生徒会陥落①
新章開幕、黒色文月の支配が始まる。
七月十一日。
十器聖と霞ヶ崎や紅たちとの抗争が勃発し、それにより全知は重傷を負い、宿木は軽傷を負った。
だが負傷したその二人は、どちらも同じ人物に傷を負わされた。
その事件以降、彼女を見た者は誰もいなかった。
八月一日。
その日まで、彼女は姿を現すことはなかった。だがその日、ようやく彼女は姿を現した。それも、謎の四人を引き連れて。
生徒会室に突如現れた彼女と四人、その者たちの登場に、生徒会室の椅子に静かに座っていた霞ヶ崎は悶絶する。
「どうして……!?」
「やあ。私は文月京。学園を支配する最初の段階として、君たち生徒会を頂いていくことにした。構わないだろ?」
不適に彼女は微笑んだ。
右目を眼帯で覆い、両腕に包帯を巻いている。前までまとめていなかった髪をポニーテールにしてまとめ、冠を被っていた。
それはもはや霞ヶ崎の知る文月ではなかった。
「文月、どうしてしまったんだ」
「私はもう君の知る文月ではない。今の私は私の中に眠る全ての欲を叶える集合体だ。故に君の声は、私の中にある小さな文月には届かない。奥底で眠っているであろう文月には届かない」
文月は流暢に話し、そして驚いて立ち上がった霞ヶ崎が座っていた椅子に座る。
「霞ヶ崎生徒会長、これよりあなた方生徒会と我々とで決闘をしましょう。もし私たちが負ければこの学園を去りましょう。ですがもし私たちが勝てば、生徒会長は私が受け継ぐ。そして四天王に副会長などその他の座を任せましょう」
「四天王?そここ四人か」
「ええ。十器聖の影で牙を尖らせていた者たちです」
「私は氷上水蛇。得意なことは蛇の解体でしょうか」
水色の髪に水色の瞳、右耳に水色のピアスをつけ、両手の甲に蛇の入れ墨をいれた女子生徒は言う。
「俺は落雷天下。得意なここと言えば暴力かな」
特攻服を着たヤンチャな見た目をした男は言う。
「僕は神代瑛。得意なことはないですね」
眼鏡をかけ、ただ呆然と立っている少年はぶつぶつと呟いて言う。
「おいらは和国十郎座衛門。得意なことは戦です」
武将の格好をしている女性は刀を振り上げ言う。
「彼ら四天王と私が君たち生徒会を滅ぼしてあげると言っているんだ。だから決闘を始めようか」
文月と四天王に、霞ヶ崎は動揺していた。
だがもしこの決闘で勝てば、文月は戻るかもしれない。そんな淡い願いを込めて、霞ヶ崎は決闘を引き受けた。
「ああ。分かった」
「では始めよう。生徒会を潰す決闘を」
満面の笑みを浮かべた文月は、両手に水鉄砲を持って霞ヶ崎へ向けた。
「決闘内容は水鉄砲合戦。さあ、水浸しにしてやろう」