策の激突、戸賀狂嫁VS霞ヶ崎小雪③
決闘前夜、私たちは星空の下に集まった。
明日の七夕、私たちと戸賀狂嫁との決闘が始まる。
「皆、敗北は刻まない、刻ませない。私がいる限り、この決闘は必ず勝てる。君たちはいる限り勝てるんだ。だから明日、勝つために戦うぞ」
私は皆誓った。
「文月、やっぱ君に頼んで良かったよ」
そう言って、霞ヶ崎は笑った。
「私はさ、君に出会えて良かったよ。勝とうな、絶対」
「ああ。約束だ。この星空の下で」
この決闘で我々が敗北を刻まれるなどあり得ない。だってここにいる皆は皆最強だからな。
誰が何と言おうとここにいる全員は最強だ。
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七月七日、七夕の日。
午前九時五十分、私たちは青色のペイント弾が装填されたペイント銃を持ち、武装して決戦の地ーージャングルに入る。
「戸賀、この程度の決闘でなぜ俺の協力を?」
そう戸賀へ訊いたのは、戸賀にとっての今回の決闘の切り札であった。彼の横には、卓城晃太郎が戸賀たちの仲間として立っていた。
戸賀は切り札へ向け、言う。
「君は優秀だ。だから気付いていると思ったんだけどね」
「どういうことだ?」
「今回私が戦う相手は霞ヶ崎小雪だ。そしてつい先日、生徒会選挙で霞ヶ崎と協力関係にあった人物がいただろ」
「文月京、か……」
「ああ。そして今回、彼女にとっての切り札は何だと思う?私が君という切り札を用意した理由が分かっただろ」
「では任せてください。全軍の指揮は私へ委ねてください。十器聖の一人ーー梓沼計、この俺に」
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そこはジャングルのどこか。
そこで一人、紅橙霞は行動していた。そして旗を見つけ、トランシーバーで文月へと報告をする。
「文月、旗を見つけた。どうする?」
「まだ撃つな。残りの旗を見つけた時に指示を出す。それまで、敵の奇襲に備え……お…………」
「文月、文月、文月……」
トランシーバーからは、ノイズとともに声が聞こえなくなった。
「まさか、電波障害!?」
それに気付いた時、紅の背後から完全武装したまるで軍人のような者たちが背後から走ってきていた。
まるでジャングルの中を走り慣れたような動き、それに統率された動き、まるで軍隊のように。
「まずは一人ずつ、確実に滅ぼせ」
それが梓沼の策。
油断など1ミリも感じさせない徹底的な策。
「文月、文月……」
トランシーバーは声を届けない。
紅はすぐにその場から離れるも、走り慣れたように男たちは紅を追う。赤色のペイント弾が森の中を飛び交う。
「まずいまずいまずいまずい……」
「さあ倒せ」
軍人たちの持つペイント銃の銃口が紅を1ミリの狂いもなく向けられた。軍人たち五名ほどは一斉に引き金を引いた。
「文月、戦いの基本とは人だ。そして圧倒的な戦力を持ち、圧倒的な指揮官がいた場合、負けることは絶対にない。敗北というものは最終的には数であり、力であり、暴力であるーー」
「ーーゲームオーバー」
男たちの足元はえぐれ、そこから網が木の上へと引き上がる。その網の中に五人の男は見事に捕らわれた。
そこへ笑みを宇賀辺ながら振り返った紅がペイント銃の銃口を男たちへ向けた。
「さようなら」
ペイント弾が男たちの体を青色に染め上げた。
「危ない危ない」
だが紅の背後から、念には念をいれてもう五人の男たちがペイント銃を持って向かってきていた。
「念には念をだ。今度こそ」
(そんな……ちょ、待て……。こんなところでやられたら、せっかく楽しめると思ったのに何で……一緒に文月と戦えると思ったのに……)
紅へ向け、ペイント銃の銃口が赤色を奏でる。ペイント弾が一斉に紅目掛けて降り注ぐ。木の後ろに隠れようにも、間に合わない。
紅はペイント弾を体に受け、脱落したーーはずだった。だが紅にペイント弾が当たる寸前、一人の女性が巨大な盾を持ち、それらのペイント弾を全て防いだ。
「紅、何油断してんだ」
「……蒼先輩」
紅橙霞の競泳時代の先輩ーー蒼青明は、巨大な盾を持って紅を護った。
「全く相変わらず紅は手間がかかる後輩だよ。だから、手間がかかっても護ってやるよ。先輩だからな」




