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世界滅亡まで後1000x文字!!(空白・改行込み)  作者: 明山昇
第四章 x=2:ききをだっしよう
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Rev.4

 馬鹿な事をしようとしている、と自分でも思う。でも多分死なないだろうし、大丈夫だろう。だからいいんだ。それに…。いや、これはあれだ、一時の気の迷いか何かだろう。吊り橋効果とかそういうやつだ。きっとそうだ。だから何も言わずに俺は彼女から槍を奪い、丘の崖の方まで走った。

「ちょ、ちょっと!!何してんの!!危ないわよ!!」

 知っている。知っててやろうとしているのだから、側から見ればただの馬鹿だろう。でも仕方ない。今やるべき事なのだから。

 俺は黙って走り続け、そして崖っぷちに立ち、

「大丈夫だから!!」

 それだけ告げて、槍の穂先を下にして、跳躍した。

 彼女は何も言わなかった。言えなかっただけかもしれない。振り返らなかったから彼女がどんな表情でこの一見愚かにしか見えない行為を見ているか目にする事は出来なかった。だがそれで良かった。彼女の歪んだ顔を見たいとは思わなかったからだ。


 崖は切り立っていて、地面まで邪魔する物は無かった。有難い。枝に突き刺さって死亡とか困る。俺はそんな事で死にたくない。死にたくないし、誰にも死んで欲しくないから飛び降りたのだ。

 しかし飛び降りた時の風圧というのは凄まじいものだ。一生体感したくなかった。腕が上を向こうとするのを俺は必死で食い止めた。槍を突き刺すように格好を整えて、力を込めてその体勢を維持した。地面に突き刺した瞬間の衝撃については考えない事にした。痛そうだから槍が自分に刺さらないようには気を配った。


 着地まで数秒程度だった。だが体感ではとても長く思えた。今までのループよりも長く。その間、ずっと頭の中には、今までのループでの経験が思い出されていた。一ノ瀬資料館までの道のり。作者とのやりとり。声子とのやりとり。色んな思い出。たった三時間の、いや三時間というのは設定上の話で、実際にはもっと長い間であるが、それでも限られた時間に培った様々な思い出が浮かんで消えていった。

 やがてそれも終わりを告げる時が来た。

 地面が間近となって、俺は目を瞑った。痛みが無い事を祈りながら、そして、神とやらが本当に出てくるなら早く来てくれと祈りながら。



 それから数秒後。ピチャ、と何かの液体が顔に付いたのを感じ、俺は恐る恐る目を開けた。見ている物が正常であるかを疑った。俺は浮いていた。水のような何か、光り輝く液体が球状になって、俺の体を包み込んでいた。それは地面から数センチのところでフワフワと浮いていた。

『人よ、その勇気、見せてもらいました。』

 誰かの声が響いてきた。作者か?いや違う。女性の声。声子の声でも無い。もっとこう、厳かな感じのある声であった。声の元を探すようにキョロキョロしていると、それは上の方にあった。巨大な女性であった。掛け軸で見た、青い羽衣に身を包んだ女性がそこには居た。あっけに取られた後、ハッとなってよく足元を見ると、それは地面ではなく、彼女の手だった。彼女の片手が俺を包む水球をすくい持っていた。

『数百年ぶりに、私の出番のようですね。』

 その女性–––女神はそう言うと、地平線を見つめた。いや、地平線では無い。今まさにこの地に着弾しようという隕石を見つめていたのだ。


 隕石は巨大であった。着弾すれば地球滅亡というのも肯ける程の、街一つ包み込む程の大きさだった。それが突然弾け、残骸が地面に落下した。俺の体は逆に女神が立ち上がる事で持ち上がり、街の惨状が良く見えるようになっていった。

「うわぁ、ひでぇ…。」

 俺は思わず口にした。街の至るところに隕石の残骸が落下し、クレーターが形成されていく。その衝撃で直撃していない家や蔵、ビルも崩壊していく。それが連鎖していき、街は崩壊の一途を辿っていった。この丘の方までには届かなかったのは不幸中の幸いと言える。

 そして隕石のあった場所。そこには何かの生物が居た。俺は知っている。それが何であるか、何回か前のループで目撃していた。

 それは雄叫びを上げ、街の崩壊から辛くも逃れた人々に牙を向けた。血が飛び散り、地を赤く染める。

「鮫だ…。」

 声子が呟いた。

 そう、鮫だ。かつて五十嵐資料館で目撃した巨大な鮫が、街に止めを刺すかのように暴れまわろうとしていた。

『勇気ある者よ。ここからは私の仕事です。貴方はそこにいなさい。』

 女神はそう言うと、俺の入った水球を零天丘の上へと運び、そこで降ろした。水球は弾け、俺は解放された。

 すると声子が何やら叫びながら俺に向かってきて、バキィ、という音を立てながら俺を殴り飛ばした。

「馬鹿!!死ぬつもりかと思ったじゃないの!!」

 あまりの威力に倒れ、頬を押さえながら見つめる俺に、彼女は喚き声を上げた。どうやら心配してくれていたらしい。

 俺は嬉しいやら痛いやらで、どうにも複雑な表情を浮かべ、すまん、とだけ答えた。

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