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世界滅亡まで後1000x文字!!(空白・改行込み)  作者: 明山昇
第四章 x=2:ききをだっしよう
32/36

Rev.2

 本にはこのように書かれていた。細かい表現はわかりやすいように変えているが、大凡はこのようになっている。


『ある日、空に巨大な岩が浮かんでいる事を発見した。それは突然の事であった。前触れも無く、急に発生したそれは、数刻すればこの地に降り注ぐであろう速度で落下していた。我々は慌てふためき、この世の終わりかと嘆き叫んだ。』


 かつても今と同じような状況に陥っていたようである。


『そしてそれは降り立った。それは巨大な鮫であった。牙がある凶暴な鮫が空から降ってきたのだ。理解が及ばぬ状況に困惑する我らをそれは食い漁った。地は血で溢れ赤く染まり、地獄の様相を為していた。我らは丘へと逃れ、眼下に広がるそれらを目にし、悲しみ故に神に祈った。我らをお救いくださいと叫んだ。すると我らの横に、光り輝く巨大な人型の何かが顕現し、破壊の限りを尽くす鮫に向かい、手に携えた三叉の槍を振るった。すると地は裂け、そこから水が吹き出し、赤く染まった大地を洗い流した。そして鮫は吹き出した水に打ち出されるように空へ昇っていき、戻ってくる事は無かった。我らはその行為に歓喜し、光り輝く人を神として奉った。』


 これは今までの掛け軸などで描かれている伝説と同じであるように思えた。


『神は告げた。「あの鮫は破壊の神の化身。何れ世界を滅ぼすためにまた戻ってくる事でしょう。その時はこの槍を使いなさい。この槍を勇気ある者がこの丘で振るう時、私が再び力をお貸ししましょう。」と。そして神は消え、後には身の丈程に縮んだ槍とその部品たる宝玉、そして穂先が残された。我らは決意した。この槍を守らねばならない。我らはそれぞれを預かり、保管する事にした。槍は一ノ瀬家が、宝玉は五十嵐家が、穂先は四壁家が。』


 この一ノ瀬、五十嵐というのは、資料館の名前と同じである。この街の資料館は私立で、それぞれ創立者の家名から取っていると聞いた事がある。なのでこの「一ノ瀬家」「五十嵐家」というのは、一ノ瀬資料館、五十嵐資料館それぞれの創立者の家系を指していると思われる。本来槍は一ノ瀬資料館にあったようで、それが渡り渡ってこの資料館に展示されていたようだ。

 だがよく分からないのは、この「四壁家」と穂先の関係性である。本の中では三叉となっているが、槍の先端を見ると、確かに穂先が足りない。という事はこの穂先というのが別のパーツとして存在していることになるが、それが「四壁家」が保管…?四壁家なんて近所にゃウチだけなのだが、ウチにあるのか?

 と思って本を見ると絵が書いてあった。槍の横に付ける二つのパーツ。それを取り付けるとなるほど三叉の槍、所謂トライデントになりそうなパーツである。その形に見覚えがあった。どこかで見たような気がしていた。何処だろうと記憶を振り絞ると、飛び出てきた。

「…ウチにあったなコレ。」

 家宝だとか言って蔵にしまわれているのを見た覚えがあった。親の頭に付けて「鬼だー」とか言って怒られた記憶が思い起こされた。

「え、貴方の家に?」

「ああ、見覚えがある。多分蔵にしまってある。多分だけど。」

「貴方の家どこ?」

「…そういやこの近くだったな。」

 まさか自分の家が伝説に関係しているとはまるで予想だにしない展開である。どこまで最初から考えていたのだろうか。後付けのような気がしてならないが、それは触れないでおこう。


『もう触れてるから手遅れだ…。』

 作者の嘆きが聞こえてきたがスルーすることにする。


 となるとやるべき事は一つだ。家で穂先を探す。その時この槍を持っていくと動きが取れないだろう。ここは声子に、彼女に任せるとしよう。

「よし、じゃあ家に行ってくる。お前はこの槍を持って丘に行っててくれ。」

 家に寄って丘に向かって大体一時間。何とか落下までには間に合うだろう。

「分かった。じゃあ持つわ。」

 声子に槍を渡す。重っ、と彼女が叫んだので大丈夫かと聞いたが、一応何とかなりそうであった。俺はすまんが頼むと謝った後、急いで家に向かった。



 祖父母は他界し、父母は共働きで昼間はいないため、家には誰も居なかった。俺はポケットの鍵で玄関を開け、玄関の近くに置いてあった蔵の鍵を取ると、庭の蔵へと戻っていった。玄関の鍵も一応閉めておいた。何とかなった後に空き巣被害で涙するなんて事になりたくない。

 庭の蔵の中は真っ暗で埃まみれだった。片手で口を押さえて埃を吸わないようにし、もう片方の手で埃を追いやりながら、蔵の中を探索する。すると大きめの箱が見つかった。見覚えのある箱だった。箱を開けるとさっきの古文書にあった穂先が見つかった。俺は思わず駆け出そうとしたが、箱の中に一冊、古文書が置いてあることにも気がついた。昔これを読みたくて勉強したのを思い出した。何か役に立つかもしれない。俺はその本を開いた。

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