ギャンブラー③
「で、暗黒、どうやって彼女を取り戻そうとしているんだ?」
「正直運試しだが、ただギャンブルをするだけしか方法はない」
暗黒は他に方法が思い当たらず、悔やんでいるようだった。
「方法はそれしかないのですね。ではポーカーでもーー」
「ーーこんなところにいたのか。Human's Devil の皆さん」
暗黒たちの前に、何人もの人の集団が現れた。
その先頭に立つのは、赤い瞳をし、首に高級そうなネックレスをつけ、耳にはピアスを、右手薬指に赤い指輪をつけた男。
「またお前らか。Red bet」
〈Red bet〉リーダー、紅村暗駆は金貨をばらまきながら現れた。
「ああ。先日俺様のところの部下がお世話になったみたいでさ、それで報復しに来たんだよ」
そう言う男の横には、手錠をつけられて脅えた様子の男。
「今忙しくてさ、君たちに構っている暇なんてないんだよ」
「まあそう言わずにさ、ギャンブルでもしようぜ」
「なあ紅村、勝手に暴れてんじゃねえよ」
そしてそこへ、さらに新たな者たちが姿を現した。
その集団の先頭に立つのは、白髪に白眼、美しい容姿をした女性。その背には、狐の面を被った女性に狐の面を被った少年など、皆狐の面を被っていた。
「九尾の狐か」
彼女らの登場に、その場は騒然とする。
「なあ狐ども、いい加減どっちが上か決めようぜ。てめえらの存在が目障りで仕方がねえんだ」
「Red bet、この国ではどれだけ勢力を持っているかは意味はない。重要なのはギャンブルの才能があるか、ないかだ」
「そんなこと分かりきってんだよ。だから決めようって言ってんだが、分かんねえのか。ああ?」
「吠えるなドッグ」
「その呼び方止めろゴラっ」
「ドッグ、分かっている上で私たちに勝負を挑もうとしているか。君は本当に愚かだな。悪役は現実を冷徹にも見ていると思ったのだが、君はそうでもないようだ」
白髪の彼女はそう紅村へ言う。
紅村は強く拳を握りしめ、殺意を込めた口調で言う。
「てめえ、いい加減にしろよゴラっ」
紅村は殴りかかる。拳を振り下ろすが、それはかわされ、側頭部に強く蹴りを受けて気絶した。
倒れる紅村を見て、〈Red bet〉のメンバーは騒然とする。
「これで静かになった」
そう呟き、彼女は紅村の背中に座る。
「はじめまして。私は九尾の狐総長、冬無、よろしくね。〈Human's Devil〉の皆さん」
冬無はおしとやかな口調で話し始める。
「暗黒、君だけは数年ぶりだね。覚えているかい?私のことを」
「ああ。元十器聖の一人、冬無。この国に何の用だ」
「そこの文月という子を渡してほしいんだけど、良いかな?」
「すまんが、彼女とは約束がある。それがある以上、彼女を渡すことはできない」
「そうか。ならギャンブルで決めようか。この国では、あらゆることをギャンブルで決める。さあ暗黒、受け入れてくれるよね。君たちはこの国の中でトップとも言えるエリートなんだし」
「ああ。良いだろう。で、ギャンブルの内容は?」
「五回勝負、一試合につきひとつギャンブルを行う。ただしその全てのギャンブルに文月を参加させることを条件とする」
「文月、良いか?」
自信はなさげではあったものの、無言で頷き、冬無が提示したことを了承した。
「ではまずは一試合目、何のギャンブルから始めようか」
「鉄砲玉は私だろ、暗黒」
ヴァニーは拳銃を片手に、そう言った。
「ああ。任せたぞ」
暗黒側からはまずはヴァニーが出ることとなった。
バニーガールの格好をする彼女は、一体どんなギャンブルをするのだろうか。
「じゃあ私たちからは君に出てもらおうか。暁、そして黒影」
名前を呼ばれた二人は前に出る。
そして前に出ると、二人は狐の面を外した。そこで露となったのは、元生徒会メンバーである暁幹太と黒影響の顔。
彼らの顔を見て、文月は驚いていた。
「それではギャンブルを始めようか。ギャンブルの内容はそちらが決めろ」
その回答に微笑み、これしかないとヴァニーは言う。
「じゃあ神経衰弱射撃、それで行こうか」
拳銃を構えるヴァニー、彼女が始めようとしているギャンブルは一体何なのか。
幕を開けるギャンブル第一試合。
決闘内容は神経衰弱射撃。
一体どのようなものなのか。




