うん。予定を確認してみるね」
ユウが携帯を取り出すと、リサは嬉しそうな表情でそれを眺めていた。
「……ユウちゃん前より可愛くなってない?」「さっきも機嫌が良くて笑顔が柔らかかった」「それ絶対彼氏となんかあったよね」「間違いない」
女子達がひそひそと話していると、ユウは連絡が終わって携帯を閉じる。
「今日は放課後に生徒会の仕事があるけど、その後に部室に行って話詰めてくるよ」
「わかったわ。私も部長に話し通しておくね」
「うん。じゃあまた後でね」
ユウは自分の席に戻ると、リヒトが近づいてきた。
「ユウ、もう部活参加出来そうなのか?」
「んー、一応生徒会の仕事も今日中には落ち着きそうだから、頻度は分からないけど大丈夫そう」
「なら良かったな。でも無理はしないでくれよ?」
「分かってるって」
ユウはリヒトの肩に手を乗せると、微笑んだ。
放課後になると、ユウは生徒会室に向かった。
扉を開けると既にシズクが来ており、既に書類に手を出していた。慌ててユウも積まれた未処理の書類の山から半分ほど奪う。
「先輩、手伝いますよ」
「すまない。助かるよ」
ユウは手早く仕事を始めると、シズクは感心した様子でユウを見た。
「やはりユウがいると効率が一気に上がるから助かるよ」
「いえ、シズク先輩が抱え込みすぎなだけです」
「謙遜するな。私とてちゃんと仕事を割り振っているさ。君のおかげで他の役員達の負担が減っている。本当に感謝しているよ」
「……そういって貰えると嬉しいです」
ユウは照れくさくなりながらも、作業を続けた。
ある程度片付け終わるとシズクも一息つくようにお茶を飲む。ユウも同じように休憩を挟むと、生徒会室の扉が開かれた。
「すいません。授業伸びちゃって遅れました……って、憎き山が無い!?」
「遅れましたー。うわ、めっちゃ減ってる」
霧島ユイと尾野カズヤが入ってきた。
「やぁ二人とも。今日は遅かったな」
「先生の授業が長くなってしまったんですよ……」
「担任に用事を頼まれちゃったもんで」
「そうか。今日は半分用事で不在だからな。構わないさ」
「すまない!遅れた!」
慌てた様子で副会長がカズヤの後ろから現れた。
「大丈夫だ。大分余裕はある」
「良かった……。昨日よりも大分減ってる気がするがこれは?」
「まあいいから座れ。そんなに時間もかからない」
全員が席に着くと、シズクは分別しておいた書類を振り分けた。
「これで体育祭の仕事は全部だ。ここにいない書記の三人は実行委員会の集まりに参加してもらうがな」
「了解。……これユウが既に手を加えてないか?」
「ああ、ユウには手伝って貰った。文句あるか?」
「無いです!ユウ、後でその手際の秘訣を教えてくれ」
「私も!これまとめ方上手過ぎるよ!」
「別の仕事で余裕があったら僕なりのやり方でよければ」
ユウは苦笑いしながら答える。その後、黙々と進めた仕事は一時間もかからずに終えた。
「さて、今日で大きな仕事は終わりだ。次から集まる頻度は減るから、トークアプリで召集を掛ける日以外は部活に参加してくれ。解散!」
シズクの言葉に全員立ち上がると、戸締りするシズクを残して部屋から出て行った。
ユウは時間を確認して、半端に余ったこの時間で部室に顔を出そうと決めた。
(リサの件も相談したかったし、丁度いいかな)
スマホで部活用のアプリを確認すると、部長は今被服部にいるらしい。ダメ元で連絡したら、出来たら応援に来てくれと返事が返ってきた。
ユウは急いで被服部の部室に向かうことにした。
***
ユウは部室棟に到着すると、中に入って行く。
「失礼します。部活動支援部の佐倉です」
「お、来たね。じゃあ早速始めよう」
部長の滝沢アカリはユウに気づくと、手招きした。そしてそのまま二人で机を挟んで向かい合うように椅子へ腰掛けた。
「えっと、部長は何をやってたんですか?」
「ふっ、よくぞ聞いてくれた。これは『コスプレ衣装作成』だよ」
「おおー……凄いですね。僕は何をすれば?」
「そこの型紙の山を出来る限り片付けたいのよ。ミシン頼める?苦手なのよ」
アカリは横に目を向けた。ユウも視線の先を辿ると、一着の量ではない型紙が積まれていた。
「わ、分かりました」
ユウは鞄を置くと、ブレザーを脱いで作業に取り掛かる。アカリは採寸表と資料を置いて裁ちばさみ片手に裁断を始めた。
ユウは黙々と作業をしていると、ふと疑問が生まれた。
「そういえば、ここの部員はいないんですか?」
「ううん。佐倉さんが来るちょっと前に皆追加の材料の買い出しに行ってるわ。すぐ帰ってくると思
うけどね」
「なるほど」
ユウが納得すると、ドアが開かれる音が聞こえた。
「ただいま戻りまし……って、ユウ!?」
「あれ、カリン。被服部だったんだ」
戻ってきた部員の中で声を上げたのはクラスメイトの藤堂カリンだった。彼女は驚いた表情を浮かべながらユウを見る。
「どうしてユウがここに?」
「僕は部活動支援部に所属してるから。部長に用があったからついでにお手伝い」
「なるほど。滝沢先輩、進捗はどうですか?」
「佐倉さんのお陰で結構進んだよ。見てほら凄くない!?」
「うわ、ホントに進んでますね……。ユウありがとう」
カリンは部長が見せた完成品を見て、素直に感心していた。しかし同時に一つの違和感が頭に浮かんでいた。
(真っ直ぐな縫い目……慣れてる?)
カリンは目の前にある完成品をまじまじと見る。普通なら針が刺さったりして歪な部分が出来るはずだ。それなのに一切無い。
それはまるでプロの職人が作ったような出来栄えだった。
「……ところで、これ誰の分なんですか?」
ユウは縫った服のサイズがこの場の被服部の人達の誰にも合っていないことに気付いた。
「それは演劇部の衣装よ。主演予定の人の衣装なので内緒ね」
「そういう事……よし、二着目出来た」
ユウは話しながらもミシンを使う手元は止まらず、どんどん布を畳んでいく。
「……あの、ユウは裁縫が得意なの?」
「ああ、一応ね。趣味程度だけど」
「そっか……」
カリンはユウの手際の良さを見て、改めて自分のクラスメイトは普通の高校生じゃないと感じた。
あらかた型紙を裁断し終えたアカリがユウに話しかける。
「そういえば、今日は友人の事で聞きにきたの?」
「はい、明日は生徒会休みだからスイーツ部支援いいですか?」
「別にいいわよ。手伝いはいる?」
「こういった場合の対応の仕方についてだけ教えていただければ大丈夫です」
「了解。ちゃちゃっと終わらせましょう」
こうしてユウはアカリから指導を受けながら、下校時刻ギリギリまでひたすらに服を作り続けた。
「今日はお疲れ様でした!」
ユウ達は荷物をまとめて被服部を出ると、挨拶をして解散した。ユウはスマホを取り出してトークアプリを開くと、リヒトにメッセージを送った。
『部活で今被服部』
『りょ』
返信から数分後、廊下で待っているとすぐにリヒトがやって来た。
「ごめん、遠かった?」
「いや、俺もまだ移動途中だったから」
「じゃあ行こっ」
ユウは彼の手をつないで歩き出すと、少し後ろからリヒトの足音が続いた。
久々の部長登場。他の部員の名前忘れた……
あと、明日は更新ありません。流石に執筆追い付かない!
平日の限界です!すいません!




