正々堂々、勇ましき戦士①
不定期試験を終え、私は友達である紅とともにここ私立月虹学園の敷地内に存在しているゲームセンターで楽しくたくさんのゲームで遊んでいた。
UFOキャッチャーに格闘ゲーム、レースゲームにパンチングマシンなど、これまでの人生でしたことがなかったゲームで楽しく遊んでいた。
「ねえ文月、今度は卓球しよ」
「卓球か。面白そうだね」
卓球は何度か授業ではやったことはあるものの、そこまで上手いというわけではなかった。
だが今は遊び、ならば私は存分に遊び尽くそう。今だけは勉強のことなど忘れてしまおう。
私はラケットを握り、卓球台を挟んで紅と向かい合った。
紅はボールを高く上げた。サービスエースで私から一点を取ろうという魂胆が見え見えだ。私は瞬時にボールの軌道を察知し、その方向へ体を倒してボールを待ち構えた。
「ようやく見つけた。文月京」
集中していた私の背後から、一人の少年がまるで格下を見るように顎を上げ、私を見下すようにしてそこに立っていた。
振り返ってみると、彼の背後には八人の学生が立っている。
丁度その時紅の打った回転のかかったサーブが私のコートへと飛んできた。いつの間にか私の横に立っていた少年は、私の持っていたラケットをスリの如く奪い取ってそのサーブをスマッシュで打ち返した。
「そんな球じゃ、こうなるよ」
少年はどや顔で紅へ言った。
先ほどまでの楽しいムードを壊したこの者たちへ、私は少し腹を立てていた。
「お前ら。私たちの邪魔をして、何がしたい?それでもこの学園の生徒か。お前たちのような輩がこの学園に入れるほどの学力を持っているとは到底思えんが」
私の発言に、先陣に立つ少年は言った。
「文月京。学力とはなんだ?」
唐突に投げられた質問が哲学のテーマになりそうなものとは、いささか答えづらい。
だが私は今思っていた答えを言う。
「努力の成果だ」
「違う。学力とは格差を生み出す上で最も合理的な方法の一つさ。故に、君は今僕たちを学力がないと、そう決めつけた。君も私と同じ意見を持っているのだろ」
私は彼の言う正論に、何も言い返すことができなかった。
悪役の言葉は心に響くと言うが、それがなぜか少し理解できた気がする。
悪役は自らの味わった経験故、綺麗事を吐くことはない。彼らが行うは己が為の革命だ。
そしてこの少年は、ちゃんとその言葉を自分なりに理解した上で使っている。それはこの少年の嫌なところだ。
「文月京。君の噂は聞いているよ。君はこれまでのテストで全て百点を取り、その上前回の不定期試験で満点を取った」
「ああ。それがどうかしたか」
「決まっているだろ。文月京、お前と僕たち、どっちが上か勝負しようよ」
上から目線の態度、そして私の時間を使おうとする傲慢さ、それら全てが私の奥底に眠る憤怒の先端に触れる。
当然答えは、
「断る、だろ」
私の思考を読んだ!?
「驚く必要もない。僕は君の思考を誘導している。故に、君は私に操られる程度の者ということが理解できた」
なぜ思考を誘導できる?
「そんなの決まっているだろ。僕が完璧、だからでしょ」
少年はまた私の心を読んだ。
「僕は全知全夢。完璧であり尚且つ優秀すぎるが故恐れられるほどの十人の天才児ーー十器聖の内の一人さ。いつか勝負しようね。僕とさ」
そう言い残すと、その少年は残りの九人とともに私たちの前から去っていった。
一体彼らは何だったのか、十器聖と名乗っていたが、目的は何だ?これが新入生への挨拶と言うのなら、この借り、必ず返させてもらうぞ。
また、面白い相手に出会えそうだ。