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災世のディザイアスター  作者: 和尚
第3章 栄える町、消えゆく町
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第58話 休日の2人



 その日、マリカは『ヴォーダトロン』の市場に繰り出していた。


 すでにこの町に暮らし始めてからしばらく経っているため、別にそれ自体は珍しいことでも何でもない。時に買い物のため、時に食事のため、1人だったり同僚と連れ添ったりして、何度も外出して町に繰り出している。


 ただ、今日こうして町に出てきている目的は、そういった楽しむためとは少し違う。

 楽しんでいないわけではないが、今回彼女は……『副業』の種を探しに来ているのだ。


 先日、クリスの『副業』を見学し、需要あるところに供給をあてがうという、単純だがそれゆえに奥が深い構造。それをどう工夫し、いかにして大きな利益を出すか。


 クリスのそれは、それこそ自分の使える手札……立場・ツール・人脈・知識・経験etcを最大限生かしたやり方だった。

 今すぐに自分に同じことができるなどとはとても思えないが、大いに見習いたいと思えるものであったし、実際にやり方を目で見て学べたことで、かなりどころではなく困難な道のりに一筋の光明がさした気にもなった。


 今挙げたもの、どれも今のマリカには足りていない。だからこそ、1つでも多くを知り、学び、いざと言う時に使えるように、手札や知識の引き出しを多くしておく。

 それを考えればこそ、こうして市場や、自分が参入出来得るものを自分の目で見て少しでも経験しておくことが意味があることだと、マリカは直感していた。


 白い目で見られて迷惑がられない程度にきちんと買い物やらもしながら、ウィンドウショッピングを繰り返していくマリカだったが……


「いや、勤勉は結構だけどよ……何で俺もつき合わされてんの?」


「いやほら、案内してくれる人欲しかったし。それにあんた今日休みだから暇なんでしょ?」


「まあ、やることなかったから別にいいけどよ……アキラは休みじゃないし」


 その斜め後ろで荷物持ちを兼ねて買い物につき合っているハルキは、今言った通り、今日は偶然仕事が休みだったため、同行者に選抜されていた。


 今日休みなのはハルキだけで、アキラは仕事がある。2人そろって休みならば、一緒に出掛けたりすることも多いのだが、1人だと特にやることもないので、家で寝ているか、町に出て掘り出し物のジャンクパーツやら何やらがないか散策するくらいしかやることはない。


 なので、今自分で言っていた通り、別に気にしてはいない。ただ、いきなりだったので少しだけ『事前に言ってくれよ』という思いがあった程度だった。


 とはいえ、もともと休日の過ごし方として買い物は選択肢の一つだったこともあり、自分の案内できる範囲でこの町をマリカに案内しながら回っている。

 それも、今までマリカが、アキラやメリルと回っていたような、飲食店や食料品の店、服飾店といったものではなく、ハルキが回りたがっていたようなジャンクショップなど、今まで見ていなかったような店を彼女は回りたがったため、案内しているハルキの方も少し新鮮な気分だった。


 また、マリカ自身もそういう店が全く経験がないわけでもないし、機械類のパーツなどに関して造詣がないわけでもない。

 戦闘機のパイロットを拝命しているだけあり、彼女もそういう機械類には一定の知識を持っている。そのため、『市場の勉強』というだけでなく、普通に楽しんで見て回れている面もあった。


「けどやっぱり、飛行機に使えそうなパーツとかはないかぁ」


「いや、あったらそっちの方がビックリだろ……そんなもん一般に流通してても需要ほぼゼロなんだから。サラセニアではあったのか?」


「いやいや、ないよそれは流石に。でも、ヴォーダトロンくらい大きなフォートならもしかしたら、ってちょっと思っただけ。現に、向こうじゃ見たことないパーツもいっぱいあるしね」


「何だ何だおい、色気のねえデートだな?」


 と、ふいに後ろからそんな声をかけられて、ハルキ達が振り向くと……そこに立っていたのは、ハルキにとっては見知った顔。マリカにとっては、知らないわけではないが、そこまでなじみはない顔だった。

 以前アキラ達と出かけた時に出くわしているが、その程度だ。彼女の店で買い物をしたわけではないし、ハルキ達のように小さい頃からの知り合いというわけでもない。


「お、ティマ。お疲れ。仕事か?」


「ああ、ちっと頼んでたもんを取りにな……店主」


「あいよ、ちょっと待ってな」


 ティマがしゃべりながら懐から取り出した、恐らくは引換券、ないし注文票らしきそれをジャンク屋の店主に渡すと、店主は店員に店番を任せて、奥にその品物を取りに行ったようだった。


 それを待つ間の暇つぶしか、カウンター前の2人の横に並んで立って話しかけてくるティマ。


「アキラが一緒じゃないのも十分珍しいが、女連れとはまた驚いたな? だったらもっと小洒落た店にでも行った方がいいんじゃないのか、ハルキ?」


「いやいやいや、そういうんじゃねえから……どういう風に見えてんだよ俺らが」


「あははは……まあ、休日に2人で買い物してたらねえ。そう見えちゃうのかな、私達?」


「んー……その感じだと……ホントにそういう仲じゃないのか? 何だ、面白くねえな」


「面白いって何だよ……」


 はぁ、とため息をつくハルキと、苦笑するマリカ。

 そんな2人を見て、ティマは、それなりに仲はよさそうだが、同時に『そういう仲』では確かになさそうだ、と悟り、少しだけ残念そうにする。


 なお、ティマはマリカのことは一応きちんと覚えている。

 以前アキラ達と一緒にいたところにあった時に、自己紹介したことはもちろん、彼女が『サラセニア』のフォート軍の所属だというところまで含めて、きちんとだ。


「ほら、よくあるだろ? 戦場で共に戦ってとか、命を救われて恋に落ちて……みたいな」


「そんなの、お話の中だけですよ……軍人が助けたり助けられたりなんて、それもう仕事の範囲内でしょう? 職場には男ばっかりだし、いちいち惚れてられませんって」


「おう、豪快と言うかなんというか……すげえ考え方の嬢ちゃんだな。ハルキ、逆にお前この子お似合いなんじゃねえの?」


「いや、何であんたそんな俺とコイツくっつけたがるんだよ……」


 気のいい近所のお姉さん的な存在であるティマだが、今日はなんだかハルキには、やたらお見合いを進めてくる親戚のおばさん的な印象に思えた。はたしてこんな性格だっただろうか、自分が軍に入ってからあまり会えなかったこの数か月に何かあったのか、と疲れながら考える。


「まあ、冗談はこのへんにして」


「冗談かよ」


「冗談の1つも言ってからかいたくもなるってもんだよ。最近、頻繁に『レックス』だかの活躍の噂、聞くようになったからな。元気そうなのはいいけど……それだけアレを動かすような仕事があって、たびたび駆り出されてるってことだろ? そりゃあお前……心配つーか、気にもなるさ」


 と、今度はまた不意打ち気味に真面目なトーンで言ってくるティマ。

 責める、というよりは呆れるような口調で、そこまで重々しくはないものの……ハルキのことを心配しているという言葉自体は本音であると、それははっきり感じ取ることができた。


「もっと頻繁に顔出せ……とまでは言わないよ。忙しいのはわかってるからな。ただ、久々に会った弟分をおちょくって、いつも通りの反応に安心するくらいはさせろ。私も、ムーアの親方も……そのくらいは心配も、寂しい思いもしてんだからな」


 ハルキはそれに、『大げさだ』とか『そんなに心配しなくても』と言って返したりはしない。

 真剣に心配してもらっているのがわかっている、というのもあるし……若くして両親と死別しているハルキとアキラにとって、ティマやムーアといった、昔からの顔なじみであり、周りで支えてくれた人らは、家族同然の存在だ。他人行儀な接し方をする気はなかったし、心配してくれているのは純粋にうれしい、ありがたいと思っていた。


「それにお前、20も過ぎて浮いた話の一つもちーとも聞こえてこないんだから……心配だよ正直、そっちも。さっさと嫁さん見つけろ、いないのか誰かいい人」


「結局続くのかその話題」


 ただまあ、こんな風にシリアスが長続きせず、からかいパートが、しかも反応に困る類のそれが始まったりするのは、彼個人的にはどうにかならないかな~、と頻繁に思っていた。

 しかも今回、隣にマリカがいる前でも躊躇なく言ってくるのだから、この姉貴分は……


「なんなら私が貰ってやろうか? 小さい頃はお前、『大きくなったらティマお姉ちゃんと結婚する!』って言ってたし」


「いつの話だよ……」


 ハルキは内心『まだ21だろ……』と思いながらため息をついていた。ハルキとしては、今は仕事も忙しいし、新しい職場にも丁度慣れてきたところだ。さらに言えば、これから当分その忙しさは続くであろう見通しである。

 忙しすぎてどうしようもない、というほどでこそないが、結婚だの恋愛だのに割く時間が果たしてあるかと聞かれれば、どちらかと言えば仕事の方を優先する程度の認識だった。


 加えて、そういうことが人生には必要だということも、彼自身きちんとわかってはいるが、感覚的にどうしてもそういうものを欲する気になれない……率直に言うと、少なくとも今現在は、結婚したいとも思っていない。思えない。それが正直な心のうちだった。

 なので、恋愛だの結婚だのについて真剣に考える気にもなれないというのが正直なところだし、するとしてもまだだいぶ先の話だろうと思っていた。


 もっとも、『普通はどうなのか』という問題になれば答えを出すのは難しいが。この『災害世紀』、結婚年齢という面で言えば、旧時代よりもだいぶ下の方になっていたりするのだ。


 30代、40台での結婚もそこまで珍しくない、というのは、あくまで世界に、人生に余裕があった国や地域、そして時代での話だ。


 かつての日本やアメリカといった先進国であれば、じっくりと自分のペースで人生を楽しみ、その中で出会った人と、好きな時期に結婚して幸せになるというのも立派な選択肢だった。子供をいつ、何人作るか、いやそもそも作るかどうかすら個人ないし家庭の自由だったと言えた。


 これが、発展途上国などになると違ってくる。

 

 衛生状態や治安が悪い国では、子供の死亡率が高い。

 いや、子供に限った話ではない……大人も年を重ねれば体を壊すことが多く、先進国よりも早く、体に限界が来て働けなくなる場合が多かった。


 ゆえに、そういった国では、なるべく若いうちに、複数の子供を早くに作って産んでおくというのが一般的だった。年を取ってからでは子供を産むのは大変だ。お産で母子が危険な状態になる、というのは、決して過去のことではないし、年齢を重ねているほどその危険は大きい。

 そして、1人しか子供がいなくては、その1人が死んでしまった時に後がなくなる。子供を数で考えるなど狂気の沙汰とも思えるかもしれないが、実際そういう国では、いつ、何がきっかけで突然命が失われるかわからなかった。病気、紛争、犯罪……いくらでも不安の種はあった。


 今のこの『災害世紀』、どちらかと言えば状況は後者に近い。危険はどこにでも転がっていて、医療体制もその当時ほど充実してはいない。ゆえに、社会全体の風潮として、結婚を推奨される年齢も、逆行するように若くなりつつあった。


 もちろん、ティマもそういう極端な理由だけでハルキに身を固めることを進めているわけではないだろうが……ティマもハルキも、どちらにせよそういう『旧時代』も『先進国』も、資料や本でしかしらない世代である。感覚が『逆行した後』に準拠したもので考えてしまうのは、ある程度は仕方ないのかもしれない。

 本人からすれば、純粋に弟分を心配していっているのだろうし……逆に言えば、そういう話をするということは、ハルキのことを『1人前』ないし『大人の男』として見ているということでもあるのだろうし。


 そしてティマから見れば、ハルキは今まで……周囲の環境などもあるが、言った通り本当に浮いた話の1つもなかった。同年代に女の友達の1人もいない。10代も前半から既にジャンク屋として働き始め、アキラと2人、今まで生活を、家を守って突っ走ってきた姿をずっと見てきた。


 だからこそ……平然としているようには見えても、ハルキがマリカと……アキラ以外の女性と一緒に、楽しそうに歩いているというのは、ハルキが思っている以上に驚きだったのだ。


 もし『そういうこと』なら、応援したいとも思っていた。時代が時代だから仕方ないとはいえ、色気の欠片もない10代を過ごし、そして終えた弟分を。


 まあ、違ったわけだが。


(性格もいいし、職場も同じだけに理解もあるし、相性とかは悪くないと思うんだがなぁ……)


「ていうか、そういうこと俺に言うならあんたはどうなんだよティマ……あんた俺より年上だろ。そういう話あんの?」


 少なくとも自分が知っている限りは影も形もない。ハルキはそう思って逆襲気味に聞いた。


「私はいいよ、今はまだ仕事忙しいし、楽しいし……結婚したいとも思わないし。いざとなったらハルキに貰ってもらうし」


「どんだけ色んなもん棚上げしてんだ。あと自分の人生設計に勝手に俺組み込むなや」


(仲いいなー、この2人……姉弟みたい)


 マリカから見て、アキラ同様、この人もハルキとの間に『男女』という性別の差というか、そこから生じる壁のようなものを感じないな、という形でティマの印象は固まりつつあった。

 ハルキにはそういう知り合いが多い……いや、そういう人物がハルキと相性がよくて、仲良くなれるのかもしれないと、何となく察した。


 見ていて微笑ましいというか、安心して見ていられるというか。

 まあやはりというか、色気じみた雰囲気はないのだが。


「でも実際、もしハルキがお嫁さん貰うなら、アキラとも仲良くできるような人じゃなきゃダメだよね。アキラってば、ハルキに基本べったりだし」


「あーまあ、確かにな。お前らのことだ、結婚したら別々に暮らすとか、そういう予定もつもりもねえんだろ?」


「……まあ、考えたことねえな。確かに……アキラと離れるってのは」


 声には出さずに『唯一残った家族だし』と、心の中で呟くようにするハルキ。

 口にしてしまうと、無意味にしんみりした空気にして、今のムードに水をさしてしまう。


「そういえば、ハルキから見てアキラってどうなの? 案外女性として意識してたりしないの?」


「何ちゅうこと言うんだお前……妹に対してそういう感情抱いてたらヤバいだろうがよ」


 ふとした思い付きから発せられたと思しきマリカの言葉に、心の中のシリアスまで含めて一瞬で霧散させたハルキが、がっくりと肩を落としながら答える。

 が、『だってー』と重ねて言いすがるマリカ。


「ハルキとアキラって、もうなんか恋人同士じゃない? ってくらい距離近いじゃん。いくら兄妹だからってさー……私んとこの弟や妹なんて、10歳になる頃には部屋もお風呂も男女別々しゃなきゃ文句言い始めたよ、恥ずかしいって。2人はまだ一緒にお風呂入ったり寝たりしてんでしょ?」


「……え、マジで? ハルキお前ら、そうなの?」


 ちょっと引くティマ。わかりやすく顔に『マジか』と書いてある。


「引くな。、あー……風呂は節約が必要な時とか、ケガとかして1人で入るのがきつい時だけだし、一緒には寝てねえよ。心細い時とか、寝ぼけてあいつが布団に潜り込んでくることはあるけども」


 弁明しつつも、一部は真実なので、ティマの白眼視はあまり改善されなかった。


 一方でマリカは、既にアキラから聞いていた通りだったので、『本当なんだ』程度に思っていた。


 血がつながっている兄妹だと、そういうものなのだろうか、とも。

 彼女にとっての『弟』『妹』とは、孤児院で一緒に育った、血のつながりのない年下の子供達だ。もっとも、だからといって他人行儀に思っているつもりは微塵もないし、皆、大切な家族だと思っているが。


 それでも先程言った通り、大きくなってからもお風呂や寝床が一緒だというのはあまり想像できなかったが。どこかの国では、男女7歳にして何とやら、とも言うそうだし。


 その点、21歳と19歳で同衾や入浴補助に特にためらいも何も持っていない兄はと言うと、


「アキラはなんかこう……そういう感じじゃないんだよな。もうなんか、あいつが生まれてからもうじき20年だし……ずっと一緒にいすぎて、近すぎて他人って感じがしないんだよ」


「ああ……作業してる時ももう一心同体って感じだったもんね。2人で1つの生き物かってくらいに、気持ち悪いくらい連携がスムーズでさ。ほんの一言か、全く合図もなしにツール受け渡したりしてたっけ。さすがは血のつながった兄妹って奴?」


「もうちょっといい言い方ねーのか。それに、別に血のつながりとか兄妹とか関係ないだろそこは……訓練すりゃ同じようなことできる奴いくらでもいるだろ。戦闘時のコンビネーションもそうだし、お前んとこの編隊飛行だって似たような感じだっただろ」


「いやいや、そうかもしれないけど、だとしてもアレは私から見ててもすごかったって。ひょっとしてさ、『レックス』のアレでテレパシーとかできるようになってない?」


「ねーよそんな機能。あのくらい5、6年も前くらいから普通にできてたわ……いやでも、まてよ……アレ思考操縦だし、コクピット内でなら、案外アレを媒介にすれば似たようなことも……」


「え、何、ガチでできそうなの? さすがにちょっと引く……それは流石に人間やめてない?」


「お前が言ってたことだろうが……いや、ガチでテレパシーとか確かに意味わからんけども、それでももうちょっとお前自分の発言に責任をだな……」


 言い合う2人を見ていて、『やっぱ結構お似合いだと思うんだが』とかティマは思っていたが、口には出さなかった。

 その代わりにため息が口をついて出た……と同時に、先程店の奥に引っ込んできた店主が、注文していた品物をもって戻ってきた。


 中身を確認したティマは、ぱんぱん、と手を叩いて2人の注目をひき、


「はいはい、あんたらが仲いいのはわかったから、そのへんにしとけ。店に来ておしゃべりばっかりで何も買わないで長居してちゃ店に失礼だろ? 一般客に戻れ、ほら」


「……色んな話題を振ってきたのはあんただったと思うんだが」


「私はちゃんと買い物してるから。そんじゃ、私コレで帰るからな。ちゃんと買い物して経済を回せよ、御両人」


 そういって、店から出ていくティマ。


 その背中には『言うだけ言って帰りやがったあの人……』という感じの視線が突き刺さっていたが、気にすることもなく……久々に弟分の元気な姿を見て、安心したというか、満足したような様子で、彼女は帰路についた。


 ……ただし、その途中、


「ずっと一緒、か……」


 そう、すぐそばに人がいても聞こえないくらいの小さな声で、ポツリと呟いて……ほんの一瞬、歩くのを止めた。

 その目は、何もない空中を見つめていて……しかし何か、全く別なものを見ているようにも見えた。


 そう、まるで、過去の記憶を思い返しているかのような……


(……あの様子だと、やっぱり……)


 はぁ、とため息を1つ。

 そのまま何も言わず、ティマは再び足を動かし始めた。


 今度は、店に帰るまで……止まることはなかった。





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