そもそもお前の記憶、おかしくないか?
剣は下ろしたものの、四人は牽制し合いながら移動する。
ヴィヤード家のアリスンの部屋に腰を落ち着けた。
「ノア」
と魔王が呼びかける。
「みんなに話してもいいか?」
こうなったからには、アリスンの力について話しても良いかという確認だった。
なんだかんだで彼が今まで、アリスンを守ってきたのだろうから。
ノアはひとつ溜息をつき、
「仕方ないですね」
と同意した。
あらためて、アリスンを見つめ、魔王は言った。
「アリスン、王子や子どもたちが蒔いた花が早くに咲いたのは、この土地の力のせいではない。
おそらく、お前のせいだ」
「えっ?」
「お前が王子や子どもたちに手を貸し、祈ったのだろう。
だから、花が早く咲いたのだ」
アリスンはなにかを思い出すような顔をする。
「そういえば……。
でもまあ、私は巫女ですから。
私を通じて、カミサマの力が流れ込み、花が咲いたのかもしれませんね」
そうアリスンは言ったが、いや、と魔王は否定する。
「カミなど居ない。
この世界に、カミなど居ない。
いや、この世界だけではない」
アリスン、と魔王はアリスンを見下ろし、呼びかけた。
「お前の前世の記憶とやらも、少しおかしい気がする」
「……え?」
とアリスンが自分を見つめてきた。
魔王は、ちょっと赤くなりながら……
いや、まったく顔には出ていなかったと思うのだが、
一応赤くなりながら、アリスンから視線をそらす。
「お前の記憶、落ち着いて考えてみれば、見聞きしたことばかりで、お前自身が体験したことはほとんどない」
アリスンの表情が止まった。
自分で自分の記憶をたどってみているようだった。
「イカ焼きは食べてないと言っていたな。
じゃあ、タコ焼きとやらは食べたことがあるのか?」
い、いえ、と言ったあとで、アリスンは言う。
「そういえば、いつも、みんなが手にしているタコ焼きの、小麦粉の焦げた香りや、タレや青のりの匂いを嗅いでいただけですね。
えっ?
でも、イカ焼きはともかく、タコ焼きとは、祭りのない日でも、普通にそこらで売ってるもの、という認識だったのですが。
……私、もしや神社で、なにも食べさせてもらってなかったんですかねっ?」
タダ働きっ!?
と叫ぶアリスンに、
「いや、それ以前の問題があるだろう」
と魔王は言った。
「私はあまり腹は空かないが。
人間というのは、食べないと死んでしまうものなのだろう?」
「そうですよねえ。
あっ、でも、私、米、ミソ、醤油の味は知ってますよっ」
とアリスンは青ざめながらも、その記憶にすがるように笑ってみせた。
だが、自分で、
「ん?
なんだか原型が多いな」
と呟きはじめる。
「いやいや、炊いたお米は食べたことありますもんね。
……味噌汁も飲んだことあるような気が」
「アリスン」
はい? とアリスンがこちらを見上げた。
「その前世とやらで。
――お前、ほんとうに人間だったのか?」
そうアリスンに向かって訊いた。




