学園全面戦争⑦
「風紀委員長を務める暁魔道はどこにいる」
力強い声で神原はその場にいる者たちへ問う。
その質問に早乙女らが困惑していると、一人の女性が現れて言った。
「暁ならばここにはいない」
紅色で美しい髪をした女性。とても大人びている。
一体彼女は何者か、それは同じ委員総会に所属している神原はよく知っていた。
「紅、なぜそんなことを知っている?」
中央委員会委員長、紅蓮華。
彼女はその質問に平然と答えた。
「では問おう。なぜこの学園に委員総会のメンバーがいないと思う?」
「そういえばいないな。まだこの戦争で疲れきった我々を一網打尽にしようとしているのだろう」
「大体正解だ。この学園の支配者はこうなることを最初から予定していた」
蓮華が話をしようとする中、彼女の隣でモゾモゾと立っている少女を神原は気になっていた。
「紅、そこの彼女は?」
「彼女は暁莉道。暁魔道の妹だ。彼女が私を檻から出してくれた。おかげで今ここまで逃げられた」
「相手は誰だ。紅、もっと詳しく説明してくれ。一体この学園で何が起こっているかを」
「では冷静に聞いてくれ。この学園を支配している者の計画を私は知っている。だからそれを話す、といっても、ほぼその計画は遂行されているが」
焦る神原へ、蓮華はいたって冷静に話し始める。
「現在の支配者はこの学園を支配するため、世界を支配した文月の忠実な手下として忍び、文月を一度学園から消させた。それを知った私は橙霞たちに伝えようとしたが、その前に勘づかれて捕まってしまった。そこへ莉道が現れ、檻から出してくれた。
彼女は魔道の妹だ。そのため彼女から魔道の居場所を聞いている。魔道は今、支配者とともに例の城にいるさ」
「城に!?だが全知は屋上にいるはずだが。もしや……橙霞が言っていたが、そなたが支配者は全知と言っていた。しかしそなたの話を聞く限りでは、支配者は全知ではないようじゃないか」
「はめられたんだ。私の名を借り、支配者が支配者は全知だと思い込ませた。支配者による誤情報を受け取った橙霞らは支配者を全知だと思い込んでしまった」
「じゃあ支配者は誰だ」
「現在の支配者はーー」
その頃屋上では、全知は文月へ同様の話をしていた。それを聞いた文月は首を傾げる。
「支配者はお前か。全知」
「いいや、この学園の支配者は僕じゃない。今この学園の玉座に君臨しているのは和国十郎座衛門、彼女だ」
そう、学園は全知に奪われたーーわけではなかった。
この学園の支配者は和国十郎座衛門。彼女が深海の如く深く、誰にも見つからないような策を学園中に張り巡らせていた。
文月四天王となったのは学園を牛耳るため。
委員総会と部活動総会の全面戦争の際に戦場から姿を消したのは月宮理事長に文月を停学させるよう交渉するため。
総務委員会へ入ったのは確実に生徒総会を創設させるため。そして生徒らを一網打尽にし、学園を支配する。
全て策略通り。
まんまとはめられた生徒総会は、まだ隠していた兵力で学園中を囲んだ。
「さあ第二幕を始めよう」
和国十郎座衛門、彼女の化けの皮がようやく剥がれた。
城の玉座に君臨する和国は、学園を攻め落とそうとしている委員総会メンバーを笑みを浮かべて眺めていた。
彼女のすぐ側には氷上、神代、落雷の四天王もいる。
「これより、この学園の支配者であるおいらが生徒総会すらも支配する。塗り潰せ。この学園の女王はおいらだ」
真の支配者が動き出す。今まで姿も見せなかった彼女はこの時を待っていたのだから。
学園を天変地異の如く動かするため、彼女は玉座に君臨し、生徒総会を我が物とする。
その企みを阻止することはできるのか。
学園全面戦争第二幕、これより開宴。