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災世のディザイアスター  作者: 和尚
第4章 アークル計画
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第69話 準備期間



「なーんか、最近こんなんばっかだな、仕事」


「えー、楽でいいじゃん、戦闘とかよりさ」


「てか、前にもロイドこんなこと言ってたっすよね」


「どーでもいい。金になるなら歓迎、割に合わねえなら……さっさと終わらせるまでだ」


「緊張感ねえな、相変わらず、この面子……」


 そう言ってため息をつきながらも、ハルキは『レックス』を動かして、目の前にある鉱脈その他(・・・)を、その巨大で強靭な顎でかじり取って食べて―――『捕食変換』で、吸収・分解・再構築して素材に変えていく。


 かじり取った鉱脈は、すぐにインゴットになって、コクピット内の取り出し口から回収できる。

 が、今回ハルキはそうしていない。かじり取って作る量が多いので、いちいち取り出していたらコクピット内部がインゴットで埋め尽くされてしまうためだ。


 そのため、再構築した後、コクピットではなく、機体内部の別な場所にある保管スペースに移すように設定を変更していた。割と最近になってからできることに気づいた機能だった。


 この鉱脈は、加工が可能な都市部までの距離、輸送コスト、鉱物資源の埋蔵量、周辺地域の危険度などを鑑みた結果、『コストパフォーマンス的に×』という判断を下されたために放置されていた場所である。

 埋蔵量はそこそこあるものの、周囲に生息するクリーチャーの数が多く、護衛の規模や安全確保などを考えると、無視した方がいいという結論に達したのだ。


 より正確に言えば、『ヴォーダトロン』はそう判断した。


 しかし、リスクよりもリターンに目がくらんでしまった他のフォート達は、どうにかしてここにある資源を回収しようとした。出せるだけの護衛を出し、採掘班を守りながら資源を回収しようとして……それができると、信じて行動して……


(そのなれの果てが……これか)


 鉱脈の露出している岩肌……その周辺には、真新しいものから古く、錆びて朽ちたものまで、大小さまざまな無数の鉄屑が散乱していた。


 全て、AWや装甲車両、作業用車両の残骸だ。ハルキの言葉通り、ここで採掘を行おうとして失敗した者達の末路である。

 結局、襲い来るクリーチャー達の猛攻に耐えきることができなかったのだ。


 少し思う所はありつつも、ハルキは『レックス』を動かし、それらの鉄屑も食べて吸収していく。

 これも、リサイクルできれば立派な資源だ。多少『いわく付き』のような扱いになるかもしれないが……この『災害世紀』、利用できるとわかっているものを放置しておくなどという悠長な価値観や選択肢はない。


 まして今、彼らは『少しでも多く資源を回収してくる』という趣旨のもとで動いている。それならば、ある程度どころでなくまとまった鉄その他が手に入るこれらを放っておくなどありえない。


「……予想以上に多いな。これ、レックスの保管庫でも入りきらねーかも」


「そんなにっすか?」


「錆びてるとはいえ、AWとかの加工に使われた鉄だけあって、もともと純度がそれなりに高いのが多いみてーだ……一回コンテナに全部積み込んで、保管庫空にした方がよさそうだ」


 鉱脈から採取した鉱物をインゴットにする場合、その過程で不純物を取り除く分、体積は小さくなる。


 だが、鉄屑については、もともとが精錬された金属部品であるため、表面の錆など以外はそれなりに質がいい状態のものも割とある。そのため、体積がさほど変わらない場合も多い。


 今回もそうなる可能性が高いと見たハルキは、あらかじめ運搬用に持ってきていたコンテナに中身を移しつつ作業を続けることにした。


 鉱脈から採れる量が多いかもしれない、という情報があった段階で用意されていたものだ。

 輸送用コンテナとしてはやや小ぶりだが、それ自体に車輪がついているため、AWに連結させれば簡単に運ぶことができる。第4世代なら、馬力的にはけん引には十分だろう。


 その旨を仲間達に伝えると、すぐさま手伝いのためにロイドとメリルがやってきた。

 メリルの乗るAWは、車両形態のまま、コンテナをけん引していた。


 ハルキは一旦『レックス』の食事をやめると、保管庫にしまっていたインゴットを出すように操作する。


 すると、レックスの背部にある武装ユニットの一部が展開し、同時に尾が変形して平たく形を変え……ベルトコンベアのような形状になる。


 というか、ベルトコンベアそのものであるようだ。少なくとも機能的には。


 その尻尾の先端を、メリルのAWがけん引するコンテナの中に入れると同時に……たった今展開した個所から、ベルトコンベアに乗ってインゴットが流れ出て来た。

 コンベアの終端……すなわち尻尾の先端にまで至ったインゴットは、そのままガラガラと音を立てて、コンテナの中に落ちていく。


「ここだけ金属加工工場だな……」


 目の前を、インゴットに加工リサイクルされた、鉄その他の金属たちが流れていくのを、何だか遠い目でコクピットの中から見ているロイド。


「あはははは、いつ見ても面白いねー、ホントどうなってんだろね、その機体」


「誰がどんな設計思想で作ったんだかな。まあ一応、理にはかなってるとは思うけども」


 しばらくそのままインゴットをコンテナに入れ続け、1カ所に片寄って積み上がったところで、ロイドがAWでそれをならして平らにする。

 それを何度か繰り返し、ほぼコンテナいっぱいになったところで、ハルキはベルトコンベアを止め、再び回収作業という名の『捕食』に戻っていった。




 それからしばらくして、ようやく全ての『資源』を回収したハルキ達は、悠々と帰路についていた。無論、周辺の警戒を担っていた、シドやセリア達も合流して、だ。


 予定していたよりもかなり多く回収できた金属資源と共に、車列を組んで走る一向。


「大量、大量……いや、大量すぎだろって思うけどな実際」


「ロイドのじゃ牽引できなくて、シドの『ブラムスター』に繋ぐことになったもんね」


 採れすぎた鉄を乗せすぎたせいで、とんでもない重量になったコンテナは、ロイドの乗る第4世代機『ドルデオン』だけではけん引できなくなった。


 ゆえに、馬力で勝る『ブラムスター』を駆るシドが引いていくことになったのだった。その間、シドの受け持っていた防衛ポジションには代わりにロイドがついている。


「しかし、今進んでいるプロジェクトの大きさを鑑みれば、これでもまだまだ足りないということのようです。引き続き、資源収集の任務がいくつかありますので」


「ここんとこ連日っすね……それだけ焦げ付いてた資源スポットがあったってことっすか」


「まあでも、これをまるっと金に換えられるってんだから、ハルキもアキラもいい拾いもんして軍に来てくれたもんだってな。ここ最近の仕事、危険度のわりに手当がいいから助かるぜ」


 それに、とクリスは続ける。

 

「ここ最近はうちの隊だけじゃなく、『ヴォーダトロン』全体が好景気で、金の巡りがいいって聞いてるからな……商売人に取っちゃ、今がまさに稼ぎ時ってことらしいぞ」


「へー、そうなのか……じゃあ、この鉄もさぞかし高値で売れていくんだろうな」


 ハルキはそう言ったものの、クリスの話は、形は違えど、ここ最近は誰もがあちこちで思い始めていることだった。

 それくらい、町の……『ヴォーダトロン』の随所にその痕跡を見ることができたからだ。


 『レックス』による採取はもちろんだが、それ以外にも様々な条件が組み合わさり、結果、この『ヴォーダトロン』というフォートは今、空前の好景気を迎えていた。


 巨大戦力たる『レックス』を保有していることに加え、最新鋭第5世代機を含む高性能AWを多数保有している……すなわち、この『災害世紀』で最も重要視される点の1つである『安全』であるという点が大きい。


 人間、いつ死ぬか、いつ襲われるかもわからないような状況かでは、安心して生活することも、労働に精を出すこともできないものだ。しかし逆に、自分が今住んでいる場所が安全面で盤石だというのであれば、逆に自分達の生産活動に集中する余裕も生まれてくるものなのだ。

 あるいは、自分達も生産活動に精を出すことで、間接的に町の安全や発展に貢献できる、と考える者も少なくはないだろう。

 

 加えて、資源以外にも『レックス』は、合間を見てエネルギー供給なども進めている。


 ただ日のよく当たる場所で機体を寝かせているだけで、ソーラーパネルなどとはくらべものにならないほどの効率でエネルギーを作り出す。

 自分の貯蔵するそれは、予備のものも含めてすぐに満タンになるため、その間に生み出されるエネルギーがもったいないと考えたハルキ達は、それを蓄電しておき、総司令部で使ったり、民間に売り渡したりして使っていた。


 その影響で、一部ではあるが『ヴォーダトロン』の各種産業が活発になり、ますます経済が活性化していく、ということも起こっていたりする。

 

 そして、ヴォーダトロンがいい市場であるという話が他のフォートなどでも聞かれるようになった結果、外部から商品を持ち込んで商売をする業者なども増え、また逆にヴォーダトロンでものを買っていく者もでてきて、ますます豊かになっていく、という好循環ができあがっていた。


 さらには、その流れを逃すなとばかりに総司令部も絡んできている……というか、火に油を注いでいるとでも言えばいいのか。

 大小さまざまな公共事業を数多く出すことで、フォート内に金の流れや雇用、そして下請けなどにまで発生させ、経済の循環をさらに加速させているのである。


 その結果、ここ最近の『ヴォーダトロン』は、様々な意味で急成長を遂げている、と言える状態にあるのである。


「ただまあ、いいことばっかりってわけでもねーみてーだがな。もともとそういう傾向はあったんだが……ここ最近は特に、うちのフォートに移住を希望する連中が多くなったって話だ」


「それってやっぱり、豊かで安全なフォートだって噂を聞いて?」


「ああ。けど、流石によそ者にまでまんべんなく行き渡るほどには、仕事も物も金もない。結果、結局あぶれてスラムとかその辺に流れちまう奴も出てるって話だ。……まだ先だろうが、都市としての人口収容機能を超えちまうんじゃねえか、って話すら聞こえてきてる」


「うへぇ、なんちゅう迷惑な……いや、その人達も必死なんだろうけどさ」


「うちのフォート、結局は独立独歩的な考え方があるもんね……外から来た人じゃ、もともと資産とかがあるか、あるいはコネでもなきゃ、馴染めないでしょ」


「ひょっとしたら、総司令達が『アークル』とやらの開拓を推してる理由の1つって、案外そこにあったりするのかもしれないっすね。」


「……かもな」





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