委員会全面戦争⑧
早乙女と四天王が戦いを繰り広げる中、三階の窓を突き破って外に出た焚、宴、椿の三人は二階の瓦屋根の上に降りると、そのまま身を潜めながら三階の屋根へと上っていた。
「この決闘で私たちが勝つには、城のてっぺんにたどり着くこと。なら屋根を上れば早い」
椿を筆頭に、彼女らは屋根を駆け上がって四階の屋根を目指す。四階が最上階であり、その階の屋根のてっぺんには旗が刺さっている。
そこへたどり着ければ、この決闘は委員総会の勝ちとなる。
四階の屋根へとよじ登った時、旗を握って立っている者を目の前にする。
「待っていたよ。決闘者さん」
「文月京……」
旗を握って立っているのが、文月京であった。
文月はまるで椿らがここに来るのを分かっているかのようであった。文月京、彼女は全てを予想していたのだ。
「椿先輩、どうしますか?」
「ちっ……」
椿は険しい表情をし、固まった。
早乙女が身代わりになったおかげでここまで来れたというのに、それがまるで無駄になったかのような一手を文月に打たれたのだ。
「焚、宴、戦う覚悟はできているか?」
「「勿論です」」
「ならば行くぞ。早乙女様が紡いでくれた道を無駄にしないためにも」
「「了解」」
焚、宴、椿の三名は一斉に旗を目指して屋根を駆け上がる。それを文月は平然と眺めている。
そして文月の手前に来た瞬間、椿は飛び込み、焚と宴は飛び上がってはたへ手を伸ばす。
文月は焚と宴を止めようとするが、二人を止めようとする文月を止めるために椿は文月へ抱きついて身動きを封じようとする。だが椿に触れられる前に、文月は椿の頬へ蹴りをいれ、旗へ飛び込む焚と宴の腕を掴み、そのまま三階屋根へと放り投げた。
焚と宴は激しく体を屋根に打ち付け、椿は屋根に横たわる。
焦る様子もなく三人を軽々と蹴散らした文月は、旗の前で堂々とたたずんでいる。
「どうした。その程度か?」
無表情で、冷徹で、冷酷な表情を浮かべる文月を前に、椿らは力の差を感じていた。
「焚、宴、まだ立てるか」
「焚はまだ立てる……」
「宴も立てるよ……」
焚と宴は起き上がり、四階の屋根へと飛び乗った。文月からは仕掛けず、ただ冷酷な視線を椿らへ向けたまま。
「焚、宴、三方向から攻めよう。短期戦だ。じきに四天王が来る。それまでに旗にまでたどり着く」
焚、宴は文月の斜め後ろへ回り込み、椿は文月の真正面に立っている。
「行くぞ、ここで勝つ」
椿らは一斉に走りかかる。
三方向からの突撃であろうとも、文月は一切表情を変えずに椿らの突撃を余裕な立ち振舞いで待っている。
椿は文月の側へついた瞬間、袖から取り出した煙玉を手に取り、それを地面へと投げつけた。周囲には煙が蔓延する。
「煙幕玉」
煙の中を、椿、焚、宴は駆ける。
視界を奪われ、その上三方向から攻められる。
だがーー
「煙に何の意味があるの」
煙で視界が奪われる中、正確に椿の頭部へ蹴りが炸裂する。その後、文月は椿の頭を土台に飛び上がり、傘を差して宙を舞う焚を蹴り飛ばした。
「何で……」
まるで煙が意味がない。
椿と焚が倒されながらも、宴は旗を目指す。
ーーまだ、誰か一人が旗にたどり着ければ良い
一直線に旗を目指す宴は、煙の中でうっすらと旗が見えた瞬間、そこへ向かって手を伸ばす。だが旗が少しずつ見えるとともに、ある者の姿が目にはいる。
「待ってたよ」
旗の前に立っていた文月はそう呟くと、掌を広げて宴の腹部へと激しい衝撃を与えた。その衝撃で吹き飛び、宴は屋根に何度も体を打ちつけて転がった。
「これで終わりか」
椿、焚、宴は倒れたまま、起き上がれない。
そこへ四天王の一人、氷上が笑みを浮かべながら歩いてきた。
「文月っち。こっちも大体終わったよ」
「この静けさ、呆気ないな。委員総会」
委員総会は全滅した。
圧倒的な文月らの力によって、委員総会メンバーは倒された。
「文月っち、委員総会を手に入れたら次は何を奪う?」
「十器聖の座でも、奪おうか」
委員総会全滅。
文月らの暴走は止まらない。
タイムリミットは刻一刻と過ぎていく。このまま委員総会は敗北するのか。




