不吉な報せ
その報せは村祭りの翌日に届いた。
カールソン男爵が再び、直々に村にやって来たのだ。
夕暮れの子鹿亭に村長のバルデス、ギルド長ヘンリー、マライアさん、バルガス、マシュー君、俺、あとはその場にいたメアリーちゃんが集まって話を聞くことになった。
「報告する。侯爵イグニットの本拠地である城塞都市サウザントを5日後に1000の王国騎士団が攻め入る。マライア様の父上ジョニーハート様の調査によりイグニットと帝国の内通が発覚したのだ。イグニットの軍勢は寄せ集めの5000程度。人外の集まりである騎士団には到底敵うまい。しかし、心配なのはこの村だ。サウザント陥落後、残党兵の落ち武者が地理的にここを狙う可能性がある。マライア様にはどうか今の内にお逃げ頂きたい」
男爵は深刻な顔をしながら言った。
「私は夕暮れの子鹿亭の店主です。この村に宿屋は一つしかありません。そしてここは、私と夫とメアリーの思い出の場所でもあります。私はここを離れるわけにはまいりません。どうか、メアリーだけ避難させて下さい」
マライアさんは哀しそうな顔をして言った。
「メアリーは嫌でしゅよ、お母しゃまと離れるのは。お父しゃまがいなくなってお母しゃまでいなくなったらメアリーは生きていけましぇん。メアリーのこの命、散らすならお母しゃまと共にでしゅ」
メアリーちゃんは力強く言った。
「しかし、メアリー。あなたを危険に晒すわけには。あなたはロスフェラー家の血を引く者、いつでもメルカッドのお祖父様のところに戻れるのですよ」
「いいんでしゅ、メアリーはお母しゃまといるのが幸せなんでしゅ。それが生きる意義なんでしゅ。メアリーは絶対ここから離れましぇん、絶対でしゅ。子供の意地を見せてやりましゅよ」




