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第十話 四月八日(月)少女はクラスで自己紹介をした

GW中に書けない日もありますので毎日更新は難しいかもです。


1000PV達成ありがとうございます!

今まで見方を知らなかったので気付くのに遅れました。

教室に戻れば、担任の矢吹は既に教卓で待機していた。黒板には彼女が書いたのであろう『入学おめでとう』とでかでかとした文字が目に入る。

全員が揃うと、矢吹は軽やかにHRを始めた。


「改めて、私が担任の矢吹カエデ。これから一年間よろしく!簡潔に自己紹介しましょ。じゃあ出席番号の後ろから!」


敢えてなのか不意を突いたその言葉に一番最後だと油断していた生徒が慌てて立ち上がる。二番目以降は持ち直して生徒達が次々と名乗っていく。やがてはユウの番となり、椅子から立ち上がる。緊張で喉が渇くが、事情を知る者達からの暖かな視線に無意識に握りしめていた手から力が抜ける。


「僕の名前は佐倉ユウ。少し前までは男子でしたが、家庭の事情で女子になりました。深く気にせずに仲良くしてもらえると助かります」


緊張するユウの背を守るように、担任からのサポートが入る。


「ああ、佐倉は今後普通に女子として過ごすので、クラスの女性陣も納得してほしいかな」


「以前の僕を知っている人は戸惑うと思いますが慣れてください」


ユウが源道含めた知り合い達に目配せをして、相手からは困惑の声が上がる。

ユウが席に座ると、次の人が気まずそうに立ち上がる。


(ごめんなさい。僕で変な空気になってしまって)


心の中でユウは前の人に謝っておく。最後まで変な緊張感に支配されたまま座った背中を見て、後で場を変えて謝ろうと決意した。

最後の一人が自己紹介を終えると、再び矢吹から話が始まる。


「クラス委員を決めたり、他にも色々あるけどそれはまた明日。あっ、明日から部活勧誘始まるけど、今日くらいは羽目を外さない程度に自由にしなさい。以上、解散!」


そうして突然の自由時間が与えられたが、クラスの目は一斉にユウへ集まった。


(…ですよね)


「よし!ユウはまず女子に捧げる。その間に事情を知ってる俺らが男子の質問に答えるから」


立ち上がるや否やリヒトはユウを女子グループへと放り込み、男子達のヘイトを奪った。

目を白黒させながら放り込まれたユウは、カナとリサに腕を押さえられながら女子達の質問攻めを受けた。


「え、本当にあの佐倉くん!?」「可愛いー!」「男の子だった時ってどんな姿!」「ねぇねぇ!海原くんとはいつ頃からのお友達?」「あ、私達も同じ中学なんだよねー」「体さわっていい?」「頭撫でたくなるわね」「ケアとかってしてる?」


ユウは苦笑しながらも答えていく。意外と好意的に受け入れてくれたことに感謝していると、カナが助け舟を出してくれる。


「はいはーい!その辺にしときなさーい!」


「カナ、ありがとう」


「どういたしまして」


一度女子達が円陣を組んで話し合い、最後に一つだけとお願いされたのでユウはどうぞと促したら代表した一人の女子が口を開く。


「……えっと、海原くんと佐倉さんのご関係は?」


「幼馴染だよ。幼稚園の時から一緒。リヒトがどう思ってるかはわからないけど、僕としては唯一無二の親友かな」


近くで男子に揉まれながらさばいていくリヒトを横目に確認すれば、何だかんだで楽しんでる生き生きとした表情のリヒトが目に入る。ユウは楽しんでるなあ、と微笑ましく見ていた。


「…なるほど。ありがとうございます!これで納得できました!」


質問した彼女含めて円陣を組んでた全員が何かを納得した様子で目を輝かせた。変わった反応に首をかしげるユウだったが、カナとリサは理解しているのか動じなかった。


「えっと…カナ?リサ?どういうことなの?」


「ユウは女子になって顔に出やすくなったってことよ」


「そうそう。気にしなくていいよ」


ユウは二人にはぐらかされたまま答えを聞けずに時間切れとなった。


「おい!そろそろ俺らに時間をくれよ!」


「あ、ごめんね。じゃあ私達は眺めてるからごゆっくり」


そう言って女子達からリヒトに渡されたユウへ男子から次々と質問を投げかける。その勢いに圧倒されながらもリヒトを盾にしながらユウは一つ一つ丁寧に答えていった。女子達はニヤニヤとユウを眺めていたが当人に気付かれることはなかった。


***


「ふぅ……」


一通り話し終えて、各々が教室を出始めてやっと解放された実感を得た。覚悟をしていたとはいえ、予想以上に食いつきがよかった為心的疲労が溜まっていたようで無意識に息を吐いた。そんなユウに近付く影があった。


「お疲れ様、ユウ」


「お疲れさん、佐倉」


「ありがと、リヒト、源藤」


労うように頭をポンと撫でてきたのはリヒトだった。源藤は苦笑いしながら肩をすくめた。


「海原のそれは無意識か?男にはやらんだろうに」


「ん?何のことだ?」


「自覚がないなら尚更タチが悪いな。まぁお前らしいといえばそれまでだが」


源藤とリヒトの会話を聞きながら、ユウはこれの事だよ、と自分を撫でている手に自らの手を重ねる。


「気にしなくていいよ。僕も嫌じゃないし、続けて」


「……なら遠慮なく」


ユウの髪撫でてて気持ちいいんだよな、とリヒトは再び手を動かす。ユウは気を取り直して、疑問をぶつける。


「それで、源藤はどうしてここに?」


「ああ、二人に特に用があった訳じゃない。友人との待ち合わせに時間があるからなんとなく顔出しただけ」


「そういや、ユウはこのあとどうする?」リヒトに問われ、ユウは考える。


「特に予定はないから、ちょっと校内を見て回ろうかなって考えてる」


「だったら会長に挨拶していくか?」


「そういや佐倉は生徒会役員やってたっけ。雪村会長のオーラ、昔より凄かったな」


「あ、やっぱり?あのカリスマ性が磨きがかかってるよね」


ユウが懐かしむような笑みを浮かべると、二人はどこか遠い目をして呟く。


「あれはなあ……。俺らはもう慣れたけど初見であの威圧感はヤバかったわ」


「ああ…美人があんなに恐ろしく見えたのはあの人が一番だな」


「それはシズク先輩をあそこまで怒らせた二人が悪いのでは?」


「「うぐっ……」」


二人の言葉を聞いたユウがジト目になりながら指摘すると、何も言い返せないのか黙り込んだ。


「でも、佐倉が生徒会に入ってたのは意外かも」


「まあ、成り行きというか、色々あって」


それ以上の追及は無かったので密かに安堵していると、源藤のスマホが鳴り出した。


「おっと、向こうもHR終わったみたいだ。んじゃ、お二人さんまた明日!」


「おう、またな」「またね」


手を振って去る源藤を見送り姿が見えなくなった頃になっても、しばらくリヒトはユウの頭に置いたままの手に気が付くことはなかった。

おそらく明日は書けないので予約投稿しておきます。

(ストックが間に合うか怪しいですが…)

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