生徒会陥落②終
生徒会と文月たちの戦いは幕を開けていた。
彼らが決闘を行っている会場は、学園の敷地内にある大型ショッピングモール。そこは決闘のため入場が禁止されており、ちょうどショッピングモールへ来ていた紅はため息を吐く。
「あーあ。買い物しようと思ったけど、決闘が行われているのか。こんな時に決闘を行うのは一体どこの誰だろうね」
「仕方ない。また明日来るとしよう」
紅に同行していた蒼青明は、帰ろうとしていた。
紅も青明の後に続き帰ろうとした。だがショッピングモールで戦っている霞ヶ崎の姿を見て、紅は足を止めた。
「蒼先輩、今戦っているのは霞ヶ崎先輩らしいです」
「霞ヶ崎が?奴に戦いを挑むとは一体どこの誰だろうな」
二人は足を止め、ショッピングモールでの戦闘を見ていた。
水鉄砲を持って丸い柱に隠れる霞ヶ崎へ、二人の生徒が水鉄砲から水を放出していた。
落雷天下と和国十郎座衛門だ。
「霞ヶ崎、苦戦しているみたいだね」
「…………」
紅の独り言に、青明は沈黙していた。
青明はその二人を見て、固まっているようだった。
「蒼先輩、大丈夫ですか?」
「なあ……なんであいつら……」
「どうかしたんですか?」
「ここ月虹学園には四つの附属の学園が存在する。
クローバーの神条氏立流龍学園
ハートの天羽氏立聖夜学園
ダイヤの千手氏立摩天楼学園
スペードの戦国氏立戦場学園
そしてそれぞれの学園にはKと呼ばれる者がいた。その四人は四天王と呼ばれている。今霞ヶ崎と戦っているあの二人は四天王だ」
「四天王……強いのですか?」
「ああ。全知と全ての能力がほほ互角だった。知能も、咄嗟の判断も、力も、全てが全知と互角だった。それが四天王だ」
青明は冷や汗を流し、霞ヶ崎を心配そうに見ていた。
霞ヶ崎は全知以外の十器聖とは互角に渡り合える実力を持っている。その霞ヶ崎ですら、負ける恐れがあるのだろう。
霞ヶ崎は柱の影に隠れつつ、時々姿を現して水鉄砲で水を放つ。霞ヶ崎は相手の攻撃を避けるも、苦戦していた。
「和国、お前は回り道しろ」
「回り道って言われても、一応このショッピングモールの構図は把握しておるのだが、ここでは回り道しようとしても道がたくさんあって無理なのですよ」
「なら良い。とにかく攻め続けるぞ」
霞ヶ崎を追い詰めるため、落雷と和国は追いかける。
彼らから逃げる霞ヶ崎の前に、さらに二人現れた。
「おっと。お早い合流だな。神代、氷上」
霞ヶ崎の前から現れた二人を見て、青明の焦りはさらに高まる。
「四天王が全員揃った……」
「なぜ四天王が全員揃っているのでしょうか」
「あいつらが団結することは有り得ない。あいつらは仲が悪い。だが一つ、団結することがあるとすれば、彼らよりも上位の存在が現れ、彼らを負かした。その者がなぜ生徒会を狙ったのか、それはこの学園を支配しようとしているから」
「支配って……」
紅は、その発言に聞き覚えがあった。
ーー"支配"
それは彼女にとってゆかりのある人物が去り際に残した発言だ。そして青明の予想通り、彼女は現れた。
四人に囲まれている霞ヶ崎は焦り、周囲を見渡す。そんな中、自分の方へと歩いてくる一人の女を見つけた。
彼女は水浸しになった副会長、黒影響を引きずり、闇に染まった眼光で霞ヶ崎を睨みつけていた。
彼女を見て、霞ヶ崎は言葉を失うほどに驚いていた。そんな霞ヶ崎の表情を嘲笑うように見ながら、彼女は言う。
「はじめまして。第二十七代生徒会生徒会長、霞ヶ崎小雪」
「どうして……」
ショッピングモールの外で見ていた紅と青明は、そこに現れた彼女を見て驚いていた。
「私はこの学園の支配者、文月京。第二十七代生徒会は今日をもって終焉を迎える。そしてこれより、第二十八代生徒会として我々が生徒会を受け継ごう」
霞ヶ崎は文月により水浸しになった。
生徒会と文月&四天王との決闘は、生徒会の敗北に終わった。よって、生徒会は文月によって奪われた。
ーー奪われた生徒会。
文月の支配の行く末に何が待っているのだろうか。