王子、消されませんか?
「ふむ。
買えない土地か。
ちょっと調べてみてもいいな」
アリスンに魔王の森の調査を依頼された王子はそう言い、頷いた。
「買えない理由が、王家の直轄地だからとかいうのなら、私も知っているはずだし。
なにか秘密がありそうだ。
調べてみよう」
そう王子が言うと、アリスンは自分で頼んでおいて、心配そうに、
「大丈夫ですか、王子。
消されませんか」
と言ってくる。
「消される?」
「あの土地には、実はなにか秘密があって、買えないのかもしれませんよ。
恐ろしい因縁のある土地だとか。
なにか怪しいものが潜んでいるとか。
それで、王子は調査の途中で、その怪しいものに消されるんですよっ」
とアリスンが叫び、
「……その場合、王子を消すのは私かな」
と因縁の森に潜む怪しい魔王が呟く。
それにしても、アリスンめ、と王子は思っていた。
なに嬉しそうに魔王が咲かせたかという花束を持ってやがるんだ。
俺だって花くらい咲かせられるっ。
「……王子、なにしてるんですか?」
宿屋の裏を耕していると、ノアが話しかけてくる。
「アリスンが此処なら植えてもいいと言うから。
私にも花くらい咲かせられるというところを見せてやろうと思ってなっ」
「王子……、意外に健気ですよね~」
と言って、ノアは去っていった。
なにが健気だ。
私は奴らに目にモノ見せてやると思っているだけだぞっ、と思ったとき、アリスンがやってきた。
「王子、王子。
これ、肥料だそうですよ。
土に混ぜるといいそうです。
やりすぎもよくないらしいですけどね」
と言いながら、木のバケツを渡してくれる。
「す……すまんな」
「早く咲くといいですね」
「……ああ」
アリスンと一緒に肥料をやり、タネを撒く。
二人仲良くしゃがんで、今、撒いたばかりの土を見つめた。