思い出しましたっ!
「誰でも手放しに褒めるわけではないぞ。
ノア、お前はなにをしておったのだ」
なんのために、お前をアリスンの側に置いておいたと思うっ、とレイモンドはノアを振り向き、叱りはじめた。
だが、ノアは、いや~、といつものように笑って流している。
「なんかノアって、ある意味最強ですよね」
ああいう風に生きてみたい、とアリスンはもらしたが、魔王様は、
「いや、お前も似たようなもんだと思うが……。
というか、見習う方向性がおかしいような」
と呟いていた。
そのとき、
「アリスン!」
と職人たちと境内で話していたサイバインがアリスンを呼んだ。
「さあ、此処に来てみよ。
お前が普段、この神社の何処に居たのか。
その場所がわかるであろうっ」
アリスンは一礼して鳥居を潜り、境内に入っていった。
きょろきょろと見回す。
あの、自分にイカ焼きをくれようとした親子の背後にあったもの。
飛んできたチラシを見ていた自分の位置。
それらから判断し、アリスンは自分が居たであろう場所に行った。
社殿の中に入り、奥の祭壇の前に行く。
まだ神の魂の入っていない、なにもない祭壇に頭を下げたあとで、アリスンはそこに腰を下ろした。
「此処ですっ」
「お前がカミサマじゃないのかっ」
と全員が言った。
いや~、そんなことはないような……と呟きながら、アリスンは周囲を見回してみる。
「カミサマ……。
いや、そんな立派なものじゃなかった気がするんですよね~」
境内で村のおかみさんたちがスープをふるまい始めたので、それを飲みながら、アリスンは言った。
「じゃあ、カミサマに使われてた、カミサマの眷属の下っ端とか?」
とノアが笑って言ってくる。
何故、いきなり下っ端まで飛ぶのですか……。
実はあなたが一番私を下に見ていませんか?
こんな人が私の新しい婚約者で大丈夫なのですか、お父様、と思いながら、アリスンは飲みかけのスープを見つめる。
鳥でダシがとられた美味しいスープだ。
「まあ、日本にはいろんなカミサマがいらっしゃいますからね。
八百万のカミサマが。
っていうか、カミサマなら、滅多なことでは死なないですよね。
眠りにつくことはあっても」
じゃあ、なんで、この世界に転生したんだろうな?
と思ったアリスンは、ふと思い出し、ポン、と手を打った。
「そうだっ。
私、『お役目を終えた』んでしたっ」
「お役目?」
と王子が訊いてくる。
「私、お役目を終えたんですよ。
それで魂が解き放たれて、転生したんでした。
此処もいいけど、もっと楽しい場所に行きたいなって思って」
思い出しました、思い出しました、とアリスンは繰り返す。
「私、生贄っていうか、人柱っていうか。
確か、そういうのだったんですよ」
はあ? とサイバインたちが訊き返してきた。
その口調に、あまり悲壮感が感じられなかったからだろう。




