第51話 『緑色の箱』
マリカの行きつけの酒場で、ハルキとマリカが『隊長』……サースティン大佐から、『緑色の箱』なるものの存在を聞かされた、その翌日。
早速、とでも言えばいいのか……その『緑色の箱』を見る機会が、ハルキ達に巡ってきていた。
どうやら、使節団の交渉担当であるファティマやヴィルジニアが本来案内される『視察』の中でのことらしいのだが、少しでも多くの方の意見が聞きたい、とのことで、護衛部隊からも何人か同行することとなったらしい。
隊長であるファウーラに始まり、ハルキ、アキラ、シド、セリアの4人が選ばれ――基準は特に聞かされなかったが――案内役だという者達と共に、一路その場所に向かっていた。
なお、『サラセニア』からはその案内役として、資源管理部門の責任者や、護衛のための部隊など何人かが同行しているのだが、その中になぜかマリカも含まれていた。軍人の中で、1人だけ所属が違うからか……居心地が悪そう、とまでは言わないが、やや所在無さげにして浮いていた。
そのため、移動途中から、通信越しでハルキやアキラとの雑談が始まってしまったのも仕方のないことかもしれないし、特に他の面々も何か注意することはなかった。
……単に彼女は、これからの交渉・交流を少しでもスムーズに進めるため、最も長く『ヴォーダトロン』の面々と交流し、顔も広くなっているということで、潤滑剤、ないし橋渡し役として選ばれたのかもしれない。
そこまで遠くはないが、歩きで行くと流石に時間がかかる場所であるらしく、移動用の武装車両と護衛のAWでそこまで向かった一同。
十数分ほど車を走らせて、到着したのは、天然のそれと思しき洞窟だった。
が、全く天然そのままというわけではなく、崩落防止のための骨組みのような設備や、奥で採取ないし採掘したものを運搬するためのものであろう、トロッコ列車の線路らしきものが確認できた。
化石燃料系の資源の採掘場であると聞かされていたため、それに特に驚きはない。
そもそもこの採掘場は、今も現役で稼働中であるため、機材も普通に動いていた。
ハルキ達が車両から降りる間に、奥からトロッコが到着し、そこに積んであった小さ目のドラム缶を、作業員たちが別な荷車に詰め替えて運び出しているのを見ることができた。
作業員達の邪魔にならないように注意しつつ、中に入ってみると、ハルキとアキラの鼻は、嗅ぎ慣れた匂いを感じ取ることができた。
「何か、油臭いところっすね……」
「加工済みの燃料油やマシンオイルとかとはまた違う匂いだな。天然の油ってこんな感じなのか」
機械類の整備で嫌というほど鼻から吸うことになる、オイルの匂いだ
ハルキが言った通り、いつも扱っているものとは、また少し違う品質のようだが。。
「そりゃ、場所が場所だもの、油の匂いくらいするわよ……あ、さっきも言ったけどここ、火気厳禁だからね。ライターとかマッチとか、そーいうの全部車に置いてきてよ」
マリカがそうぴしゃりと注意し、あらためて全員、手荷物に危ないものがないか確認する。
その上で、静電気を除去する効果があるのだという、特殊な素材でできたポンチョのようなものを全員着て、洞窟の奥へと入っていった。
道すがら、ハルキとアキラは周囲の機材などをちらちらと見て観察する。
かなり大がかりな設備が取り揃えられているようだ。原油などを組み上げるためのパイプラインだと思われるが、ハルキ達も実際に今も現役で稼働しているものを見る機会はあまりない。
既にお役御免となり、資源としてリサイクルされるのを待つだけとなったそれを、解体して回収したことなら何度もあるが。
ただ、設置されている組み上げ設備のうち、稼働しているものは半分もないようだ。
もう何ヶ月、あるいは何年も使用されていないらしいものもあちこちにあった。
ここは、『現役で稼働中』でこそあるものの、規模としては昔よりも縮小しているらしいので、そのためだろう。その理由についても、この後、お目当てのものがある場所についてから説明されるとのことだった。
「けど使ってないならもったいねーな……アレとか、アレとか……解体して調整すれば、他の用途で再利用できそうだけど」
「そっすね。品質のいい鉄使ってるみたいですし……あとで提案してみるっすか?」
途中、小声でそんなことを話していたハルキ・アキラ兄弟。職業病とでも言えばいいのか、解体して再利用可能な『資源』に目が行くらしい。
隣で歩いていたマリカには聞こえていたようで、
「まあ、そういう声も上がってるんだけどさ……将来また必要になるかもしれないからっていう理由で、解体渋る人が多いらしいのよ。特に年上の考えが古臭い人達に」
はぁ、とため息をつきながら言うマリカ。
どういう意味だ、とハルキが聞くより早く、先頭を歩いていた案内役の人が『皆様、こちらです』と大きめの声で言ったことにより、全員の視線がその方向に集中する。
そこでは案内役が、『関係者以外立ち入り厳禁』と書かれた重厚な鉄の扉を、鍵を差し込んで開錠しているところだった。
その更に奥の方に入ると、一層オイルの匂いが強くなる。
中にはこの匂いが嫌い、ないし不快に思う人もいるようで、事前に渡されていたマスクをつけて……それでも顔をしかめていた。
ここで取れるオイルは、加工前であれば非揮発性らしく、念のため換気もきちんと行っているのだが、どうしても苦手な人はいるらしい。
あまり広いとは言えない通路を更に少し歩いて……一行はようやく、目的地に到着した。
「うわー……キレー……」
「こりゃ、なんというか……思った以上に、幻想的? な場所だな」
そこは、かなり大きな地底湖だった。
縦横にかなり広く、大型のAWでも入れて動けてしまうのではないかというほどの大きさ。苔むした岩壁と、細かい砂利の地面で……大部分が自然のままの状態だ。
もちろん、各所にオイル組み上げ用の機材などはあるようだが、やはり稼働しているものは多くないようだ。
そして、そこに広がる湖……のように見えるもの。
天井から太陽の光が、雲の隙間から差し込むように入り込んでいて……それに照らされているおかげで、湖面の色が、無色透明ではなく、澄んだ翡翠色であることがわかる。透明度に加え、水深がそこまで深くないため、湖底もはっきりと見えた。
しかしその水面は、光の具合や波紋の形、時折ポコポコ浮き出ている気泡の動きなどから……水にしては妙に粘り気のある物体であることがわかる。
加えて、オイルの匂いはその湖面から漂って来ている、とくれば……この地底湖『のようなもの』が一体何なのか、特に思考する必要もなく、その場にいた全員が理解できていた。
皆が視線をその水面に注目させる中、案内役が口を開く。
「では、説明させていただきます。ご覧いただいておりますのが、『サラセニア』の重要な資源調達源の1つとなっておりますオイル採取場になります。先日使節団の皆さまに『視察』の場でお見せした『沈殿型』……水底にオイルの成分が沈殿しており、それを汲み上げる形の油田とは異なり、ここは地底湖そのものがオイルの湖となっております。そして……」
続けて案内役は、湖の中央付近を手で指し示す。
同時に、あらかじめ用意してあったのか、湖の側面に備え付けられてたスポットライトが、その位置を照らし出す。透明度の高い水は、その光で固定まではっきりと見えるようになった。
そこにあったのは……そのまままさに『緑色の箱』だった。
縦横2m以上あろうかという大きさの立方体。
1辺が2mほどで、AWでも一抱えあるような大きさだ。表面はなめらかだが、距離があるため、材質が何なのかはわからない、石材のようにも、金属のようにも見える。光沢が見られ、僅かに透き通っているようにも見える、宝石のようなものである可能性もあるだろう。
それが複数、湖の底に、4分の1程めり込むような形で突き刺さっていた。
その周囲では、エアーポンプでも入れているかのように、ポコポコと気泡が湧き出している。まるで、箱自体が呼吸をしているかのようだった。
「もしかしたら、噂程度にお耳にしたことがある方もいるかもしれませんが……あれが『緑色の箱』です。我々はその機能からとって、『油翡翠』と呼んでいます」
「油翡翠……ですか。機能、そのまま……」
「ええ。あの立方体こそが、この特異な『オイルの湖』の存在の牽引です。あの『緑色の箱』は、周囲の水を吸収し、多用途加工が可能なオイル状物質に変換して放出する装置なのです」
それを聞いて、その場にいたほとんどの者が驚きを隠せなかった。
無理もないだろう。それだけ無茶苦茶な事実を今、さらりと明かされたのだから。
もしそれが本当なら、あの『緑色の箱』はとんでもない装置だ。
この『災害世紀』、物資の不足……特に、燃料や、様々な加工製品の原料になる原油その他のオイルの不足は、あらゆるフォートで問題視され、それをいかにして調達するかは、全てのフォートにとって至上命題の1つとすら言っていいものだろう。
『緑色の箱』は、その問題を一気に解決できるだけの代物ということになる。水をオイルに変えることができるなど、それだけ聞けば到底信じられない……眉唾のような話だ。化学反応だの何だのという次元ではもはやなく、まるで『錬金術』のような領域の話である。
だが、案内役は大まじめな態度のまま話し続ける。
一応、視察に来ていた者達の驚きやざわつきがある程度静まるのを待った上で、
「まず初めに申し上げておきますと、我々もあの箱が引き起こす現象に関する詳しいメカニズムはわかっておりません。数十年前、『サラセニア』のフォートが設立されたのと同じ時期に、先人達がこの洞窟を探索した際に、この『オイルの湖』と同時に偶然発見したものです。もちろん、サンプルを回収して解析を試みましたが、そのメカニズムなどはほとんどわかりませんでした。いわゆる『オーバーテクノロジー』の産物であると、我々は見ています」
同時に、ハルキの隣にいたマリカが『あんたのあれと同じでね』と小声で言った。
『レックス』のことを指して言っているのだろうということは、考えずともわかる。
確かにハルキ達にとっても、『レックス』はある日突然、偶然手に入れた代物であり、出所も何もかも一切不明だが、『使えるので使っている』という状態のものだ。
一応、研究は続けてその機能その他は解明し続けているものの、恐らくその進捗は、『レックス』の全体像のコンマ何パーセントというレベルであろうことは、ハルキ達もよく理解している。
この『緑色の箱』……仮称『油翡翠』は、『サラセニア』にとってのそれなのだろう。仕組みはよくはわからないが、得難い効能があるため使っている。
そんな中、使節団の代表であるファティマが挙手し、案内役に問いかける。
「もしそれが本当であれば、我々としても非常に興味深い……大変魅力的な資源です。しかし、だとすると疑問に思う点が出てきてしまうのですが、質問をよろしいですか?」
こうなることも予想していたのだろう。案内役は、迷いもせずに、どうぞ、と頷く。
「もしこの『油翡翠』なるものが、今おっしゃったとおりの性能を持っているのであれば……単純に、いくらでもオイルを生産して、それを売買することで利益を出せばいいのではありませんか? そうすれば、先々の会議で我々に要請したような援助について、その全ては難しくとも、それらの大部分を自前で何とかするだけの経済力を獲得できるかと。そうしないのには、何か理由があってのことなのでしょうか」
ファティマの述べたそれは、少し考えれば普通に誰でも思いつく程度の疑問だった。
このご時世、どこも燃料資源の獲得には苦慮しており……市場に出回ればそれらは、ほとんどあるだけ売れるような状態である。余程の暴利で売りつけようとでもしなければ、だが。
『水をオイルに変える』というとんでもない効能が本当なのであれば、今ファティマが言った通りの方法で、巨額の利益を出すことができるはずだ。それをもってすれば、今進めている『サラセニア』全市民の避難計画をはじめ、今のこのフォートが様々な問題点を自力で解決できるだろう。
わざわざ頭を下げて『ヴォーダトロン』に援助を申し出る必要は、全くないではないが、限りなく小さくなるはずだ。その分、援助のための契約を取り付けるハードルも下がるし、援助を受けたとしても、借りも小さくて済む。
そうしないのは、ファティマの指摘通り、何か理由があってのことなのだろう。
そこまで考えて、ハルキは同時に、昨日居酒屋で聞いた話を思い出していた。
あの場で聞いた話の通りなら、この箱は今は……
「おっしゃる通りです、ファティマ代表殿。この『箱』は現在、その機能のほとんどを喪失してしまっているのです」
「壊れている、と?」
「はい……経年劣化によるものだと我々は予想していますが……先程述べた通り、解析も満足にできていない状態のため、正確なところはわかりません。ただ、実情の測定値として……ここ十数年の間に、オイルを生産する効率が明らかに落ちているのです」
案内役の話では、『油翡翠』は、この地底湖の水……地下水脈から湧き出して補充され続けているそれを、少しずつ吸い上げてオイルに変換し、放出する、ということを続けているのだという。
しかし、その『効率』が、ここ十数年、年々落ちている。
具体的に言えば、水を吸ってオイルを吐き出すペースが遅い。同じ時間を費やしても、湧き出してくるオイルの量が明らかに少なくなってきており、またその質も、前に比べて悪いという。
この『オイルの湖』から組み上げたオイルは、不純物や非可燃物質である水などが混合した状態から、そういったものを取り除く過程を経て上質なオイルに変えられる。その後、原油などと同じように、それを原料とした様々な物質に変換されていくのだ。
だが現在は、その抽出できるオイルの絶対量が少なくなってしまっている。
道すがら、稼働していない設備が目立っていたのは、そういう理由だったのだ。昔に比べて採れるオイルの量が少ないがために、その全てを動かす必要がなく、コストパフォーマンスも悪いため、一部の稼働だけで足りてしまっている。
それでも、いつか前までのような採掘量に戻るかもしれない、という淡い希望を込めて、設備だけは維持している……先程マリカが言っていたのはそういうことなのだろう。
……それが、限りなくゼロに近い可能性なのだとわかっていたとしても。
説明を一通り終えると同時に、何やら目で合図する案内役。
すると、いつの間にか横に控えていた部下らしき男が、布の下部去ったトレーのようなものをもって近づいてきて、その隣に立った。
案内役がその布を取り去ると……そこには、緑色の箱……の、砕けた破片らしきものがいくつか積まれていた。
よく見ると、湖の中央にある箱の中には、いくつか欠けたり割れたりしているものがある。おそらくは、そこから採取したものなのだろう。
近くで見ると、やや濁っていて透明度は低いが、それでも、推奨などに似た半透明の結晶のような物質であることがわかる。やはり、研磨前、あるいは品質の悪い宝石か何かのようだ。
「数か月前の地震で天井の一部が崩落し、その際に砕けた『油翡翠』の一部です。これらをサンプルとして回収して調査したのですが、わかったのはごくわずか……この『油翡翠』が、何らかの樹脂に似た素材でてきているということと、精製装置のような仕組みがあるのでなく、この材質自体が、水を油に変える効能を有している、ということだけでした」
「そのような物質が存在するなど、聞いたこともない……まさにオーバーテクノロジーですね」
「はい。結局、私食共ではコレを解析し、真実にたどり着くことはできませんでした。ですが……あなた方ならば、あるいは」
そう言って、ファティマ達の方にそれを差し出してくる。
「こちらは後程、研究用のサンプルとして提供いたします。その後、どうしようなさるかは、お任せします」
「よろしいのですか? 量があるとはいえ、大変貴重な物質とお見受けしますが……」
何せ『オーバーテクノロジー』の産物であり、機能が落ちているとはいえ、彼らにとって飯の種であることに変わりはないものだ。それを一部とはいえ、こんなにあっさり託してくれるのか、とファティマは驚いていた。
「かまいません。どのみち……今のペースで劣化が進めば、あと2年かそこらで機能の全てを喪失するであろう見込みです。であれば、『オーバーテクノロジー』の検証に関して一日の長があるであろう『ヴォーダトロン』ならば、我々が単独で調べるよりもわかることが多いかもしれない」
要するに、自分達ではできなかったこと……この『油翡翠』なる物質の解析や、その、喪失しかけている機能の回復手段について、『ヴォーダトロン』にも望みをつなぐことにしたようだ。
サンプルの提供と引き換えに、何かわかったら自分達にも教えてもらいたい、と。
「……こちらの有する『オーバーテクノロジー』について、あなた方がなぜ、どれだけ知っているのかについて問うことはいたしません。しかし、素人考えながら……こちらのそれとは、明らかに分野違いであると思われますので、ご期待に沿えるかどうかはわかりませんが……」
「代表。それよりも、そこに専門家がいますから、直接聞いてみた方が早くないですか~?」
と、唐突にファティマの後ろにいたヴィルジニアが、割り込むような形でそう言って来た。
直後に自分に集中してきた視線を、そのまま誘導するように……あからさまな仕草で、斜め後ろにいたハルキとアキラに目をやった。
ここ数か月、技術班と一緒になって――というより、彼ら自身が技術者として率先して――『レックス』の研究・解析を進めている、『専門家』に。
いきなり話題にあげられただけでなく、その場にいるほぼ全員から注目されることとなり、流石に戸惑う2人。
思わずのことだろうか、アキラはハルキの服のすそを、ぎゅっと縋るように片手でつかんでいた。
(っ……ひょっとして、俺らが呼ばれたのって、最初からこのためか?)
その心中を知ってか知らずか、ヴィルジニアの進言を聞いたファティマは――会話に割り込んできたこと自体にはひとまず気を向けず――ハルキとアキラの2人を呼び寄せる。
どうすればいいか、と、今度は思わずハルキが横にいる上司や同僚に目をやる。
が、ファウーラはやや同情するような表情をしつつも、こくりと頷く。隣にいるシドは黙って顎でしゃくって『いけ』と指示。反対側にいるセリアも、似たような反応。
観念して、2人は緊張で少しぎこちない動きで前に進み出た。
「両特務少尉、いきなり声をかけてすまない。だが、ヴィルジニアの言う通り、この場において少しでも専門知識を持っているのはお前達だけなのでな……協力してもらいたい」
「はあ……了解しました。微力ながら」
差し出された『油翡翠』の破片。大きいものでは握りこぶし大、小さいものでは米粒ほどであるそれらを、トレーの上から手に取ってみる。
手には、あらかじめ持ってきておいた作業用手袋を装着済みだ。必要であれば、感触を見るためにそれを外して触るが。案内役が普通に素手で触って持っていたので、危険はないだろう。
とはいえ、ファティマが言っていたように、ハルキもアキラも、こういったものに関しては……全く知識がないわけではないとはいえ、流石に専門外である。
詳しく見たところで、わかることなどないだろう……と、思っていた。
……が、手に取った瞬間、その予想は裏切られることになる。
持ちあげてみて、『見た目のわりに重いな』などという感想が浮かんだ、その瞬間。
「「…………!」」
黙る2人。
そのまま、しばし無言。かと思えば、何かを確認し合うように、顔を見合わせる。これも、無言のままで。
「……2人とも、どうかしましたか?」
と、後ろからファウーラが問いかけたところで、はっとしたようにする2人。そこでようやく、周囲からの目が集まっていることを思い出したかのように、やや慌てて話し始めた。
「あ、あー……すいません、隊長。ちょっとびっくりしてしまって」
「びっくり……ですか? 持っただけで、何か変わったことでもわかったのですか?」
「いえ、変わったことと言うか……そのぉ……何と言うべきか……」
そのまま、しばし考えこむ2人。直前にアキラが言った通り、『何と言うべきか』考えている様子だったが……少しして、やはりちょうどいい言い方が思いつかなかったのだろうか、諦めて率直に言うことにしたようだ。
その時、その瞬間、2人の頭に浮かんだことを、そのままに。
「えーとですね、皆さん。この『油翡翠』なんですが……」
「コレの、修理の仕方……わかったかもしんないっす」
「「「…………は?」」」
それを聞かされた他の面々。
こちらも負けじと、『わけがわからない』とでも言うような顔になって……しばしその場に、沈黙が訪れた。




