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愉快なうさぎと孤独なカメ  作者: LOD
step1:スタートライン
3/5

デモ

教室に着くとちょうど、前の授業が終わったところだった。教室から出ていく学生と、教室に入ろうとする、学生でごった返しになっていた、その集団をどうにかすり抜け、教室の角の席に座る。本と筆記用具をリュックから取り出し机の上に並べ、本の続きを読み始めた。しかし、本を読み始めたのにちうもの洋に没入できない。徹に言われた、「入る気なさそうという言葉」が引っかかっていた。人を見た目で判断するのはあまり好きじゃない。「デモ」見に行かなくてもいいのではないかと思っていたが,

やはり行こうかとも思い始じめた。また、「見ればわかるという」彼の言葉も同時に気になっていた。授業の間、決めあぐねていたが、授業の終わりごろに、行くだけ行ってみることにした。

(場所も聞いてしまったし、行かないのもあの女の人にも悪いしな。)

食堂の近くまで来たとき、

「あっ!ほんとに来てくれたんだ!」

「あ、えっと、」

と、部室であった先輩の女性に声をかけられたが、驚いて言葉がうまく出なかった。急に声をかけられたうえ、さっきとは全然違ったのだ。その先輩は濃い色だが決して暗くはない紫色のドレスを着ていた。そのドレスの表面はきらきらとしていて、宝石ののようなものがたくさんついていた。そして、手首の部分にはファーのようなものが垂れていた。

「えっと、さっき部室で会った。」

「そっか、そういえば自己紹介まだしてなかったっけ!私、高橋凪。よろしくね、高陽君」

「よろしくお願いします。」

「さっ、こっちこっち。」

といいながら、並んで歩き始めた。特段話すこともなかったうえ、大講堂はすぐ近くだったため、話さずにそれ以上の会話はなく会場に着いた。

会場内は、大講堂というだけあって、だいぶん広く、壁から五メートルほど離れた位置に、椅子が長方形を描くように置かれていてその六割がたは埋まっていた。

「好きなとこ座って待ってて。」

といい、せかせかとドレスや燕尾服を着ている部員らしきひとが集まっている場所に歩いて行った。僕はとりあえず、まだ両隣に誰も座っていない椅子を選んでそこに座った。

彼女がその輪に入ったあとに誰かが手を振ってきた、柏木徹である。

彼は近づいてきて、

「来たんだね。どしたの。」

「いや、べつに、ただ見に来ただけです。」

「そっかそっか、じゃあ楽しんでってね、テレビと生じゃ違うから。」

そう言い残すとまた部員の一団の元に戻っていった。

「それでは、これより、先輩方によります。デモンストレーションを行います。まずはスタンダードの王道ワルツのデモンストレーションになります。踊っていただきますのは、三年目小林・高橋組です。」

紹介が終わると、曲がかかり始め、燕尾服を着た男性と、凪さんが踊り始めた。

まさに春風のようだった。穏やかに、それまで凍てついた空気も優しくどこかへ連れて行ってしまうような、それでいて、力強さも感じさせた。そして、会場の真ん中で、花のように二人でポーズをとった。会場全体が拍手に包まれ、僕も拍手をしてしまった。ドレスについているファーが風になびいてきれいだった。

そして曲が終わると、二人はぱっと離れ、女性は2,3回ひらりと回転すると、ひざを折り丁寧にお辞儀をし、少し後ろにいる小林さんは、女性をほめたたえるように左手を出し、厳かにお辞儀をした。

「続きまして・・・」

他にもデモが披露されたが正直あまり記憶には残っていなかった。すべての披露が終わると。

「これにて本日のデモ終わります。この後、行きたい人はご飯に行きましょう!」

と言った。そして部員たちは見学している人たちのところに各々散っていった。

徹が近づいてきて

「どう?すごかったでしょ?」

「はい」

「マサさんと凪さんすごかったでしょ。」

「はい」

「あの人たちは、未来のチャンピオンって言われてる人たちだからね。」

「そうなんですか。」

「君もあんな風に踊れるようになると思うよ。」

「はぁ」

「今までの部員の皆そうだったから」

「ねぇ、今私の話してたでしょ?」

凪さんは近くで聞いていたようだった。

「今、高陽君とマサさんと凪さんのダンスすごかったよねって話してたんですよ」

「ほんと??君に言われると嘘っぽいなー」

「いやいやほんとですって。うまかったですよ。」

「そういう君こそ、ツバメ杯で優勝して期待の新人って言われてるじゃん。」

「まぁ、否定はしません。」

「生意気すぎ!」

「あの、皆さんダンスはどれぐらいやってるんですか?」

「ほぼみんな大学に入ってからだよ。私も、徹も、私のパートナーのマサもね。」

「皆もともとやってたんじゃないんですね。」

「うん。全国の中には小さいころやってたって人もいたはずだけど。基本的には大学から始めた人ばばっかだよ。」

「そうなんですか。」

そうして、話していた時

「ご飯食べに行く人は集合してくださーい」

と声がかかった。

「高陽君もご飯行く?」

「あ、いえ、僕は遠慮しときます。」

「そっかぁ、残念。」

「まぁ、いいじゃないですか、まだまだ、行く機会はたくさんありますよ。明日からもデモとかやってるから暇になったらおいでよ。」

「はぁ、わかりました。」

といい、席を立って二人に「失礼します」といって。会場を後にした。この後授業はなくやることがなかったが、とりあえず、目的地も決めないまま、ただ歩き続けた。そういう気分だった。

―そのころ

「ねぇ、徹。なんで行く機会はたくさんあるって言ったの?」

「彼、たぶんうち入りますよ。」

「なんで、急に??」

「彼、マサさんと凪さんのダンス見て笑ってましたから」

「そうなの?でも、うちに入るって言っても、人と接するの苦手そうなタイプだったけど?」

「んーーーー、そうでもないと思いますけどね。」

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