チヒロ
「おーい、あんたレンだろ。あたいはメルカッドとその周辺を行き来する行商人のチヒロだ。あんた、あたいに用があるんだろ」
俺が雑貨屋から丁度出てきた時、黒髪長髪の気の強そうな女が声をかけてきた。
「おお、タイミング良すぎる。行商人チヒロ、俺の話を聞いてくれまいか」
俺は後ろを向き、買い物袋から今しがた手に入れたポーションの空き瓶を取り出し、佃煮海苔をサッとその中に放出した。
チヒロには佃煮海苔を俺の手から出しているところを見られてはなるまい。メアリーちゃんのように佃煮海苔を俺の汚物ととられてはかなわない。
「ちょとこれを試食してもらいたい」
俺はチヒロに佃煮海苔入りの瓶を渡した。
「いきなり、なんだい。まさか毒じゃないだろうね。食べれるのかい、こんな禍々しいもの」
チヒロはキツめの顔を狼狽させながら言った。
「大丈夫、毒ではないから。証明するために俺がまず先に食べるから見ててくれ」
俺は佃煮海苔を木のスプーンですくうととても美味しそうに食べた。
「美味しいのかい、それ? あたいは結構グルメでね。ちょっと食べてやろうじゃないか」
そう言うとチヒロは佃煮海苔を口に入れた。
「ふーん、こういう味か。珍しい味だね。甘くもありしょっぱさもある。悪くはないけどねえ、これ単体だと沢山食べようとは思わないね」
チヒロは言った。
「やはりそうくるか。この国に米さえあれば」
俺は空に向かって嘆息した。
「米ならメルカッドにあるよ。そうかい、米と合わせるわけだね。それは、美味しいかもしれないね。あたいの商売魂が湧いてきたよ」
こうして行商人チヒロは佃煮海苔に興味を示した。




