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第十一話 四月八日(月)少女は勧誘された

予定があって書けない日なので予約投稿です。


源藤を見送ってからしばらくしてリヒトの手がユウの頭から離れ、リヒトは隣の机に腰掛けた。


「ユウ、これからどうする?」


「そうだなあ……まずは適当にぶらついて………え?」


教室の外が騒がしくなったと思ったら、扉から一人の女性が現れた。


「佐倉、佐倉ユウはまだいるか?!」


「……えっと、僕ですけど」


突然現れた女性に驚きつつもユウが答えると、女性はユウの元へ駆け寄った。


「久しぶりだな、ユウ!元気にしてたか?!」


「はい、おかげさまで。えっと、疑わないんですね。雪村…会長?」


現れた女性は先ほども話に上がった生徒会長雪村シズクだった。彼女はユウの肩を軽く叩くと、爽やかに笑う。


「今まで通りでいいさ。ユウがそうなったのは事前に校長から話が通ってたからな。驚いたが、ユウに変わりはない!」


「そうですか……それなら良かったです」


「それにしても綺麗になったな。リヒトも大切な幼馴染がこうなって欲求不満にならないか?」


「ちょっ!?」


いきなりの爆弾発言にユウは顔を真っ赤にする。それを見ていたリヒトはムッとした表情になるが、ユウと目が合って急に視線を逸らす。


「別にそんなことは……ッ!あるかもですね」


「リヒトまでそういうこと言うなよぉ……」


「自覚が薄いから無防備すぎるんだよ」


恥ずかしさで俯いていると、リヒトはユウの頭をゆっくりと撫でる。ユウが徐々に気を落ち着いたのを見てリヒトは手を降ろした。


「ふっ、ユウの髪は相変わらず気持ちいいな」


「そうかな?自分ではよくわからないんだけど……」


「俺は好きだぞ。前より触り心地もいいし、ずっと撫でていたくなる」


「そっか……」


口をもにゃらせるユウを見たリヒトの口元が僅かに上がる。

その様子を見たシズクはニヤリと笑って二人に声をかける。


「ほう、いい雰囲気じゃないか。これは邪魔しない方がいいか」


「そ、そんなんじゃないです!」


「それより雪村先輩はどうしてここに?」


「そうだった。本来の目的である要件を簡潔に話そう。ユウ、生徒会に入らないか?」


「……へ?」


予想外の勧誘を受けたユウは思わず間抜けな声を出してしまう。そんなユウを見てシズクは苦笑いした。


「すまない、唐突過ぎたな。ユウには今期の生徒会役員になってもらいたいんだ」


「え?でも僕、こんななりになってまだ四日目なんです。とてもじゃないけど、余裕がないです」


「そこに関しては大丈夫だ。返事は今月いっぱいまで待つから、それまでに考えてくれればいい」

自信満々に言うシズクにユウは戸惑う。そもそも何故自分に白羽の矢が立ったのか分からない。


「どうして僕なんですか?」


「それは私が説明しよう」


いつの間にかシズクの隣に立っていた男性が会話に入ってくる。

ユウがそちらを見ると、彼は笑顔を浮かべた。


「初めまして、私は生徒会顧問の高梨だ。君の中学での活躍を私は知っているよ。彼女からもよく聞いているしね」


「えっと、シズク先輩?」


「いや、私はあの頃の生徒会が心地よくて、つい当時の事を思い出語りしていただけだ」


「それでユウの話ばかりして目に留まったわけか」


「ははっ、すまん。だがユウが優秀過ぎたんだ、仕方ないだろう?」


リヒトだけ納得しユウは困惑していると、彼の口から思いもしなかった言葉が出た。


「実は雪村の実績を調べていた時に、当時の君がよく入っていた事を知ってはいたんだ。彼女がここの会長になる際にも母校のことを調べて驚いたよ。

 君は面白いくらいに影からしか活躍しようとせず、実績を周りに配るように動いていたんだから」

ユウは中学での生徒会の働きで裏方に徹していたことがばれるとは思わず、ばつが悪そうに眼を逸らす。


「正直、あそこまでの働きは中々出来るものではないからな。そんな君がうちに来ると知った以上、私は勿論勧誘しようとした。だが数日前に予期せぬ事態となっている今の君に無理に参加してほしいとは思ってない」


「……」


高梨の言葉を聞いたユウは黙って話を聞いていたが、すぐに答えを出すことは出来なかった。


「だから、ゆっくり考えておいてほしい。返事はいつでも構わないからな」


「はい……分かりました」


高梨に言われた通り、ユウはすぐに結論を出すことはせずに胸の内へと仕舞った。


「我々は今回、君の状態の観察も兼ねていたから直接会いに来たが、環境は概ね良好そうでなりよりだ」


「私は久々に愛しき後輩の顔が見たくてついてきたのさ。まあ大分顔変わってたけどね!」


最後まで明るいまま去っていくシズクと穏やかな顔で悠々と歩く高梨。二人が去った教室内はまるで嵐の後のようだった。


「……とりあえず今日はもう帰ろうか」


「そうだね。なんかもう、どっと疲れたよ」


二人は荷物を持って席を立つと、そのまま下校する為に校舎を後にした。


「そういえば、リヒトは良かったの?校舎全然まわってないけど」


「別にいいや。後で一緒にまわろうぜ。そんな急いで見て回るもんじゃないし」


帰り道、いつものように並んで歩きながら他愛のない会話をする。こうして隣にいることが当たり前になっていたことに、ユウは少し不思議な感覚を覚えた。


(……あれ?なんでだろう。なんだか落ち着くのに落ち着かない?)


ユウは何故か浮かれてる自分がいて困惑していると、リヒトに顔をのぞき込まれてびっくりして飛び下がった。


「どうした変な顔して……ホントにどうした?」


「い、いや!なんでもないっ…訳じゃないけど!まだ僕もわかってないから気にしないで」


「ユウ…お前は――」


地面を向いたまま慌てて誤魔化すユウにリヒトは目を細めた。普段見ない彼の顔にユウは胸を締め付けられる。


「……ねえリヒト」


「ん?」


「僕はリヒトと一緒にいる時が一番幸せだって言ったら…困るよね」


「ああ困るな。今のお前に言われると俺はもう放せなくなる」


突然の確認にリヒトは首を傾げているとと、ユウは彼の制服の袖をつまんだ。


「えへへっ、僕自身まだこの感情が何なのかわかってないけど…今はこうしてていい?」


「ユウ……」


リヒトは一瞬驚いたが、そっとユウの頭を叩くとゆっくりと歩き出した。


「まったく、俺の気も知らないで……。ほれ、早く帰るぞ」


「うん!」


嬉しそうなユウを見てリヒトもまた笑顔になり、二人は寄り添いながら帰路についたのであった。

私自身、キャラの好感度が極端な気はするのですがこのまま進めます。

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