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全問正解子ちゃん  作者: 総督琉
女王文月編
93/114

学園全面戦争③

 生徒総会は、正面門から入って校舎へと突撃を仕掛けた。

 だが彼らは秘密裏に幾つかの部隊を構成し、戦いによって混乱する戦場の隙をつき、人の少ないところへ部隊を送り込む。

 その総指揮を取るのは、決闘委員会委員長ーー早乙女女女であった。


「焚、蒼姉の部隊を校舎の裏まで回り込ませろ。経路はこれに記してある」


「了解です」


 焚はすかさず蒼青明へトランシーバーで連絡をとる。早乙女からもらった地図で経路を見ながら青明へ指示を出す。

 青明は指示された通りに進んでいく。


 敵の総指揮をとっているのは梓沼。では彼は青明の行動を予想できないだろうか?

 ーー否、


「全て予想通りだ」


 人目を忍んで校舎裏まで回り込んだはずだったが、青明らの頭上から体操部の部員が襲いかかる。


「全て梓沼様の予想通り。行くぞ」


 そう、全て梓沼の予想通りだった。しかしそれは早乙女の予想通りでもあった。

 青明らはバズーカの発射音を聞いた。それは捕縛網を発射するバズーカの発射音。ふと振り向けば、背後にずっと隠れていた蒼弟ーー青太郎たちが捕縛網バズーカで体操部へ狙いを定め、発射した。

 体操部部員は全員網に捕らわれた。


 青明は焚へ連絡をとる。


「焚、敵の指揮をとっているのはやはり梓沼だ」


「だってよ早乙女」


 敵の指揮官が梓沼だと知り、早乙女はやけに嬉しそうだった。

 とても嬉しそうにしている早乙女に、宴は訊いた。


「早乙女様、どうしてそんなにお喜びになられているのですか」


「総務委員会創設の際、奴が推薦したのが夜語朧だった。夜語と梓沼には関係はないはずだ。つまり最初から梓沼は裏切り者だった。わらわは裏切りという行為が大嫌いなのじゃ。故に梓沼が敵の指揮官で良かった」


 早乙女は椅子から立った。


「早乙女様、どこかへ行かれるのですか?」


「指揮官には指揮官自ら出迎えなければ失礼じゃろう」


「ですが……」


「椿、わらわの代わりは任せた」


 しかし椿は不安そうな顔をしていた。


「大丈夫。そなたには実績がある。わらわの代わりにはそなたしかいない。だからどうか頼んだぞ。この学園を護るために」


「はい。お任せください」


 元気良く返事をされ、早乙女は微笑む。


「では行ってくるな」


 早乙女は学園へ向かう。

 梓沼はひたすらある場所で兵を指揮していた。

 体操部が倒されたことで、青明たちは校舎裏にある入り口から校舎内へと侵入する。


「梓沼、三十人ほどが校舎内へ侵入」


 馬暗は監視カメラの映像を確認し、梓沼へ報告する。


「そうか馬暗。ならば君が彼女を()()()してくれ」


「俺に、ですか……」


「君ならできるだろ」


「ああ。しかし足止めって言い方だと、まるで俺が負けるみたいじゃないか」


「大丈夫だよ。俺の策は必ず最悪の事態を想定して作られている。だから君が負けてしまうという可能性も考慮してある。もし君が負けてもサポートは十分にできる。だから存分にやって来てくれ」


「了解」


 梓沼は変わった。

 そんな彼を見て、馬暗は自分だけ取り残されてしまったような、そんな気持ちを抱いていた。

 皆アヒルになって羽ばたいていくのに、一匹だけひよこのまま池を泳ぎ続けている。いつまでも飛べない空を見上げて、憧れ続ける。


 一階から二階へ繋がる階段に立ち、馬暗は待っていた。

 足音が響き、そして蒼姉弟が先陣をきってやって来た。


「やあ二人とも」


「お前に構っている暇はない」


 蒼姉弟は互いに正反対の壁を蹴って走り、馬暗へ両脇から捕縛網バズーカを放つ。

 咄嗟に後ろに下がって網をかわすが、青明は馬暗を無視して先に上階へ上がってしまった。

 馬暗の前には、青太郎が立っている。その上三十人の生徒が青太郎の背後には立っている。


「馬暗疾颯、お前の相手を努めるのはこの蒼青太郎だ。姉さんの邪魔はさせないよ」


 その目には確かに信念があった。

 しかし馬暗にはそれがない。


「さあ十器聖馬暗、勝負を始めようじゃないか」


「良いだろう。俺が貴様を倒してやる」


 バズーカを構える青太郎と背中に矢を携える馬暗、今戦いの火花が舞い上がる。



 蒼青太郎VS馬暗疾颯、開戦。


馬暗の追走を抜けた青明が行く先は一体どこか?


次回、青明と十器聖との戦いが幕を開ける。

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