狩猟
四次元籠を背負った俺はマシュー君に連れられ村近くの山林にやって来た。
「ではここから昨日仕掛けた罠を見て行きます。ついて来て下さい」
言われるがままマシュー君について行く。案外、四次元籠は軽い。これなら俺でも荷物持ちはできそうだ。
「あれを見て下さいレンさん。鹿が罠に掛かってます」
マシュー君の指差す方を見ると確かに大きな鹿がうずくまっていた。
「今から僕はあの鹿の命を絶ちますからレンさんはそれを四次元籠に入れて下さいね」
そう言うとマシュー君は鹿に近づき、鹿の首筋に躊躇なく短剣をサクリと刺した。鹿は苦しんでいる、一撃では死ななかったようだ。
その光景を見て俺は目を瞑ってしまった。頭の中に昔、奈良公園に行った時の思い出が走馬灯のように駆け巡る。
俺が餌をやると人懐っこそうに寄ってくる鹿さん。
俺に頭を撫でられると気持ち良さげに顔を綻ばせる鹿さん。
つぶらな瞳で俺を見つめる鹿さん。
売店で買った鹿さんのぬいぐるみ。
鹿さん、鹿さん、鹿さん、鹿さん。
「マシュー君、もうやめてあげて」
気付くと俺は叫んでいた。
「どうしたんですか、レンさん?」
「鹿さんが苦しんでるよ、鹿さんが死んじゃうよ」
「レンさんは優しいんですね、でもこれは仕事ですから見てて下さい」
プスリ。
マシュー君がまた鹿さんを刺した。
「ヒーン」
俺は馬のような悲鳴をあげてしまった。
「レンさんだって昨日、鹿の肉食べたでしょ、美味しく頂いたんでしょ。誰かがやらなきゃならないんです。見てて下さい、こう」
サク、プス、サク。
マシュー君が鹿さんをメッタ刺しにする。
「やめてー」
「こうです。ちゃんと見て慣れて下さい」
プス、サク、サク、サク、プス、プス、プス。
鹿さんはもう絶命している。
「もう許してーこのサディストー」




