旅の終わりに
長い長い旅路だった。
いや、わずか二日のことだったのだが、と思いながら、王子はもはや故郷のように見えてきたアリスンがいる村を眺めていた。
王宮に戻り、新しい交易を始めたいと王に言うと、
「今までそういったことに無関心だったお前がどうしたことだ」
と喜んでくれた。
交渉に長けた者たちとイカやタコの獲れる沿岸の国に行き、話を持ちかけると、
「王子自ら来てくださるとはっ」
と感激され。
自分が以前食べて美味しかった店のイカやタコの料理を褒めると、その店の店主に伝わったらしく感激して、秘伝のレシピまで教えてくれた。
そして、あっという間に交渉はまとまり、王宮に報告し、今、ついに、ふたたび、この地に足を踏み入れたのだ。
ヴィヤード家の屋敷と宿屋と食堂を高台から見ながら王子は思う。
アリスンッ、私を褒めてくれっ。
私はやったぞっ。
犬が飼い主に褒めてもらおうと口にボールを咥えて駆け戻るように、王子はイカとタコの入った木箱を大量に運搬して凱旋した。
「アリスンッ!」
と扉を開けると、何故か宿屋のロビーの机にはカラフルな布袋が山積みになり、サイバイン卿がアリスンたちに称賛されていた。
「……なんで、あんたがアリスンに褒められてるんですか。
っていうか、まだいたんですか……」
と王子は脱力したように呟く。
「王子っ、素晴らしいですっ。
こんなにたくさんのイカとタコをっ」
木箱の中の新鮮なイカとタコを見せると、アリスンは力いっぱい褒めてくれた。
ようやく鼻高々になりながら、王子は言う。
「ああ、これは参考にと漁師たちがくれたのだ。
お前が望めば、いつでもこちらに卸してくれるそうだ」
「ありがとうございますっ。
イカ焼きなどはまだ無理ですが
みんなで焼いて食べましょう。
サイバイン様もっ」
とアリスンは振り向く。
「待て、アリスン。
あと少しでもう一個できる」
と目にも鮮やかな黄色い布地を手に、サイバインはチクチクなにかを縫っていた。
何故、アリスンに飼い慣らされているんですか、サイバイン卿……と思いながら、王子はその様子を眺めていた。




