キルギス村の祭り③(本当に最期のコメディー)
「よお、しけた面してんじゃねえか、レン」
バルガスが落ち込んでいる俺を見かけて声をかけてきた。
バルガスの隣には若い女性と子供がいる。多分家族だ。こんな若くてキレイな奥さんを嫁にするとはバルガス、この果報者め。
「紹介しよう嫁のナタリーと息子のパルダスだ」
「パパパ、パルダスぅぅー」
バルデスバルガスパルダス3バルパルフェスタ早口言葉で言ってごらん状態になった俺は少し哀しみが癒やされた。
マシュー君と大道芸人の火縄ならぬ雷縄潜りを見ていると、偶然居合わせたカマラが声をかけてきた。
両肩にはヤプーとイプーが乗っている。
「レンさん、どうですか。この村の祭りは。楽しんでもらえてますか?」
「ああ、カマラ。楽しんでいるよ。久しぶりだよ、お祭りに参加するなんて」
「なら、良かった。私もレンさんには世話になっていますから。ヤプーとイプーを紹介してもらって本当に助かった。私は強くなりました。副団長としての自信がつきました。キルギス村防衛団副団長カマラ、厄災の因果の糸など私のこの溶岩斬りでねじり切ってやりましょう。運命は私が拓く、常闇の因果などに負けてたまるか」
カマラは力強く言った。
俺とマシュー君が輪投げの出店を通りかかるとメアリーちゃんが輪投げをやっていた。
「お母しゃま、この輪投げ全然入らないでしゅー、メアリーの実力不足なのかこの出店の陰謀なのか自然の摂理はたまた神のイタズラ?なのかはっきりしゅて下さい。メアリーもうやりたくないでしゅ」
「駄目ですメアリー。諦めたらそこで終わりです。賞品のぬいぐるみは取れません。チャレンジし続けることで人は成長するのです。あなたのお父さんもそういう人でしたよ。何度断っても諦めず、私に恋のアタックをしてきました。私だって女ですからそりゃ何回もアタックされたら、その気になります。惚れてみれば、そりゃもう、お父さんはカッコいい人でした。あの人と出会えて私は幸せ者です、もちろんメアリー、アナタもよ。あなたがいてくれるから私は生きていられるの。あらやだ私としたことが、あの人のこと思い出したら涙が溢れてくる」
「お母しゃま、出店の旦那が感動してぬいぐるみくれたでしゅ」
メアリーちゃんはぬいぐるみを獲得したようだ。
夜になった。松明が灯され、祭りはまだ続いている。
ヘンリーがピンク兎を丸焼きにして皆に肉を配っている。
マリアはその隣で高い酒をラッパ飲みしている。
パテラとヘルベッソは俺の教えた将棋をしてる。
コボルト先生とアリシャは異世界版盆踊りのような輪に加わって踊っている。
皆、楽しそうだ。
俺とマシュー君は広場の土手にある草むらに座り込んでピンク兎の肉を食べていた。
マシュー君のピンク兎の肉に辛子十倍濃縮佃煮海苔をかけてやる。
「はぐはぐ、なんですかこの絶妙なバランスは。ピンク兎の肉と辛子十倍濃縮佃煮海苔がこんなに合うとは。ジューシーさと辛味のコンボがもうたまりません。こんな美味しい物を食べれて本当に良かった。僕は世界一の幸せ者ですよ、レンさん」
俺はそれを聞いて、草むらにゴロンと寝転がった。
見上げれば、キラキラ光る満点の星空。
「ドーン」
デカイ花火が一発打ち上がり、星空と重なる。
綺麗だ。
厄災なんて来なくていいよもう。
気付けば俺はマシュー君の右手を握っていた。
カワイイイラストはTwitterアカウント @d_e_e_r__ 様に描いて頂きました。ありがとうございます。




