表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄されたので、カミサマを探しにいきます ~異世界で巫女さんになりました~  作者: 菱沼あゆ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/48

これぞ、魔王なりっ!


 宿屋の前庭で、王子とアリスンたちが塩をふったイカを焼き、その横で椅子に腰かけたサイバインがまだ刺繍を続けている頃。


 魔王は洞穴で物思いに(ふけ)っていた。


 王子はイカを獲りに行き、サイバインは刺繍をしている。


 私は、なにができるのだろうな。

 アリスンと村の者どものために。


 って、いや、待て。

 そもそも、魔王とは人のためになにかをするイキモノではなかったな、うん……。


 そうそう。

 私は魔王だ。


 誰かのためになにかしなければとか考えなくていいはずだ、と思いながら、魔王は立ち上がった。


 昼からの営業がはじまるので、皿を洗いに行かねばならないからだ。


 マントをひるがえして行きかけ、


 いや、待て、とまた思う。


 これこそが、人様のお役に立つことでは。


 魔王は迷って玉座に戻り、腰を下ろしてみた。


 だが、


『魔王様ー』

『魔王様、ありがとうございますーっ』

という村人たちやアリスンの笑顔が次々浮かんできて落ち着かない。


 ええいっ、人に害をなすのではなくて、自分に害をなしているではないかっ、と魔王は立ち上がった。


 私は私のために皿を洗いに行く。


 みなに感謝されると気持ちよく、楽しい気持ちになるからだっ。


 そう、私は私の欲のために皿を洗いに行くのだ。


 魔王らしいではないかっ。


 最近、樽に皿を入れ、水を湯にして、柔らかい水流を起こし、攪拌(かくはん)する、という方法に洗い方を変えた。


 その方が大量に洗えるからだ。


 アリスンが、

「すごいじゃないですか、魔王様っ」

と手を打ち、喜んでくれた。


 そう、私はアリスンのあの笑顔が見たくて行っているのだっ。


 自分の欲望に忠実なだけだっ。


 実に魔王らしいっ、とおのれに言い訳しながら、村へと急いだ。


 少し出遅れてしまったからだ。


 宿屋の前で、アリスンと王子たちが火を起こし、いい匂いのするものを焼いている。


「魔王様~っ」

とこちらに気づいたアリスンが手を振る。


 その笑顔を見た魔王は、ホッとした。


 よしっ、今日もおのれの欲望を満たすために、頑張って働くぞっ。


 魔王は魔王らしくあることにこだわっていた。


 そうでなければ。


 『魔王』という存在でいなければ……。


 自分がなにか別のものになってしまいそうな。


 そんな気がしていたからだ――。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ