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全問正解子ちゃん  作者: 総督琉
女王文月編
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学園全面戦争⑨

 馬暗が文月側へ寝返ったことは、和国陣営はまだ誰も知るよしもなかった。


 文月は現在校舎の屋上にいる仲間とともに話をしていた。全知は屋上の端で足をぶら下げて座り、広場での戦いを見ていた。

 委員総会の登場で、既に戦いは沈静化しつつあった。生徒総会の残党の多くが校舎内へ避難し、扉を塞ぐ。

 しかしはしごを持ってきて、窓へかけていた。この校舎は敵の侵入を防げたとしてもあと十分ほどだ。


 今その場にいるのは、

 文月、紅姉妹、神原銀、蒼姉弟、

 十器聖:冬待来無、馬暗疾颯、卓城晃太郎、青黒薔薇黒龍、結城小袖

 元生徒会:暗黒零、冬無白奈、霞ヶ崎小雪、黒影響、花札乙女、しいな菜の花、暁幹太、白峰実花


 そしてこれと現在校舎内で見張りをしている決闘委員会メンバーや生徒総会のメンバーを含めると総勢約三百人。


 それらの情報を整理し、文月は険しい表情を浮かべる。


「これでも足りないか」


「ああ。さすがに部活動総会に兵力を削られ過ぎている。確かに部活動総会のメンバーは全滅にできたが、それでも三百人まで減らされているのは厳しい」


「だが敵の委員総会もかなり減らされているから五百人ほどじゃないのか」


「違う。第一に生徒の多くは弓道部の睡眠ガスによって眠らされている。眠らされているだけだが起こせば良い。だが私たちは今校舎内に閉じ籠っている。敵がいるのは校舎の外だというのに。

 だが今校舎外は委員総会に支配され、その上今委員総会は眠っている仲間を起こしている。このままずっとこうしていても敵の数は増えるだけ」


 ようやくここに集まっている者たちは状況を理解し、焦り出す。


「早期決戦か」


「ああ。だが肝心なこととしては、和国はこの校舎周辺にはいないということ」


 和国は現在城にいる。


「じゃあここでどれだけ争っても意味がないじゃないですか」


 橙霞の言う通りだ。

 ここでどれだけ戦おうとも無意味だ。


「だからといってここから和国のいる城まで行くとしても、そこにもきっと罠を張っている」


「じゃあどうすれば……」


「策は、ないわけではない。だがこの道はとても険しい。お前らにその覚悟はあるか?」


 文月は皆の顔を眺め、そう問う。

 文月の問いに、その場にいる誰もが悩んでいる表情など見せず、覚悟を決めた表情を浮かべていた。


「覚悟はできてるってか。やっぱお前ら最高だ」


 文月は笑みを浮かべてそう皆へ言った。

 その後文月は旗を持つ。その旗には"生徒総会"という文字が刻まれている。

 旗を天高く掲げながら、皆を鼓舞するように力強い声で言う。


「これまで君たちは支配者に多くのものを踏みにじられてきただろう。威厳も、尊厳も、そんなものは何一つない。奴らは先人たちが子々孫々に築き上げてきたこの学園を破壊した。それに、私も荷担した。だからこれは君たちの復讐でもあり、私の贖罪だ。

 私たちはこの競争で勝利し、かつての学園を、いや、もっとより良い学園とするために、この命を存分に振るおう。さあ始めるぞ。世界に今こそ変革をもたらす時だ」


 その後、文月は囁くように言った。


「では皆、行くぞ」


 文月は勢いよく屋上から飛び降りた。地面には巨大なマットが敷かれており、そこに飛び降りた文月はそこから城へ駆け抜ける。その後に続き、橙霞や冬無らもマットへと飛び降りる。

 文月の策はこうだ。


「ただ一直線に城を目指せ。誰でもいい。支配者和国を討ち倒し、この学園を解放せよ」


 校舎全域にその声が響く。

 校舎内で見張りをしていた決闘委員会や生徒らは、外へ一斉に飛び出る文月らの背中を追いかける。


「なるほど。これが貴様の策か」


 早乙女女女は一瞬で理解した。

 彼女が何をしようとしていたのか、その本質を。

 早乙女は困惑する生徒らへ叫ぶ。


「おまんら、文月を後を追うよ。そして和国を討ち倒す。さあ誰が一番に彼女を討てるか、"競争"だ」


 早乙女の声に煽られ、決闘委員会や生徒は文月の後を追って和国のいる城を目指す。

 委員総会や部活動総会勢力は学園を全方位から囲んでいたために、一点突破する文月らの兵を止めることは敵わなかった。

 部活動総会の最高指導者、玉染は驚いていたが、最上はこう呟く。


「全て和国様の予想通りだ」


 和国は文月が一点突破して城へ攻めてくることを分かっていた。だからあえて一点突破させた。


「最上、これからどうするつもりだ?」


「簡単だ。城へ向かう彼らを追いかけるだけだ」


「追いつきますか?勢いが止まりませんよ」


「それならば大丈夫だろう。ここに委員総会と部活動総会のメンバーが全員いるわけではない。城を守護させるため、精鋭たちに護らせているのさ。それ故、必ず彼らの足は止まる」


 そのはずだ。

 既に戦闘は一時間以上続いており、皆疲弊している。その状態で城周辺に潜んでいたまだ戦いもせず疲弊していない彼らを切り抜けることができるだろうか。

 普通であれば無理難題だ。



 そんな策が張られているとも知らず、文月らは城へ一直線に進んでいた。

 その道中には森がある。その森を走っていると、森の中から隠れていた者たちが次々と現れる。


「最初から忍ばせていたか。せこい奴らだ」


「文月京、たとえお前がいようとも、この先に行くことなどーー」


「ーーそこを退け」


 文月の前には十数人ほどの敵がいたはずだ。だがその十数人はたった一瞬で目にも止まらぬ速さの攻撃を受け、気絶して倒れる。


「お前ら、足止めなんかくらってんじゃねえぞ。これはただの徒競走だ。一番早く和国にたどり着いた奴が金メダルだ」


 文月を筆頭とする生徒総会は止まらない。

 どれほどの数が彼女らの前に立ちはだかろうとも、皆たったひとつの目的のために足を止めることは決してない。

 文月に背中を押されるように、この場にいる誰もがその気迫に圧されながら、今スタートダッシュをきっている。


「なんだこいつら……止まらない!?」


「この程度で止められると思うなよ。私たちを、舐めるなよ」


 刻々と、生徒総会は城に近づきつつあった。

 和国を倒せば学園は解放され、倒せなければ和国の永久の支配によって学園は終わる。


 誰もが必死に戦っている。だから皆、もう止まれない。

 さあ支配者を打倒せよ。今こそこの学園に自由を。


学園を支配する和国十郎座衛門。

彼女の支配から学園を解放せよ。

今、文月京は激しく火花を散らし、全力で学園を疾走する。和国を倒すその時まで。

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