これも目玉商品にしたいんです
アリスンたちに淹れてもらったお茶を飲みながら、サイバインは彼女たちがしている作業を眺めていた。
宿屋のロビーの一角で、アリスンや村の娘や子どもたちが縫い物をしている。
「ほう。
それはなんだ?
美しいな」
とサイバインは近寄り、覗き込んだ。
アリスンは、はあ、と言いながら、それをサイバインに見せてくる。
赤い布地にカラフルな刺繍糸で花やなにかが刺繍してあるのだが、見たことのないデザインだった。
「この村特有の美しい色合いの刺繍をほどこしたお守りを作ろうかと。
ああ、お守りって、カミサマのご威光がつまった小さな布袋のことなんですけど。
携帯できる出張カミサマっていうか」
ほうほう、とサイバインは身を乗り出す。
「……なんかサイバイン様が一番、お嬢の計画に乗り気みたいなんですけど」
とノアが後ろから言ってくるが、サイバインは、ふっと笑って言った。
「アリスン……。
なんでもできる王子の許嫁として有名だったのに、刺繍の腕はいまいちのようだな」
「いやいや、そこそこ上手いですよ」
とかばっているのかどうなのか微妙なことをノアが言う。
「だが、おそらく、私の方が上手い」
とサイバインが言うと、えっ? とアリスンたちがこちらを見る。
カカカカカカッとすごい手さばきでサイバインが布に刺繍をほどこすのをノアは見ていた。
おおっ、とみんなもその手許を食い入るように見ている。
「素晴らしいですっ、サイバイン様っ」
とアリスンが手を叩いた。
「私はなんでもできるからな」
いや、刺繍まで……?
それ、紳士の教養として必要ですか? とノアは思ったのだが、アリスンは褒めちぎる。
「サイバイン様っ、初めて見たパターンなのに、いとも簡単にっ」
そうアリスンに称賛され、サイバインは、いやいや、と言いながら、二個目を縫いはじめる。
そして、女子たちが縫い物をしながら語り合う流れに乗って、サイバインもまた語りはじめた。
「ようやく邪魔な許嫁を追い払って、うちの娘を王子の妃にと思ったのに、王子はまだその許嫁に夢中。
どうしても振り向いて欲しいようで、困ってるんだが」
「サイバイン様」
とその邪魔な許嫁アリスンがサイバインの前で縫いながら言う。
「サイバイン様の娘さんって幾つでしたっけ?」
「六つだ」
「……将来的にはともかく、今は無理ではないですかね?」
「なにをいう。
王子はたいして肉感的でもない小娘にメロメロなのだぞ。
六歳でもいけるかもしれないではないか」
「さすがの私でも、六歳よりはマシかな~と思うんですけどね」
と語らいながら、みんなでチクチク塗っていた。




