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ピンク兎

「もおーレンさん。機嫌直して下さいよ。しょうがないじゃないですか、ハンターの仕事なんですから」

 

 俺の隣で鹿殺しの悪魔が何か言っていた。


「慣れていかないと仕事になりませんよ。けどレンさんの純粋さは僕、理解しましたよ。優しい人ですね」

 

 この鹿殺しめ、俺に馴れ馴れしく話かけるな。


「あっ、レンさん。あの罠を見て下さい、あれは希少種のピンク兎です。その肉はとても重厚感がありシチューにはピッタリなんです。なんとも今日は運がいい」

 

 俺は悪魔の指し示す方向を見た。そこにはピンク色をしたなんとも可愛らしいウサタンがいた。


「まさか、あのウサタンを殺すつもりじゃないだろうな」

 

 俺は言った。


「レンさん、落ち着いて下さい。そのまさかです。今度は一撃で葬りますから」

 

 なんという悪魔だ。兎は寂しさで死ぬ生き物であり短剣で刺し殺される生き物ではない。

 俺の頭に昔、学校で飼っていた兎のジローが想起された。クラスの人気者だったジロー。俺も可愛がったけ。


「この悪魔め、許さないからな。ウサタンは俺が守る」

「悪魔は流石に言い過ぎですよ、レンさん。僕もハンターとしての誇りがあります。引きません。これは仕事です、そして正義です」

「貴様は仕事なら何してもいいと言うのか、しかも正義をかざしあんな可愛らしい動物を刺し殺すだと?人間のエゴイズムだ。ウサタンに今すぐ謝れ。謝らないと金輪際、絶交だ」

「貴様呼びも酷いですし、レンさんとは昨日知り合ったばかりですし絶交されても僕は困りません。レンさんはそこで見ていて下さい」

 

 そう言うと悪魔はもの凄い速さでウサタンの元に駆け寄った。

 そして罠に嵌っているウサタンに悪魔の短剣を振り落としたのだ。


「ミューーン」


 その泣き声は俺のものだったのかウサタンのものだったのか。

そこから俺の記憶は朧気だ。


 その日の宿の夕食はシチューだった。

 マライアさんの手作りシチューはもちろん激うま。

 人間なんて所詮こんなもんだ。


 ごめんねウサタン。本当にゴメンね。


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