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愉快なうさぎと孤独なカメ  作者: LOD
step1:スタートライン
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部室にて

「ついてきなよ。部室に案内するから。」

「え、でも」

「どうせ初回の授業は、オリエンテーションだけだから大丈夫だって。」

「はぁ」

「こっちこっち」

というと、先に歩き始めた。少し離れていったあと、とうとうあきらめて、速足で追いかけていった。

「まだ、自己紹介してなかったな。おれ法学部二年の柏木徹。」

「ぼくは、法学部一年の菊池高陽です。」

「よろしくね」

「よろしくお願いします」

「授業はもう組み終わった?」

「はい。なんとなく。」

「そうか。部室行ったら、履修相談してあげるよ。」

恩着せがましさ満載で、会話するのが面倒になりつつも

「ありがとうございます。」

とだけ答えた。

そこで会話は止まり、沈黙が続いたが、彼は、ずんずんと進んでいき、僕はそのあとを、ただ早歩きでついていく。沈黙に耐え切れず

「競技舞踏研究会って何ですか。」

「競技舞踏研究会はね、社交ダンスのサークルのこと。」

「社交ダンスですか。」

最近テレビで見た、番組の企画で芸能人が競技ダンスというものをやっていた気がする。人生で最も縁遠いものだと思ってみた記憶があった。第一、人関わるのが苦手なのに、他人と密着して踊ることなど理解できなかった。

「競技ダンスってやつですか」

「おぉ!よく知ってるね!」

嬉しそうに反応する彼に、意外さを感じた。

「こないだテレビで見て。」

「あぁ、芸能人が踊ってたやつでしょ」

「はい」

「どうだった?」

「どうだったって、すごいなとおもいました」

「そっかそっか」

再び沈黙がやってきたかと思ったが、

「ここ、ここ。ここが我らが競技舞踏研究会の部室。」

ドアは半開きになっていて、すこし、笑い声が、聞こえてきた。

「おつかれさまでーす。新入生連れてきました。」

と彼が言うと、徹よりは少しだけ身長が低く、髪の毛のサイドを借り上げている男が

「おっ、まじか!!お前すごいな。こんな早くつれてくるなんて。」

といった。

「俺のコミュ力なめないでください。」

今度は、髪の毛はロングで、僕よりすこし身長が高い女性が、反応した。

「どうせ強引に連れてきたんでしょ」

まったくもってその通りだと心の中で大きくうなずいた。

「君いま、その通りだって思ったでしょ。」

といわれ、慌てて

「いえいえ、そんなことないです。」

「やめなさいよ、あんた怖がってるじゃない。とりあえず座って。」

その部室は正方形の形をしており、広さは6畳ぐらいはありそうだった。その中には、タイルカーペットがはってあり、真ん中にはテーブル、その奥にソファが窓に向かっておいてある。窓のそばにはテレビとゲームがおいてあった。壁際にはCDラックがおいてあり、向かいの壁際には本棚がおいてあり漫画が入っていた、ドアの左側には音響機材が置いてあった。

案内されるがままに、フロアソファの真ん中に座らされテーブルの残った三方向に他が座った。

「それで名前はなんていうの?」

「菊池高陽です」

「たかひろはどんな字書くの?」

「高低の高に、太陽の陽です。」

「へぇ~。いいなまえだね。じゃあ、ヒロ君だ」

「もっと面白いあだ名付けましょうよ~。爆走君とか」

「爆走君?なんだそれ?」

「なんでもないです!」

別に、走っていたことを話されてもどうってことないが、広められるのは

何となく違う気がした。

「学部はどこなの?」

ロングの髪の女性がまた質問してきた。

「経済学部です」

「じゃあ、徹と一緒じゃん!履修相談してあげなよ徹。」

「それもあって連れてきたんですよ。じゃあぱぱっと、終わらせようぜ!」

「はい。」

それから、彼と二人で僕が組んだ履修を練り直し始めた。

「君これ、単位とるの難しい教科ばっかりだよ。楽単全然ないじゃん。」

どうやら、僕がとろうとしていた授業は単位がとりづらいらしくそれを「エグ単」、単位を取りやすい授業を「楽単」とよんでいるらしかった。だが、せっかく大学に入ったのに楽単ばかりでよいのかと聞くと。

「んーーーー。爆走君そんな感じか~。別に、やりたいこととか、学びたいことがあるならその授業とってもいいと思うけど、エグ単ばっかだと楽しめないぜ。」

「別に、遊びに来てないので。」

「まぁ、大学は遊ぶ場所じゃないってのはわかるけどよー、今まで出会ったことのないものに出会えるのも大学の良さだぜ!」

「はぁ」

そうして、彼は、いろんな楽単を教えてくれた。結果的に完成した授業は、必修単位と残りは楽単四割と興味のある科目にした。

「よし終わったし、お菓子でも食べながら、ゲームでもしよっか。」

「ヨシさん、スマブラやりません?」

「いいぞ。」

サイドを借り上げてる男性はヨシという名前らしかった。

「ヨシさん、だけにまたヨッシー使うんすね。」

「お前は相変わらず、ルカリオなんだな」

スマブラをやるのなんか小学生以来だった。親戚の家に長期の休みで家族そろって遊びに行ったときに、いとこたちとやっていた。その時とは全然知らないキャラが増えている。

とりあえず、てきとうに、以前使っていたキャラを選んだ。

ゲームをしながら聞いた。

「あの、これって新歓ってやつですよね。僕、部のことまだ何も聞いてないんですけどいいんですか?」

「おお、君ズバッと聞くね。助かる~。そうだよ。これ新歓。でもこれでいいんだよ。見たほうが早い。しかも君、うちに入る気なさそうだしね」

「おまえ!」

ヨシさんがいうのと同時に、僕が

「どう・・」

言いかけたとき、徹のポケットから着信音がした。

「もしもし。え、あ、忘れてました。今行きます!」

「何?」

それまで、ゲームを見てるだけだった、黒髪ロングの女性が聞いた。

「デモの勧誘すんのにいったん学食に集合するの忘れてました。」

というなり急いで部室から飛び出していった。

僕を無理やり連れてきた彼が部室からいなくなると、急に部室にいるのが居心地が悪くなり、時計を見ると、次受ける授業まで、あと二〇分だった。

「あの、僕も次授業があるので、そろそろ行きます。」

「うん、わかったよ。」

僕の居心地の悪さを感じたのかその声はとてもやさしかった。

靴を履いて部室を後にしようとしたとき、

「デモって何ですか?」

「デモンストレーションのこと。」

「はぁ」

「ほらさっきの徹が言ってたでしょ。見たほうが早いって。」

「はい」

「だから、実際に新入生のみんなに見てもらうの。」

「そうなんですか。」

すこし、黙った後、

「それって、どこでやるんですか?」

「場所は食堂の上にある部屋でやるの。大講堂っていうところね。時間は一三時半から!」

妙に明るく彼女は場所を教えてくれた。

「行けたら行ってみます」

「うん!これたらでいいよ!」

「それじゃ失礼します。」

「またね!」

そして出ていくときに、奥に座っていたヨシさんがニヤッと笑った気がした。

そのまま僕は次の教室に向かう途中で自販機でお茶を買い、それを気分の悪さを押し流すように飲んでから次の授業の教室に向かった。

どうしてわかるんですか?という質問が頭の片隅にあった。


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