表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全問正解子ちゃん  作者: 総督琉
女王文月編
95/114

学園全面戦争⑤

 屋上に座る全知は、静かに戦場を眺めていた。

 それぞれの場所で激しく戦闘が繰り広げられている。それぞれの目的のため、必死に抗っていた。


「醜い」


 全知は生徒らを見下していた。

 そこへ一人の女が全知の背後には現れる。


「全知、もうじき紅橙霞がやって来るよ」


「なぜお前まで来ている?」


「良いではないか。それにわざわざ君を鼓舞してやろうと思っただけなんだが」


「そうですか。僕にはそうは見えないですけど」


 そう言って視線を彼女へ送る。

 彼女は全知の言葉などまともに聞いていないのか、常にどこか上の空で全知と話している。

 相変わらずだと嘆き、全知はため息を吐いた。


「全知、ひとつだけ忠告しておくとだな、お前が負けてもおいらの今後には一切影響はない。だから全力を出しても良いし、負けても良いんじゃない。どのみち、もう学園は君の手元にはない」


「ちっ。嫌なことを言うな」


「事実だから仕方ない。それじゃ頑張りな。君が勝とうが負けようが、どっちでも良いでござるが」


 その女性はまるで忍のように颯爽と姿を消した。

 それと入れ違いに、紅橙霞が全知の背後に現れた。


「もう来たか。随分と早いな」


「さあ決着をつけようか。全知全夢」


 橙霞は全知へバズーカを構え、捕縛網を放つ。バズーカの音で瞬時に察知し、後ろを見ていなくとも全知は高く飛び上がって捕縛網をかわした。


「紅橙霞、今の私は抜け殻だ」


「抜け殻か。今のお前が何であれ、お前を倒さないことにはこの学園に未来はない」


 橙霞はバズーカを捨て、素手で全知へ飛びかかる。両手には手錠を持ち、全知を捕らえようと技を仕掛ける。

 全知の横まで駆け、両手を後ろに回して手錠をーー


「ーー無駄だ」


 全知は橙霞を背負い投げた。

 倒れる橙霞へ全知は冷たく言い放つ。


「お前がやっているのは目の前の自己満足にすぎないんだよ。僕は一生の幸せを掴むために、今を苦労して生きてうた。しっかりと土台を積み上げて、やっとここまで上ってきた。なのにどうしてかな、いつ間違えたのだろうか」


「間違えた?こんな学園に変えて間違えただと。ふざけるな」


 橙霞は起き上がり、再び全知の腕に手錠をかけようとするが、まるで動きを全て読まれているかのように橙霞は吹き飛ばされる。


「なあ、下にいる者は上に立っている者には敵わないんだ。だってそこには絶対的な差があるから。知恵においても、物理的力においても、僕はその全てで()()()。牙を隠していたあの悪魔に」


「何をそんなに恐れている……」


「紅橙霞、ひとつ教えておくぞ。僕を倒してもこの学園はもとには戻らない」


「どういうことだ」


「それはだなーー」


 全知が何かを言おうとしたその時、学園の頭上にはヘリコプターが現れた。そのヘリは屋上へ降りる。

 屋上で戦っていた橙霞と全知は戦いをやめ、その方へ意識を向けた。


「もう始まっていたか。全面戦争が」


 ヘリから降りてきた女性の声に、二人は聞き覚えがあった。それもそのはず、二人はその女性とは関わり深い仲であったから。

 橙霞の友達であり、全知の宿敵。


「女王は戻ってきたぞ」


 文月京、彼女が今この学園に舞い降りた。


「やはり帰ってきたか」


「当たり前だ。私はこの学園の女王なのだから」


「だが今の支配者は別にいる。お前でも敵わない、それほどの支配者が」


「なあ全知、あまりハードルを上げるな。可哀想だろ」


 文月はどこか変わっていた。支配者であった頃とは少し違う、何かが変わった文月がそこにはいた。

 黒色に染まってなどいない。今の彼女は何色だ。


「紅から貰ったこの手紙、そういえばまだ読んでなかった。だがありがとな。この手紙のおかげで私は今の私に戻ることができた」


「うん」


 橙霞は久しぶりに見る文月を見て嬉しそうにしていた。笑みが込み上げていた。


 しかし全知は違う。

 かつての支配者、文月が戻ってきたことで激しく動揺していた。


「さあ全知、落とし前をつけようか。私とお前の落とし前ってやつを」


「僕の退屈はお前が壊した。だから僕はお前が許せない」


「じゃあ始めよう。いい加減この長い長い戦いに決着をつけられる時が来たようだ。さあ、準備はいいか」


帰還した女王ーー文月。

彼女が舞い降りたことで、全知と文月の最終決戦が幕を開けようとしていた。

勝つのは文月か、それとも全知か。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ