小テスト②
入学してからまだ数日。
私は眠たい体を起こし、学園へと向かう。
外から見ても相変わらず大きな敷地だ。その中にはまだ覚えられないほどの数の施設が完備されている。
しかしこの学園には一つ不満がある。それは……
「生徒の皆さんは小テストを受けてください。生徒の皆さんは小テストを受けてください」
相変わらず朝学園へ入る際に小テストを受けさせられる。
私は検査室へと向かう。
どうやら今回の課題は数学らしい。
私は軽々と問題を解いていく。
方程式を名探偵の如く紐解いていき、迷宮入りになど一つもない。どれもこれも全て簡単に解いて……
ーー残り一問。
そこで私の手は止まった。
私は普段朝早く起きて一時間ほど勉強してから学校へ登校してきていた。生憎今日は眠たかったせいか、ろくに勉強もせずに学校で来てしまった。どうやらそれが裏目に出た。
最後の問題は一次関数のグラフの問題。
それを解くために必要とされる全ての知識が私の知識を保管するアカシックレコード、そこを守る扉は睡魔と疲労によって固く閉ざされている。何度叩いても叩いても、その扉が開くことはない。
扉は開かない。
たとえその扉が開く可能性があったとしても、そんな可能性にはかけられない。今はこれまで解いてきた問題を見て傾向と対策を……。
完璧だった私の無敗伝説をここで閉ざすわけにはいかない。
ふと天井へ視線を向けると、そこには時間が記されているモニターがあった。現在そこには20と記され、それが19、18とどんどん下がっていく。
タイムリミットは二十秒。
傾向と対策で考えろ。
例えるなら今の状況はテルモピュライの戦いのようだ。私はペルシア兵、対するはたった一問という一つの壁、しかしその壁は大きくそして容易く壊せない。
だが私にはあの時のペルシア兵の数と同様、無数の知識がある。こんな状況で負けてはいられない。
焦ってなどいない。私はただ確認していただけだ。この問いの答えを。
考えろ、考えろ、考えろ。
制限時間ギリギリ、私はプリントを壁に空いていた穴へと入れた。
そして十秒後、モニターには得点が記載されていた。
『受験者:文月京
科目:数学
点数:100/100』
「当然だ。満点以外を取るつもりはないさ」