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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

同じ穴の兵隊さん

作者: ヘボドトス

 一九四五年、春。

 三郎は沖縄県中南部、読谷村(よみたんそん)の丘に立ち、水平線の向こうを見ていた。

 水平線は米軍の艦船によって埋め尽くされ、灰色になっている。

 艦一つ一つに搭載された巨砲はことごとく三郎の方に向けられていて、先を争うように火を噴いている。

 自然と、三郎の顔は蒼白になっていた。

 三郎は元来呑気な性格で、沖縄の地に派遣されたばかりの頃は、日本海沿岸の故郷とは違って暖かくて砂が白いとこだなぁという程度の感想しかなかった。

 兵隊としての三郎は劣等も良いところで、足手まといとして内地に留め置かれ続け、戦局の末期になってようやく引っ張り出されてここにいる。


「話が違ぇじゃねぇか」


 三郎は周囲を見回し、蚊の鳴くような声でそうつぶやいた。

 周囲にはコンクリートで覆われた塹壕(ざんごう)が川のように伸び、海に向けて大量の機関銃や大砲が並ぶ防御陣地となっている。

 塹壕とは地面に穴を掘り、兵士はそこに身を隠す防御陣地で、その塹壕に更に覆いを被せたような構造物を掩蔽壕(えんぺいごう)と呼ぶ。

 本来の掩蔽壕は非常に頑丈で砲弾にも耐えられるのだが、三郎が籠もっていた壕は物資不足の中急場しのぎで作られた粗末なものだった。

 そのため、雨のように降り注いだ砲弾に対し十分な防御力を有しておらず、塹壕のあちこちに真っ黒で所々が赤い大穴がうがたれている。


 その大穴の一つから三郎はフラフラと外へ這い出て、水平線の向こうを臨むに至ったのである。

 ふと、三郎は自分の足下に何かが転がっているのに気付いた。

 一瞬、椰子(やし)の実かなと思った。

 南国の美味そうな果物でいつか食ってみたいなと、三郎は思っていた。

 だがよく見れば、それはついさっきまで「怯むな」と怒鳴り散らして上官殿の頭ではないか。

 まだ頭と胴体がつながっていた頃、この上官は盛んに言っていた。


「砂浜に上陸してくる敵を狙い撃ち、水際でこれを撃滅するのだ」


 こんな塹壕に籠もって撃つんだから楽勝だなと、三郎は呑気に構えていたが実際はこのざまである。

 人間と人間との戦いになど、敵は持ち込んでくれなかった。

 三郎が今直面しているのは鋼鉄の巨砲と生身の人間との戦いであり、虐殺と言い換えても違和感がないほどに一方的で凄惨な状況だった。


 その時、三郎の袖を引っ張る誰かがいた。

 見れば、まだ一二歳くらいの少年だった。

 少年は何やら叫んでいるが、砲弾が着弾した際の爆音で耳が遠くなっていた三郎にはいまいち聞き取れず、自分が叫ばれているのだという感覚さえ薄く、思考が脇道へとそれる。

 三郎にとって、この少年は覚えがある。

 現地沖縄の少年で、名前は知念(ちねん)

 知念少年は兵士として志願してきて、簡単な伝令や物資の運搬に携わっていた。

 まあ、実際は軍からの「要請」で学校から引っ張り出されてきたわけで、徴兵と呼んで差し支えない。

 三郎から見れば自分の半分以下しか生きていない身で戦場に臨んだというだけあって、彼なりに同情していた。

 しかし、知念少年当人は終始明るく振る舞い、南国の果物などを差し入れてくれたので、三郎と彼は兄弟のように仲良くしていた。

 そうこう考えているうちに、段々と知念少年の言っていることが三郎の耳に聞こえてきた。

 沖縄方言がだいぶ入っているため正確には聞き取れなかったが、危ないから伏せてくれという主旨の呼びかけであることだけは三郎も理解できた。


 そうだ、今は戦いの真っ最中なのだ。

 我に返った三郎の心に、自分の周囲に満ち満ちた音と人が雪崩れ込んでくる。

 空からの爆音、戦友たちの悲鳴と怒声。

 粉々に破壊された掩蔽壕から、仲間の死骸をかきわけ、踏み付けて生き残った兵が顔を出す。

 彼らは無事な掩蔽壕に我先にと飛び込み、押し合いへし合いで大混乱になっていた。

 三郎もいつまでも遮るもののない場所に突っ立っている勇気はなかったから、歩いて十数歩ほどの距離にある掩蔽壕に飛び込もうと走った。

 既に人ですし詰めだが構わず走った。

 しかし、不意に落ちてきた砲弾が目指していた掩蔽壕に直撃し、爆風が三郎をなぎ倒す。

 ヨロヨロと半身を起こした三郎が見たのは、つい先ほどまで人ですし詰めになっていた場所が真っ赤な瓦礫になり、赤黒い絨毯の上に腕やら足やら頭部やらがポツリポツリと落ちている光景だった。


 もうダメだ。


 三郎の心が叫び、折れた。

 三郎は訓練でした時とは比べものにならない速度で匍匐前進し、内陸へと向かう。

 この地獄から少しでも離れるために、三郎は逃げた。

 その場が轟音と砲弾で大混乱でなかったのなら、上官が三郎の首根っこを掴んで連れ戻しただろ。

 三郎にとっては幸いなことに、彼の逃亡に気付く者はいなかった。

 三郎は必死に腕を動かして奥へ奥へと進み続ける。

 一瞬、知念少年のことが三郎の脳裏に浮かんだが、立て続けに背後で炸裂した着弾音がその思いを恐怖に塗り直し、押し消した。


 そうして夢中になって逃げていき、砲弾の着弾音が少し遠くに聞こえ始めた頃、三郎の全身に痛みが走った。

 ふと気付くと、三郎の身体のあちこちから血が滲んでいた。

 三郎が爆風になぎ倒されたあの時、破片か何かが肉を切り裂き、食い込んだのだろう。

 負傷直後は極度の興奮状態で気付かなかったが、アドレナリンの効き目切れと共に本来の痛みが蘇ったのだ。

 三郎は悪態を吐きながら立ち上がると、手近にあった岩にもたれかかった。

 傷は深くないらしく、出血量はさほどでもなかった。

 何かないかと身体を探ると、一枚の布きれを見つけた。

 それは出征の際に渡された日の丸で、白い部分に武運長久と書かれている。

 三郎はそれを一番出血が酷い右足に巻き付けながら、故郷のことを思い浮かべた。


 見渡すばかりの水田。

 稲の上をトンボが飛び回り、水路からはカエルやカモの鳴き声が聞こえる。

 日本海に面する三郎の故郷は日本有数の米所であり、彼の実家も代々米を作ってきた。

 兵隊として召集されていなければ、今頃は田植えの準備に追われていたはずだ。

 やっている時は酷く億劫だったが、今この状況にして思えばあの頃のなんと幸せだったことか!

 もう一度、もう一度故郷を見たい。

 あの地、あの人、あの空を。

 三郎は空を見上げた。

 鳥だったなら飛んで帰れるのに。

 

 そんなどうにもならないことを心の底から願っていた。

 すると、空の彼方から轟音が鳴り響いた。

 段々と近付いてくる。

 じっと空を見ていると、戦闘機が木の直上数十メートルを通り過ぎた。

 機体に描かれた星のマーク。

 米国の戦闘機だ。

 嘉手納(かでな)にあった陸軍航空隊の基地は滑走路をやられて使用不能になったらしいという噂を、三郎は思い出した。

 それが本当なら、沖縄の空は米国のものになっているということだ。

 三郎自身はまだ遭ったことはないが、ああいう戦闘機は時折地上の兵士目がけて機銃を撃ってくるらしい。


「冗談じゃねぇぞ」


 三郎は必死に周囲を見回し、隠れられる場所を探す。

 すると、急斜面にぽっかりと穴が空いているのが見えた。

 三郎は痛む足を引きずりながら、その穴に飛び込んだ。

 穴は人が二~三人立って通れるくらいの広さがあり、奥へ奥へと続いている。

 一瞬、故郷で見た熊の穴蔵かと思ったがそれにしては広すぎるし、そもそも沖縄に熊がいるという話を三郎は聞いたことがなかった。

 穴の奥から風が吹き出しているところを見ると、外につながっているらしい。

 三郎は少し考えた後、奥へと進んだ。

 機銃掃射の恐怖を背負いながら外を行くよりは良いと思ったのだ。

 洞窟にはところどころ縦穴が空いていて、そこから射込む僅かな光りが三郎の案内役だった。

 そうして幾分か歩き続けた時、三郎の正面に光が見えた。

 大きさからして出口だろう。

 三郎は少しだけ早足になり、光りの向こうへと乗り込んだ。

 真っ先に三郎の視界に入ったのは、これまで見てきた沖縄の森と同じ、鬱蒼とした原生林だった。

 どこに出たのかなとキョロキョロ見回すと、岩に身を委ねて座る人影が眼に入った。

 その瞬間、三郎の呼吸が止まる。

 そこにいたのは見慣れた茶色い日本陸軍の軍服を着た人物で、その顔は更に見慣れたものだった。


「俺……か?」


 自分の顔は水面や鏡越しに見たことがある。

 男前とか人相が良いとか全然そんなことのない凡百の顔だったが、それでも自分の顔だ。

 見紛うはずがない。

 驚愕して言葉を失う三郎だったが、それは相手も同じようで黙って呆けていた。

 数秒か数分か、互いに沈黙し合い、全く同じ頃合いでそれを破った。


「お前、誰だ? 俺か? 俺は木下三郎だ」


 寸分違わず同じ声同じ言葉だった。

 まるで鏡と話しているようだ。


「なにを馬鹿なことを。馬鹿とはなんだこの野郎。怪しい奴だ。お前が言うな!」


 これでは話にならないと悟り、穴から出てきた方の三郎がさっと手をかざして口を開く。


「待て待て。順番に話そう。俺もお前も木下三郎なわけだな?」


 岩に腰掛けている方の三郎がこくりと頷く。

 穴から出てきた方の三郎が話を続けた。


「俺の故郷は新潟の越後村の生まれだ」

「俺もだ!」

「本当か?」

「ああそうとも。親友の平八郎は地酒屋で、上物をタダで飲ませてくれただろう?」

「そ、そのとおりだ。なら村祭りの時の神輿を作ってる叔父の源太のことは?」

「知っているぞ! 何年か前に雪かきの最中に屋根から落ちて足を悪くしたんだ。俺はその場にいた」


 三郎たちは、互いに信じられないことを信じ始めていた。

 こいつは、俺なのだと。

 ふと、岩に腰掛けている方の三郎が、もう一方の足を見た。


「お前、足を怪我してるのか?」

「敵弾にやられた」

「そうか。大漢の連中め、俺を殺す気か」

「だいかん? なんだそれは」


 穴から出てきた方の三郎は心の底から怪訝な顔をしてみせたが、もう一方も同じような顔をする。


「大漢国。今、日本と戦争をしている敵国じゃないか」

「……? 何を言っているんだ。日本と戦争をしているのは米国だろう? 大漢国なんて聞いたこともない」

「お前こそ何を言っている。米国は同盟国だぞ。故郷は知っているくせに友邦も敵国も知らんとはどういうことだ!?」


 三郎同士、互いに視線を合わせ、その真意を探り合った。

 どうも、互いに嘘を言っているようには聞こえなかった。

 穴から出てきた方の三郎が腹の探り合いに音を上げる。


「俺が知っている話じゃ、日本と米国は太平洋や東南アジアで戦争中なんだ。中華民国との戦争に米国が口を挟んできて、その交渉が決裂して戦争になったらしい。今は沖縄に米国が攻め込んできて防衛戦の真っ最中だ」

「中華民国ってのは聞いたことがないな」

「清国が倒れた後の国だ」

「俺が知っている話じゃ、清国の後が大漢国だ」


 それを口火に、岩に腰掛けていた方の三郎がポツポツと話し始めた。

 

 まず、日清戦争で日本国が負けた。

 日本国は朝鮮半島を失い、領土拡大の夢を内地の開発に向ける他なくなった。

 その後、清国とロシア帝国との間で清露戦争が起き、双方共に何も得られずに和平を結んだ。

 第一次世界大戦になると清国はかつての恨みを晴らすべくロシア帝国と開戦したものの戦況は泥沼化。

 ロシア革命によるロシア帝国の戦線離脱で清国も戦争から手を引いたが、戦争によって国は疲弊し、やがて地方から全体主義が台頭。

 少数の女真族が大多数の漢民族を支配していた清国に対する民の反感が激発し、大漢革命が発生。

 民衆に促されてという形で皇帝が退位したことで清国はその歴史を終え、代わって大総統率いる大漢国が誕生した。

 大漢国は領土の拡大を目論んで国際的に孤立し、日本国及び太平洋、そして東南アジアにまで野心を向けたことで米国との対立を深めていった。

 大漢国による朝鮮併合を不当としたリットン調査団の報告を機に国連から脱退した同国は、イデオロギーを共有する独伊に接近。

 やがてドイツがポーランドに攻め込んで第二次世界大戦が勃発すると、ドイツの傀儡と化したフランスからもぎ取る形で大漢国はフランス領インドシナに進駐。

 これが米漢対立の決定打となり、大漢国は米国との交渉を打ち切って対米開戦に打って出た。

 対米戦争に打って出るに辺り、大漢国は日本国に参戦を要求したが日本国はこれを拒否。

 太平洋への出入り口として日本国は要衝であったため、大漢国は対日宣戦布告し、今正に沖縄に大漢国の軍隊が上陸しようとしている最中とのことだった。


 穴から出てきた方の三郎はしばらくの間ぽかんと口を開いたまま何も言わず、もう一方が目配せしてようやく言葉を発した。


「なんだそれは。同じ日本なんだよな?」

「俺からみても変な話さ。……だが、どうも嘘を吐かれている気はしない」

「俺もだ」


 なまじ本人同士なせいか、互いに信じる気になっていた。

 しかし、信じたら信じたでおかしなことになる。

 岩に腰掛けている方の三郎が指で顎をさすりながら口を開いた。


「……つまり、俺とお前は二つの世界でそれぞれ木下三郎として生きていて、どういうわけか合流できちまったわけだ」

「俺は穴を抜けて出てきた。この穴が世界と世界とをつなぐ道ということか?」


 二人の三郎は同時に穴を見た。

 穴は何も変わることなく、ただそこにある。

 穴から出てきた方の三郎が皮肉そうに笑う。


「なるほど大発見だ。だがこの場に至ってはどうにもならないな。戦場から逃げてきたってのに、こっちの世界もまた戦場じゃ救いがねぇや」

「なんだお前も逃げてきたのか」

「ああ。艦砲射撃っていうのか? あんなものに晒されたら生身の人間なんてひとたまりもない。鉄の暴風雨だなありゃ」

「俺もまあ似たようなもんだ。でもよ、米国から沖縄まで攻め込まれてるってことは相当じゃないか?」

「だな。上は必勝だの決戦だの言っているが、士官学校出でなくても世界地図くらいは知ってる。はるばる米国から沖縄まで詰められてるんだ。きっともうダメだろう。もちろんそんなことは口が裂けても言えないけどな。そっちこそどうなんだ?」

「……ま、このままの勢いで突破されれば、本土も危ういな。米国の救援待ちってところか」

「援軍が来る見込みがあるだけ羨ましい。こっちの日本は敵が多すぎた。敗戦ってやつがいよいよ首筋まで迫ってきてるぜ」


 敗戦がどんなものなのか、どちらの三郎も生では知らない。

 酷い眼に遭うのかもしれないが、今日を生きられるかどうかの瀬戸際にいる末端の兵士からすれば、必ずしも最優先に考えることではなかった。

 岩に腰掛けている方の三郎がぽつりとつぶやいた。


「敗戦になるかどうかはまあおいておくとして、必死に逃げて今こうして一息吐いていると、どうしても気になることがあるんだ」

「知念のことか?」

「さすが俺。話がわかる」

「お前も置いてきちまったのか。……お互いに悪いことをしたな」

「良い奴だったよな。サトウキビを持ってきてくれてさ。棒みたいな砂糖なんて初めて食ったぜ」

「そっちの知念はサトウキビだったのか。俺はマンゴーってのを貰ったぜ。南国の果物で美味いんだこれが」

「へぇ。同じ知念でも違いがあるのか」


 二人の三郎の間に、どことない気恥ずかしさと、後悔の念がたちこめる。

 穴から出てきた方の三郎が物憂げに顔をしかめた。


「……あいつ、生きているかな?」

「どうだろう。あの攻撃の中だからな。だがどっちにしても、俺らは見捨てちまった」

「そうだな。同じ世界で生まれた同じ人間だから、行動も同じなのか。情けねぇ」

「だがよ、知念は違ったよな? 俺はマンゴーは貰ってないぞ」

「俺もサトウキビは貰ってないな」

「つまり、同じ人間でも必ずしも同じ行動を取るとは限らないってこった。となりゃあ結果もまた変わってくるのかもしれない。生きるかどうかの結果も含めてな」


 岩に腰掛けていた方の三郎がスクッと立ち上がった。


「俺、戻るよ」

「戻るって、戦場にか?」


 三郎はこくりと首を下げた。


「やっぱり知念を捨て置けない。俺が行ってどうにかなるもんじゃないかもしれないが、どうなるにしてもこの眼で見届けたいんだ。でもお前はこのまま逃げろ」

「は? なんでそんなこと言うんだ?」

「逃げた方が生きられる可能性は上がるだろ? 俺は逆に下がる道を行く。だからお前は上がる方に行ってくれ。そうすりゃ俺が死んじまったとしても、別の世界の俺が生きてると思えば諦めも付く」

「なにをわけのわかんねーことを」


 戻る方を選んだ三郎が、悪戯っぽく笑う。


「嘘こけ。本当はわかってるだろ? 俺なんだから。それに、そんな足じゃより死にやすいしな」

「本当に行くんだな?」

「ああ。こうして会えたのはきっと何かの思し召しってやつだろう。なら活かさないとバチが当たるぜ」


 穴から出てきた方の三郎がもう一方に握手を求め、二人はガッチリと手を交わした。


「なるべく生きろよ、俺」


 互いにそう言い合って、二人は別れた。

 もう一人の三郎は戦場に戻った。

 もう一人の三郎は戦場から去った。

 

 本来であれば、二人の行動は同じになるはずであった。

 奇跡とも言うべき現象によって生じた出会いが、それを変えたのである。

 本来通るはずだった流れが何らかの原因で変わった時、世界は分岐する。

 幾重にも重なる平行世界の中で、また一つ、新たな世界が生まれた瞬間であった。

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