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第十五話 四月十日(水)少女は生徒会に相談した

GW毎日投稿できた。

翌日、いつもの様にリヒトと登校したユウは、教室に入るまでの間ずっと視線を集めた。


(なんだろ、昨日までこんな感じじゃなかったのに)


ユウはそう思いながらも席に着いた。するとクラスメイトの藤堂カレンが話しかけてきた。


「ねぇ佐倉さん、生徒会に入るんですか?」


「…もしかして、もう広まってる?」


突然の情報にユウが恐る恐る確認すれば、彼女は何度も頷いた。


「あの雪村会長が直接勧誘してるなんて噂にならない訳ないですよ!」


「でも生徒会に入る入らないでそんな大げさな」


「……もしかしてこの学校の生徒会に選ばれる凄さを知りませんか?」


小首をかしげてこちらを見る藤堂の瞳には呆れが含まれていた。ユウは己の無知で何か変なこと言ったのかとバツが悪そうに頷いた。

女子生徒は呆れを態度に出して大げさに首を横に振ると、この学校の生徒会について説明を始めた。


「この学校が千人いるマンモス校なのは知ってるでしょう?その人数の中、十名という少数精鋭で活動しているのがここの生徒会。学年で数名しか入れないこの役職は、教職員も含む様々な審査を通さないと入ることの出来ない推薦枠に選ばれないといけないんです。


 生徒会在籍していたってだけで内定貰えたって実話があるくらいには有名な名誉職ですよ」


「えっ、そうなの?」


「そう。しかも雪村会長は主席入学でいきなり副生徒会長になり、二年生にして生徒会長に任命された凄い人。そんな方が直々に勧誘に来た」


ユウはその話を聞いて少し考え込む。


「……確かに、すごいことだよね」


「ようやく理解できたみたいですね。それにあの美貌!男子からは憧れの対象だし、女子からも羨望の目で見られてる。それでいて気さくで優しいし、頭も良くて運動神経抜群。まさに完璧超人ですよ」


「シズク先輩はそんなに評判凄かったんだ」


「それは貴方が知り合いだから言えるんです。少しは周囲に気を配ってください」


そう不満げに言って、彼女は一枚の紙切れを置いて自分の席に戻っていった。

やがてHRの時間になり、担任の矢吹がやってきたその後もユウはしばらく考えていた。


(僕は縁故採用だと思われてる節があるのか)


事実縁はあるが、ユウが名を売ってこなかったからこその妬みの含んだ噂が流れるのだろう。事実、廊下で粘性のある視線が飛んで来ていたのは知っていた。彼女はその噂を聞いて心配そうに声を掛けてくれた。

誰がきっかけかは特定できそうにないが、あまり良くない傾向だろう。そう思ったユウは放課後に生徒会へ相談すると決めた。


***


放課後、リヒトを伴って生徒会室を訪れたユウは会長であるシズクと副会長の藍川リョウと対面していた。


「お疲れ様、ユウ。今日はどうしたの?」


「ちょっと困ったことがあって。僕の噂の事なんですけど」


ユウの言葉に真っ先に反応したのは意外にもリョウだった。


「ああ、あの縁故採用とかいうふざけた話か?」


「もう上級生にも広まってるんですか」


「うちの学年は信じてる奴はいないがな。それより新入生はほぼ全クラスまで広がってる。そのせいで君への風当たりが強くなってるらしいじゃないか」


「……やっぱりですか」


「その様子じゃ気づいてるみたいだな」


「僕だけでは良い落としどころが見つからないので何か案がないかと来たんです」


ユウがそう言えばシズクとリョウは腕を組んで思案し始めた。そして数分後に口を開いた。


「それなら一つだけあるけどいいかしら」


「なんでしょうか?」


「ユウの実績を公表する。広報委員の力も借りて生徒会としての声明文を出しましょう。そうすれば少なくとも噂は消えるはずよ」


そのかわり、あなたが隠してきたものを掘り返すことになるけどね、とシズクが言う。


「…構いません。それでこの件が解決するなら是非ともやってください」


「以外だな。君は嫌がると思っていた」


シズクは少し拍子抜けた顔をしていた。ユウがすんなりと了承するとは思わなかったのだろう。

中学時代にそう思われるような態度でいた自覚のあるユウは、少し恥ずかしそうに本音を口にした。


「僕のことだけだったら放っておきますけど、これは生徒会にまで被害が及んでしまう。シズク先輩にあらぬ傷を負わせるのは嫌なんですよ」


「…嬉しいな。君がそう思ってくれるなんて」


「僕は何とも思ってない人を下の名前で呼ばないですよ」


ユウの照れを隠せずに赤らめた顔で話す姿に、生徒会室の空気は生暖かくなった。


「ユウ、ちょっと抱きしめてもいいか?」


「会長、落ち着いてその手を戻してください」


「こんな愛らしい後輩に我慢できるものか!」


そう言いリョウの制止を振り切って、足早に机を回り込んではユウを後ろから抱き着いて頬ずりするシズク。その姿は普段のクールなイメージとはかけ離れたものだったが、この場にいる者達は全員知っていたので戸惑いはなかった。


「やめてください!離してくださいよ!」


「ふふ、今は同性だから問題なかろう!」


「そういう問題じゃないですよ!!」


そんな二人を見てため息をつくリョウとリヒトだったが、その表情はどこか楽しげであった。互いに目が合うと、苦笑交じりに言葉を交わす。


「ここでもあの姿見せてるんですね」


「ああ、書記の宮野が被害に遭っている。素直に会長を慕っているから宮野は嬉しそうだがな」


「まあユウは元々男な訳ですし、あいつの性格上直球の好意には打たれ弱いですから」


「会長も懲りないからな。度々抱き着くんじゃないか?」


「まあユウも満更ではないからいいんじゃないですかね」


そんな二人の会話も知らず、ユウはシズクに振り回され続けていた。

シズクがやっと落ち着いた頃にはユウはぐったりとしていた。満足げな顔で座るシズクに男二人は苦笑いすると、咳払いをしてシズクは本題に戻った。


「生徒会として声明文を出すことにしたが、二日ほど時間を貰うぞ。その間に新しい噂でも流して貰おうか」


「新しい噂?」


不思議そうに聞き返すと、シズクはにやりとした。


「そうだな…『生徒会に対して喧嘩を売られたから全力で買い取った』とかどうだ?反論する奴の程度が知れるしこちらで対応する」


「それだと生徒会の負担が増えるんじゃ……」


「ユウの為なら構わないさ。それに生徒会を軽く見る連中にはお灸をすえる必要があるしな」


「俺も言っておくが、これは生徒会にとっても威厳を示す機会になる。そう負い目を感じる必要はない」


リョウがそう付け加えれば、ユウは少し気が晴れたような顔をした。


「ありがとうございます」


「礼を言うのはまだ早いわよ。これから広報委員と相談するんだから」


「はい、わかりました」


「それともう一つ、噂を流す相手がいるんだけどいいか?」


「誰ですか?」


「一年B組の藤堂カレン。君達のクラスメイトだよ」


その名前を聞いてリヒトとユウは目を丸くした。


「なんで彼女が?」


「彼女は入学前から学園内に知り合いが多いからな。それに彼女はユウのことを知って心配しているようだった。きっと力になってくれるだろう」


「僕を心配してくれてる人なんているんですか……?」


「君は自分を過小評価しすぎだ。もう少し自信を持っていい」


「そうよ。あなたはもっと自分の価値を知らなくちゃいけない」


「……はい」


「じゃあ、私は広報委員に早速話を詰めてくる。リョウは噂を頼む」


そういってシズクは生徒会室を飛び出した。リョウはスマホで何やら操作を始めた。


「君達は今日は帰っていいぞ。藤堂カレンには明日にでも話しておいてくれ」


「はい、失礼します」


そう言うとユウとリヒトは生徒会室を出た。

廊下に出て少ししたところで周囲を見渡したユウはブレザーのポケットから一枚の紙切れを取り出した。


「ユウ、それは?」


「朝、藤堂さんから密かに渡されたんだ」


紙切れには『動きが決まったら連絡ください』と丸い文字で書かれている。その下に連絡先であろうアドレスがあった。


「彼女はどこまで読んでこれを渡したのかね」


「出来るなら早速連絡しとこうぜ」


ユウはせかされてスマホを操作する。件名に名前を入れて空メールを送れば、数分もしないうちに返信が返ってきた。


『登録したわ。連絡したってことはもう決まったの?』


「うわ、早いね。えっと、『結論から書きますと―――』」


さきほどまとめった話を簡潔に文面にして送信する。またも数分で返信が来たので確認すれば、了解の返事だけだった。


「本当に藤堂さんって何者なんだろうね?」


「さぁな。とりあえず俺達だけで考えてても仕方ないし、帰ろうぜ」


「そうだな」


二人はそれぞれの家に帰ると、ユウは夕食と風呂を済ませてベッドに寝転がる。ユウのスマホに一通のメールが届いていた。

内容を確認したユウは、彼女の底知れないものに慄きながら返事を返して眠りについた。

毎日更新続くとこまで頑張ります。

間に合わなくなったら間隔あけます。

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